愛などもう求めない

白兪

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悪夢

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「偽物!今すぐ死ね!」
「さっさと死んでちょうだい!」
「この偽物!」
罵詈雑言と共に石が飛んでくる。
大きなゴツゴツとした石がこめかみに当たり、だらりと血が流れる。
「…っ!!」
ヴェリテは痛みで歩みを止める。
「おい!さっさと歩け!あと3歩で処刑台だ!」

あと、3歩。あと3歩進んだら、とうとう死んでしまう。
ふと顔を上げると、少し離れたところで座る父親の姿を見つけた。

「お父様!これは何かの間違いです!僕は偽物ではありません!あなたの子供です!たとえ、本当に偽物だとしても、僕は何も知りませんでした!」
「さっさと処刑しろ。煩い声が頭に響く。」
「おい!黙って歩け!」
兵士に背中を思い切り蹴られる。
「お父様!お父様!」
「黙れ!」
父親の隣には冷酷にこちらを眺める兄の姿。その隣には、数ヶ月前に見つかった真の皇子であるというファクティスとヴェリテの元婚約者のジュスティス。
「怖いです。早く済ませてしまいましょう。」
ファクティスはぎゅっとジュスティスに抱きつく。
「安心して。絶対にアイツを近づけないから。」
ジュスティスは見たこともないような熱のこもった優しい微笑みを向けた。

「早く殺せー!」
「この偽物!」

「鎮まれ!」
父親が叫ぶと観衆たちは静まりかえる。
「ヴェリテ・ドゥズィエム・ロワイヤル、長年、皇子だと身分を偽り、多くの者を欺いた罪でお前を処刑する!」

「お父様!」
最後の力を振り絞り、大声で叫ぶ。

「この17年間、僕のことを1度でも愛してくれたことはありますか?」

「お前を愛したことは1度もない。」


「助けて!!!!!」
ハッと目を覚ますと見慣れた自室だった。天井には可愛らしい天使の絵が描かれている。
7歳児である自分の手は小さい。
今までのは夢だったのか。
長い長い夢だった。
ヴェリテはブルリと体を震わす。
大丈夫、ここは現実。大丈夫。大丈夫。
「皇子殿下、大丈夫ですか!?」
焦った表情をしたガルディエーヌがドアをバンっと開けて現れる。
「…ガルディエーヌ!!」
ガルディエーヌにぎゅっと抱きつく。
「どうかされましたか?」
「怖い夢を見たんだ。しばらくこのままでいさせて。」
「はい、もちろんですよ。」
ふわりと優しい温もりに包まれる。
夢の中でもガルディエーヌは優しかった。最後まで自分の潔白を信じてくれた。

「これは何かの間違いです!お優しいヴェリテ様がそんなことをなさるはずがありません!」
「お前は罪人の肩を持つというのか。」
兄が冷めた目でガルディエーヌを見つめる。
「おい!この女を拷問部屋に連れて行け!こいつも悪事を働いた仲間かもしれないからな。」
「ガルディエーヌ!待って!お兄様!ガルディエーヌは何も関係ありません!」
「うるさい!何故お前がお兄様と呼んでいる?不敬だ。さっさとこいつも牢屋に連れて行け!」
牢屋に入れられて3日後、ガルディエーヌが拷問に耐えられず死んでしまったことを聞かされた。

「ひくっ…ひくっ…怖かったよ…。」
「大丈夫ですよ、皇子殿下。ガルディエーヌがついておりますからね。」
「ありがとう。ずっと僕のそばにいてね。」
「…もちろんですよ。皇子殿下ぎ望む限り。」
ガルディエーヌの温もりに包まれ、ヴェリテはまた眠ってしまった。


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