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最終話

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レーリアはキースには会えないと思った。
今キースを見たら号泣して馬鹿と叫んでしまいそうだ。

使用人に急用ができたから帰ると言い、急いで王城を離れた。

「馬鹿!馬鹿!キースの大馬鹿者!!」

レーリアは自室で枕を叩きながら咽び泣いた。

レーリアは夕飯も食べずにそのまま眠りこくってしまった。


しばらく経って、キースが登校した。
生徒たちはレーリアと一緒ではないことを不思議に思ったが、病み上がりだからだろうかと結論付けた。


「レーリア…」

キースが声をかけようとした瞬間、ベルトラムがキースに抱きついた。

「キース様、この前約束したでしょう?学校を案内いたします!早く着いてきてください!」

レーリアはそれを冷めた目で見つめ、小さくため息をついた。

「用がないのであれば、僕はもう参りますね」

「待ってくれ!」

キースが焦ったような顔をする。

2人のいつもとは違う様子に、クラスメイトたちもざわめいている。

「ここでは何かと不都合でしょう。場所を変えて話しましょう」

レーリアが提案するとキースは素直に頷いた。

「私もお供します」

「いえ、ベルトラム様はここで待っていてください。申し訳ありませんが、レーリアと2人きりで話したいので」

そうキースが言うと、ベルトラムは渋々頷いた。


「急にお話とは何ですか?」

レーリアの鼓動が早く打っているのを感じる。
別れを切り出されるのではないかと恐れているのだ。

記憶のなくなった今、男のレーリアよりも、女装したベルトラムの方がいいと言い出すのではないか。

誰かがキースはレーリアの女装姿に惚れたと言っていたから、今のベルトラムに惚れたのではないか。

どっどっどっと心臓が大きく波打ち、手には汗が滲む。

楽しかった日々が甦るたび、キースと離れたくないとレーリアの全てが訴えている。

「実は…」

キースは重い口を開いた。

「今までは、療養部屋にいたのだが、3日前、ようやく自室に戻ることができた。
そこにはたくさんの肖像画が飾られていたんだ。全て少女のようだったが、見覚えがある気がしてよくよく見てみると、君だと言うことに気がついた。」

レーリアは目を大きく見開く。

「沢山ってどれくらいですか?」

「ざっと100はあるだろうか…」

「100枚も!?いつの間に!?」

キースは気まずそうに目を逸らした。

こほんと小さく咳払いをして話を続ける。

「次に机の引き出しを開けるとたくさんの手紙が出てきた。全てレーリア、君からのものだった。1番古いものは8年も前のものだった。
俺はそれを1から読み直すことにしたんだ」

「初めから?一万枚は超えますよ!」

「でも、気になったんだ。何故か無性に読みたくなった。」

キースは真っ直ぐのレーリアを見つめる。

「君からの手紙はどれも面白かった。些細なことも何故か愛おしく感じたんだ。君に無性に会いたくなった」

レーリアの視界が霞む。
キースがレーリアの涙を拭う。

「きっと以前の俺は、君の明るくて、優しくて、聡明で、一緒にいて楽しいところが好きになったんだろうな」

「キース…」

「俺はまた、君に恋してしまったみたいだ。何度記憶を失っても、君と交わした手紙がある限り、君との思い出が胸のどこかにしまってある限り、何度も君を愛するよ。」


「は?最悪すぎる」

その時後ろから声が響いた。

「マジで意味わかんねぇわ。後もうちょっとだったのに…」

ベルトラムが鬼のような表情で立っていた。

「だから無理だって言ったんだよ!あのクソ親父!」

ベルトラムが自分の頭をわしゃわしゃ掻く。その時、水色の美しい長髪がポーンっと弾け飛び、したから濃青色の短髪が現れた。

「スカートもお嬢様言葉もマジだるかったって言うのに…。全部水の泡かよ!!
最悪だ…。」

「べ、ベルトラム様…?」

レーリアは驚きで目を白黒させているが、キースは冷静に見つめている。

「父親に俺に取り入るよう命じられたか」

「ああ、そうだよ。俺は三男だ。しかも庶子だ。王宮での立場は弱い。どんなに嫌でも、無謀だと思っても断ることはできない」

ベルトラムは大きくため息をついた。

「戻ってもどうせ碌な目に合わねぇしな。もういっそ、このまま亡命しちまおうかな」

レーリアはそんなベルトラムの様子をじっと見つめた。

よく見るとベルトラムは筋肉が程よく付いており、肩幅も広い。あちらの国ではきっと良い騎士だったのだろう。そんな彼が、女装して淑女然としていたのだ。きっと血の滲むような努力があっただろう。

「友情ではダメでしょうか?」

「え?」

「キース様とベルトラム様が親友になれば、お父様もきっと邪険にはできないはずです」

「でも…俺、お前らに酷いことしちまったし…」

「酷いこと?何のことだ?確かに、お前のおかげで俺とレーリアの仲は深まったが」

「キース…」

レーリアとキースは見つめ合う。

キースがそっとレーリアの頬に手を添える。

「レーリア…愛してる…」


「おい!俺の前でイチャつくな!やめろ!!」

穏やかな午後の空にベルトラムの悲鳴が轟いたのだった。


その後、キースは無事記憶を取り戻した。

2人は互いに支え合い、幸せに暮らしたのだとか。


ーーfin.ーー



ゆっくり更新になってしまいましたが、最後まで読んでくださった皆様、本当に本当にありがとうございました。皆様のおかげです楽しく書き切ることができました。
またいつかお会いできる日を楽しみにしております。

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感想 1

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みんなの感想(1件)

Madame gray-01
2024.05.25 Madame gray-01

新作!ありがとうございます!

お兄ちゃんの心の声に爆笑〜🤣

更新楽しみにしてます❣️

白兪
2024.05.25 白兪

いつも応援ありがとうございます。私の好きな溺愛ものにする予定です☺️最後まで応援してくれると嬉しいです🙇‍♀️

解除

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