15 / 15
最終話
しおりを挟む
レーリアはキースには会えないと思った。
今キースを見たら号泣して馬鹿と叫んでしまいそうだ。
使用人に急用ができたから帰ると言い、急いで王城を離れた。
「馬鹿!馬鹿!キースの大馬鹿者!!」
レーリアは自室で枕を叩きながら咽び泣いた。
レーリアは夕飯も食べずにそのまま眠りこくってしまった。
しばらく経って、キースが登校した。
生徒たちはレーリアと一緒ではないことを不思議に思ったが、病み上がりだからだろうかと結論付けた。
「レーリア…」
キースが声をかけようとした瞬間、ベルトラムがキースに抱きついた。
「キース様、この前約束したでしょう?学校を案内いたします!早く着いてきてください!」
レーリアはそれを冷めた目で見つめ、小さくため息をついた。
「用がないのであれば、僕はもう参りますね」
「待ってくれ!」
キースが焦ったような顔をする。
2人のいつもとは違う様子に、クラスメイトたちもざわめいている。
「ここでは何かと不都合でしょう。場所を変えて話しましょう」
レーリアが提案するとキースは素直に頷いた。
「私もお供します」
「いえ、ベルトラム様はここで待っていてください。申し訳ありませんが、レーリアと2人きりで話したいので」
そうキースが言うと、ベルトラムは渋々頷いた。
「急にお話とは何ですか?」
レーリアの鼓動が早く打っているのを感じる。
別れを切り出されるのではないかと恐れているのだ。
記憶のなくなった今、男のレーリアよりも、女装したベルトラムの方がいいと言い出すのではないか。
誰かがキースはレーリアの女装姿に惚れたと言っていたから、今のベルトラムに惚れたのではないか。
どっどっどっと心臓が大きく波打ち、手には汗が滲む。
楽しかった日々が甦るたび、キースと離れたくないとレーリアの全てが訴えている。
「実は…」
キースは重い口を開いた。
「今までは、療養部屋にいたのだが、3日前、ようやく自室に戻ることができた。
そこにはたくさんの肖像画が飾られていたんだ。全て少女のようだったが、見覚えがある気がしてよくよく見てみると、君だと言うことに気がついた。」
レーリアは目を大きく見開く。
「沢山ってどれくらいですか?」
「ざっと100はあるだろうか…」
「100枚も!?いつの間に!?」
キースは気まずそうに目を逸らした。
こほんと小さく咳払いをして話を続ける。
「次に机の引き出しを開けるとたくさんの手紙が出てきた。全てレーリア、君からのものだった。1番古いものは8年も前のものだった。
俺はそれを1から読み直すことにしたんだ」
「初めから?一万枚は超えますよ!」
「でも、気になったんだ。何故か無性に読みたくなった。」
キースは真っ直ぐのレーリアを見つめる。
「君からの手紙はどれも面白かった。些細なことも何故か愛おしく感じたんだ。君に無性に会いたくなった」
レーリアの視界が霞む。
キースがレーリアの涙を拭う。
「きっと以前の俺は、君の明るくて、優しくて、聡明で、一緒にいて楽しいところが好きになったんだろうな」
「キース…」
「俺はまた、君に恋してしまったみたいだ。何度記憶を失っても、君と交わした手紙がある限り、君との思い出が胸のどこかにしまってある限り、何度も君を愛するよ。」
「は?最悪すぎる」
その時後ろから声が響いた。
「マジで意味わかんねぇわ。後もうちょっとだったのに…」
ベルトラムが鬼のような表情で立っていた。
「だから無理だって言ったんだよ!あのクソ親父!」
ベルトラムが自分の頭をわしゃわしゃ掻く。その時、水色の美しい長髪がポーンっと弾け飛び、したから濃青色の短髪が現れた。
「スカートもお嬢様言葉もマジだるかったって言うのに…。全部水の泡かよ!!
