愛などもう求めない

白兪

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真意

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「陛下、やはり彼が本当のご子息なのでしょうか。」
「おい、2度とふざけたことを言うな。あいつはちっともタンドレッスに似ていない。確かに、紫の瞳を持つのは珍しいが…。お前はヴェリテが偽物だと言いたいのか?」
「そ、そんなことはございません!申し訳ありませんでした!」
メイユーラミが慌てて首を振る。
「しかし、困ったことにあの男が偽物だと証明するものもない。あそこまで容貌が似ているのだ。騒ぐものも出てくるだろう。どうしたものか…」

「陛下!僭越ながらご意見を申し上げたいです!」
若い騎士が礼をする。
「なんだ?」
「私の姉は昨年結婚いたしまして、メディカモン王国に嫁ぎました。」
「はい。姉の手紙にこんなことが書かれていたのです……」


ヴェリテは部屋でぼうっとしているのも耐えられず、何か暇を潰そうと図書館に向かった。

静かに扉を開くと誰かの話し声が聞こえた。

「わがままを聞いてくださってありがとうございます。」
「いや、丁度暇だったからな。構わない。」

それは兄とファクティスだった。
2人は王妃の肖像画を覗き込んでいる。

「僕と王妃様は本当に似ているのですね。」
「ああ。髪も、瞳も、本当にそっくりだ。」
兄が懐かしむようにファクティスのことを見つめる。

ヴェリテはそっとその場を離れた。


「ああ。髪も瞳も本当にそっくりだ。」
そう言うと、ファクティスは嬉しそうに笑った。
「こんなに美しい方と似ているなんて嬉しい!」

「だがな、髪と瞳以外は似ていない。」
「え?」
「母上はそんなふうに笑う人ではなかった。母上はそんな眼差しをしていなかった。」
ファクティスは黙りこくる。
「母上とファクティスは全く似ていない。
お前は何者なんだ?」


はぁっはぁっはぁっ

息を切らして部屋の扉をバタンと開ける。

「まあ!どうなさったのですか?」
ガルディエーヌがいつもと変わらぬ笑みで立っていた。
「ガルディエーヌ、僕は。僕は…!」
「落ち着いてくださいませ。ガルディエーヌがいつでもついていますよ。」
ガルディエーヌがヴェリテの涙をぬぐい、微笑む。
「私はヴェリテ様の家族ではありませんか。」
「そうだ…。ガルディエーヌは僕の家族…。」

夢の中と大きく違うことは、ヴェリテにはガルディエーヌがいることだった。
気持ちが落ち着いていくのを感じる。

「さあさあ、ジュスティス様とのお約束の時間が近づいておりますよ。急いで支度してくださいませ。」
「うん…。分かった。」
いつも通りの笑みを浮かべるヴェリテをみて、ガルディエーヌはほっと安心したように笑った。


「ごめんなさい!お待たせしましたか?」
「いいえ!僕が早くヴェリテ様に会いたくて来てしまっただけなので!」

ヴェリテは用意された席に座る。
青空が広がり、心地の良い風が髪を靡かせる。
庭でのアフタヌーンティーにはぴったりだ。

「このケーキ美味しいですね。」
「本当ですか?これは僕がパティシエにお願いして作ってもらったんです!」

美味しそうにケーキを頬張るジュスティスの唇についつい目がいってしまう。

僕はこの人とキスをしたんだ…

そんなことを思うだけで、体が熱くなる。
慌ててパタパタと手で顔を仰ぐ。

その時人影が現れた。

「あれ?ヴェリテ様?」
「あ…ファクティス様…。」

「この前お会いした、ファクティス様でしたよね?
前回は自己紹介できなくて申し訳ありません。ロワヨテ公爵家長男のジュスティスと申します。」
「ご丁寧にどうもありがとうございます!
ヴェリテ様のご友人ですか?
前にお会いした時も2人でいらしたから。」
「僕はヴェリテ様と婚約しておりますので。」
「婚約者…。とても仲がよろしくて羨ましい限りです!」
ファクティスは花が綻んだような笑みを見せた。

ファクティスが一体何を考えているのかわからない。
僕の婚約者ということは、未来のファクティスの婚約者ということだ。
今、彼の瞳にジュスティスはどのように映っているのだろうか。
僕とジュスティスが仲良くしているのをどう思っているのだろうか。

いつの日か、婚約者の座さえもファクティスに明け渡さなくてはならないんだ。

当たり前に分かっていた事実が今は苦しい。

「ぜひぼくとも仲良くしてくださいね。」
ファクティスが少し熱のこもった目を細めて言った。

「お邪魔をしてしまいすみませんでした。それでは、また、お会いしましょう。」

ヴェリテは小さくなっていくファクティスの背中を眺め続けた。




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