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婚約者
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「どちらの服にします?こちらの方が似合うかしら?」
「どっちでもいいよ。」
「まあ!珍しい!いつも婚約者様との交流を楽しみにしていたではありませんか!」
ガルディエーヌは目を丸くする。
婚約者のジュスティス・プルミエ・ロワヨテはいつも優しかった。自分の意見を尊重してくれて、大事にしてくれた。そんなジュスティスが大好きだった。
しかし、ヴェリテは知っているのだ。真の皇子であるファクティスに出会ってからのジュスティスを。
「さあ行きましょう!いつもの部屋でお待ちですよ。」
部屋の扉に近づくと何やら話し声が聞こえてきた。
「おい!むすっとした表情をするんじゃない!今から皇子殿下にお会いするんだぞ!お前が友達と遊びたかったのは分かってる。だがな、皇子殿下と仲を深めることも大事なんだ。」
「分かってるよ。でもこんなに頻繁に会う必要性は感じられない。」
「とやかく言うんじゃない!」
ヴェリテはそんな話し声も気にせず扉を開けた。
「お待たせしました。」
ジュスティスの方を見ると優雅に微笑んでいた。美しい金髪が光に晒されてキラキラと輝いている。緑色の瞳は夏の新緑を思い出させた。
「では私はここで退散いたします。どうぞ愚息をよろしくお願いします。」
公爵がそそくさと退場する。
静かな空気が流れる。
ジュスティスは少し眉を顰めた。いつもならヴェリテがやかましい程に話しかけてくるのに。
「今度オペラでも見に行きませんか?最近話題になっているものがあるらしいのです。」
とうとうヴェリテが口を開いた。
「予定が合えば是非。」
ジュスティスは微笑む。
「今話題の作曲家が全ての楽曲を担当したらしいですよ。」
「すごいですね。」
ジュスティスはまた微笑む。
「その時舞台監督と喧嘩して、三日三晩寝ずに口論し続けたらしいですよ。」
「面白いですね。」
ジュスティスは笑みを深める。
「んー、オペラはイマイチに思えてきました。他のことをしましょう。何かしたいことはありますか?」
「ヴェリテ様のしたいことが僕のしたいことです。」
ジュスティスは笑みを崩さなかった。
…ジュスティスは僕のことを愛していないのだな。
ヴェリテは胸がズキンと痛んだ。
こんなに興味のない態度を取られていたというのにどうして今まで気づかなかったのだろう。
話すのはいつも僕から。
会話を盛り上げるのはいつも僕から。
今までジュスティスは意見を尊重してくれる人だと思っていた。しかし、違うのだ。僕に興味がなかっただけだった。それどころか、友人との時間を邪魔されて厄介に思ってる。
急に心が冷めていくのを感じる。
「ごめんなさい、今までのことは忘れてください。やはり出かけるのはやめましょう。お互い忙しいですから。これからは会うのも極力無しにしましょう。じゃあまた、お元気で。」
退出していくヴェリテをジュスティスはポカンと眺めていた。
急に何があった?今まであんなに俺に引っ付いてきたのに。今日のヴェリテは様子がおかしい。
ジュスティスはヴェリテの悲しげな瞳が頭から離れなかった。
「どっちでもいいよ。」
「まあ!珍しい!いつも婚約者様との交流を楽しみにしていたではありませんか!」
ガルディエーヌは目を丸くする。
婚約者のジュスティス・プルミエ・ロワヨテはいつも優しかった。自分の意見を尊重してくれて、大事にしてくれた。そんなジュスティスが大好きだった。
しかし、ヴェリテは知っているのだ。真の皇子であるファクティスに出会ってからのジュスティスを。
「さあ行きましょう!いつもの部屋でお待ちですよ。」
部屋の扉に近づくと何やら話し声が聞こえてきた。
「おい!むすっとした表情をするんじゃない!今から皇子殿下にお会いするんだぞ!お前が友達と遊びたかったのは分かってる。だがな、皇子殿下と仲を深めることも大事なんだ。」
「分かってるよ。でもこんなに頻繁に会う必要性は感じられない。」
「とやかく言うんじゃない!」
ヴェリテはそんな話し声も気にせず扉を開けた。
「お待たせしました。」
ジュスティスの方を見ると優雅に微笑んでいた。美しい金髪が光に晒されてキラキラと輝いている。緑色の瞳は夏の新緑を思い出させた。
「では私はここで退散いたします。どうぞ愚息をよろしくお願いします。」
公爵がそそくさと退場する。
静かな空気が流れる。
ジュスティスは少し眉を顰めた。いつもならヴェリテがやかましい程に話しかけてくるのに。
「今度オペラでも見に行きませんか?最近話題になっているものがあるらしいのです。」
とうとうヴェリテが口を開いた。
「予定が合えば是非。」
ジュスティスは微笑む。
「今話題の作曲家が全ての楽曲を担当したらしいですよ。」
「すごいですね。」
ジュスティスはまた微笑む。
「その時舞台監督と喧嘩して、三日三晩寝ずに口論し続けたらしいですよ。」
「面白いですね。」
ジュスティスは笑みを深める。
「んー、オペラはイマイチに思えてきました。他のことをしましょう。何かしたいことはありますか?」
「ヴェリテ様のしたいことが僕のしたいことです。」
ジュスティスは笑みを崩さなかった。
…ジュスティスは僕のことを愛していないのだな。
ヴェリテは胸がズキンと痛んだ。
こんなに興味のない態度を取られていたというのにどうして今まで気づかなかったのだろう。
話すのはいつも僕から。
会話を盛り上げるのはいつも僕から。
今までジュスティスは意見を尊重してくれる人だと思っていた。しかし、違うのだ。僕に興味がなかっただけだった。それどころか、友人との時間を邪魔されて厄介に思ってる。
急に心が冷めていくのを感じる。
「ごめんなさい、今までのことは忘れてください。やはり出かけるのはやめましょう。お互い忙しいですから。これからは会うのも極力無しにしましょう。じゃあまた、お元気で。」
退出していくヴェリテをジュスティスはポカンと眺めていた。
急に何があった?今まであんなに俺に引っ付いてきたのに。今日のヴェリテは様子がおかしい。
ジュスティスはヴェリテの悲しげな瞳が頭から離れなかった。
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