最悪だ…。」
「べ、ベルトラム様…?」
レーリアは驚きで目を白黒させているが、キースは冷静に見つめている。
「父親に俺に取り入るよう命じられたか」
「ああ、そうだよ。俺は三男だ。しかも庶子だ。王宮での立場は弱い。どんなに嫌でも、無謀だと思っても断ることはできない」
ベルトラムは大きくため息をついた。
「戻ってもどうせ碌な目に合わねぇしな。もういっそ、このまま亡命しちまおうかな」
レーリアはそんなベルトラムの様子をじっと見つめた。
よく見るとベルトラムは筋肉が程よく付いており、肩幅も広い。あちらの国ではきっと良い騎士だったのだろう。そんな彼が、女装して淑女然としていたのだ。きっと血の滲むような努力があっただろう。
「友情ではダメでしょうか?」
「え?」
「キース様とベルトラム様が親友になれば、お父様もきっと邪険にはできないはずです」
「でも…俺、お前らに酷いことしちまったし…」
「酷いこと?何のことだ?確かに、お前のおかげで俺とレーリアの仲は深まったが」
「キース…」
レーリアとキースは見つめ合う。
キースがそっとレーリアの頬に手を添える。
「レーリア…愛してる…」
「おい!俺の前でイチャつくな!やめろ!!」
穏やかな午後の空にベルトラムの悲鳴が轟いたのだった。
その後、キースは無事記憶を取り戻した。
2人は互いに支え合い、幸せに暮らしたのだとか。
ーーfin.ーー
ゆっくり更新になってしまいましたが、最後まで読んでくださった皆様、本当に本当にありがとうございました。皆様のおかげです楽しく書き切ることができました。
またいつかお会いできる日を楽しみにしております。
今キースを見たら号泣して馬鹿と叫んでしまいそうだ。
使用人に急用ができたから帰ると言い、急いで王城を離れた。
「馬鹿!馬鹿!キースの大馬鹿者!!」
レーリアは自室で枕を叩きながら咽び泣いた。
レーリアは夕飯も食べずにそのまま眠りこくってしまった。
しばらく経って、キースが登校した。
生徒たちはレーリアと一緒ではないことを不思議に思ったが、病み上がりだからだろうかと結論付けた。
「レーリア…」
キースが声をかけようとした瞬間、ベルトラムがキースに抱きついた。
「キース様、この前約束したでしょう?学校を案内いたします!早く着いてきてください!」
レーリアはそれを冷めた目で見つめ、小さくため息をついた。
「用がないのであれば、僕はもう参りますね」
「待ってくれ!」
キースが焦ったような顔をする。
2人のいつもとは違う様子に、クラスメイトたちもざわめいている。
「ここでは何かと不都合でしょう。場所を変えて話しましょう」
レーリアが提案するとキースは素直に頷いた。
「私もお供します」
「いえ、ベルトラム様はここで待っていてください。申し訳ありませんが、レーリアと2人きりで話したいので」
そうキースが言うと、ベルトラムは渋々頷いた。
「急にお話とは何ですか?」
レーリアの鼓動が早く打っているのを感じる。
別れを切り出されるのではないかと恐れているのだ。
記憶のなくなった今、男のレーリアよりも、女装したベルトラムの方がいいと言い出すのではないか。
誰かがキースはレーリアの女装姿に惚れたと言っていたから、今のベルトラムに惚れたのではないか。
どっどっどっと心臓が大きく波打ち、手には汗が滲む。
楽しかった日々が甦るたび、キースと離れたくないとレーリアの全てが訴えている。
「実は…」
キースは重い口を開いた。
「今までは、療養部屋にいたのだが、3日前、ようやく自室に戻ることができた。
そこにはたくさんの肖像画が飾られていたんだ。全て少女のようだったが、見覚えがある気がしてよくよく見てみると、君だと言うことに気がついた。」
レーリアは目を大きく見開く。
「沢山ってどれくらいですか?」
「ざっと100はあるだろうか…」
「100枚も!?いつの間に!?」
キースは気まずそうに目を逸らした。
こほんと小さく咳払いをして話を続ける。
「次に机の引き出しを開けるとたくさんの手紙が出てきた。全てレーリア、君からのものだった。1番古いものは8年も前のものだった。
俺はそれを1から読み直すことにしたんだ」
「初めから?一万枚は超えますよ!」
「でも、気になったんだ。何故か無性に読みたくなった。」
キースは真っ直ぐのレーリアを見つめる。
「君からの手紙はどれも面白かった。些細なことも何故か愛おしく感じたんだ。君に無性に会いたくなった」
レーリアの視界が霞む。
キースがレーリアの涙を拭う。
「きっと以前の俺は、君の明るくて、優しくて、聡明で、一緒にいて楽しいところが好きになったんだろうな」
「キース…」
「俺はまた、君に恋してしまったみたいだ。何度記憶を失っても、君と交わした手紙がある限り、君との思い出が胸のどこかにしまってある限り、何度も君を愛するよ。」
「は?最悪すぎる」
その時後ろから声が響いた。
「マジで意味わかんねぇわ。後もうちょっとだったのに…」
ベルトラムが鬼のような表情で立っていた。
「だから無理だって言ったんだよ!あのクソ親父!」
ベルトラムが自分の頭をわしゃわしゃ掻く。その時、水色の美しい長髪がポーンっと弾け飛び、したから濃青色の短髪が現れた。
「スカートもお嬢様言葉もマジだるかったって言うのに…。全部水の泡かよ!!
最悪だ…。」
「べ、ベルトラム様…?」
レーリアは驚きで目を白黒させているが、キースは冷静に見つめている。
「父親に俺に取り入るよう命じられたか」
「ああ、そうだよ。俺は三男だ。しかも庶子だ。王宮での立場は弱い。どんなに嫌でも、無謀だと思っても断ることはできない」
ベルトラムは大きくため息をついた。
「戻ってもどうせ碌な目に合わねぇしな。もういっそ、このまま亡命しちまおうかな」
レーリアはそんなベルトラムの様子をじっと見つめた。
よく見るとベルトラムは筋肉が程よく付いており、肩幅も広い。あちらの国ではきっと良い騎士だったのだろう。そんな彼が、女装して淑女然としていたのだ。きっと血の滲むような努力があっただろう。
「友情ではダメでしょうか?」
「え?」
「キース様とベルトラム様が親友になれば、お父様もきっと邪険にはできないはずです」
「でも…俺、お前らに酷いことしちまったし…」
「酷いこと?何のことだ?確かに、お前のおかげで俺とレーリアの仲は深まったが」
「キース…」
レーリアとキースは見つめ合う。
キースがそっとレーリアの頬に手を添える。
「レーリア…愛してる…」
「おい!俺の前でイチャつくな!やめろ!!」
穏やかな午後の空にベルトラムの悲鳴が轟いたのだった。
その後、キースは無事記憶を取り戻した。
2人は互いに支え合い、幸せに暮らしたのだとか。
ーーfin.ーー
ゆっくり更新になってしまいましたが、最後まで読んでくださった皆様、本当に本当にありがとうございました。皆様のおかげです楽しく書き切ることができました。
またいつかお会いできる日を楽しみにしております。
248
お気に入りに追加
259
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
王子様から逃げられない!
白兪
BL
目を覚ますとBLゲームの主人公になっていた恭弥。この世界が受け入れられず、何とかして元の世界に戻りたいと考えるようになる。ゲームをクリアすれば元の世界に戻れるのでは…?そう思い立つが、思わぬ障壁が立ち塞がる。
平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。
しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。
基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。
一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。
それでも宜しければどうぞ。
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
つぎはぎのよる
伊達きよ
BL
同窓会の次の日、俺が目覚めたのはラブホテルだった。なんで、まさか、誰と、どうして。焦って部屋から脱出しようと試みた俺の目の前に現れたのは、思いがけない人物だった……。
同窓会の夜と次の日の朝に起こった、アレやソレやコレなお話。
祝福という名の厄介なモノがあるんですけど
野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。
愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。
それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。
ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。
イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?!
□■
少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです!
完結しました。
応援していただきありがとうございます!
□■
第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m
彼の至宝
まめ
BL
十五歳の誕生日を迎えた主人公が、突如として思い出した前世の記憶を、本当にこれって前世なの、どうなのとあれこれ悩みながら、自分の中で色々と折り合いをつけ、それぞれの幸せを見つける話。
転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】
リトルグラス
BL
人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。
転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。
しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。
ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す──
***
第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20)
**
[完結]嫁に出される俺、政略結婚ですがなんかイイ感じに収まりそうです。
BBやっこ
BL
実家は商家。
3男坊の実家の手伝いもほどほど、のんべんだらりと暮らしていた。
趣味の料理、読書と交友関係も少ない。独り身を満喫していた。
そのうち、結婚するかもしれないが大した理由もないんだろうなあ。
そんなおれに両親が持ってきた結婚話。というか、政略結婚だろ?!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
新作!ありがとうございます!
お兄ちゃんの心の声に爆笑〜🤣
更新楽しみにしてます❣️
いつも応援ありがとうございます。私の好きな溺愛ものにする予定です☺️最後まで応援してくれると嬉しいです🙇♀️