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「キース、変なこと言わないでよ。全く冗談に聞こえないよ」
「申し訳ないが、君は本当に誰だ?」
「本気で言っているのか?」
レーリアの手が震える。
「君は僕の友人か…?」
レーリアは言葉が続けられなかった。
しばらくして、医師が来た。
医師は頭の打ちどころが悪く記憶障害を起こしていると診断した。
キースは記憶がレーリアと出会う前までに戻っているようだ。
しかし、知識や技術は身についたままだった。
今全てを思い出すかもしれないし、明日思い出すかもしれない。それとも一生思い出さないかもしれない。
それは医師にも分からないことだった。
「それでは、君と私が婚約者だったと…?」
「はい…」
「だが、君は男だろう?」
レーリアは拳を強く握りしめた。
そうしなければ涙が堪えられそうになかったから。
「君の家は公爵家だったな。何か政治的な思惑でもあったのか…?」
キースはまさか自分がレーリアと恋に落ちていたなんて微塵も思っていない様子だった。
「僕とキース様はとても仲が良かったのです…」
「そうか。悪いが今まで通りの対応はできないと思う。もちろん、婚約者としての最低限の務めは果たすつもりではあるが」
レーリアの頭は真っ白になった。
絶望以上の何かが襲ってきた。
「しばらく1人にしてくれ。考え事をしたい」
キースはレーリアに一瞥もくれず冷たく言い放った。
レーリアは軽く礼をしてその場を去った。
「一つ伝え忘れていたことがございました。
助けてくださって、本当に有難うございました。」
レーリアは深々とお辞儀をした。
キースは黙ってそれを見つめていた。
次の日、いつもは来るキースとお迎えがなかった。
覚悟はしていたものの、レーリアは胸が苦しくなった。
「いや、そもそも今日は学校に来ないのかもしれないし…」
昨日、長い間意識を失っていたのだから、しばらくは自宅で療養するだろう。
“今まで通りにはできない”
キースの冷たい視線を思い出す。
あんな風に見つめられたことはなかった。
いつも甘くて優しくて、蜂蜜のようだった。
「キース、会いたいよ…」
レーリアは馬車の中で1人涙を流した。
「申し訳ないが、君は本当に誰だ?」
「本気で言っているのか?」
レーリアの手が震える。
「君は僕の友人か…?」
レーリアは言葉が続けられなかった。
しばらくして、医師が来た。
医師は頭の打ちどころが悪く記憶障害を起こしていると診断した。
キースは記憶がレーリアと出会う前までに戻っているようだ。
しかし、知識や技術は身についたままだった。
今全てを思い出すかもしれないし、明日思い出すかもしれない。それとも一生思い出さないかもしれない。
それは医師にも分からないことだった。
「それでは、君と私が婚約者だったと…?」
「はい…」
「だが、君は男だろう?」
レーリアは拳を強く握りしめた。
そうしなければ涙が堪えられそうになかったから。
「君の家は公爵家だったな。何か政治的な思惑でもあったのか…?」
キースはまさか自分がレーリアと恋に落ちていたなんて微塵も思っていない様子だった。
「僕とキース様はとても仲が良かったのです…」
「そうか。悪いが今まで通りの対応はできないと思う。もちろん、婚約者としての最低限の務めは果たすつもりではあるが」
レーリアの頭は真っ白になった。
絶望以上の何かが襲ってきた。
「しばらく1人にしてくれ。考え事をしたい」
キースはレーリアに一瞥もくれず冷たく言い放った。
レーリアは軽く礼をしてその場を去った。
「一つ伝え忘れていたことがございました。
助けてくださって、本当に有難うございました。」
レーリアは深々とお辞儀をした。
キースは黙ってそれを見つめていた。
次の日、いつもは来るキースとお迎えがなかった。
覚悟はしていたものの、レーリアは胸が苦しくなった。
「いや、そもそも今日は学校に来ないのかもしれないし…」
昨日、長い間意識を失っていたのだから、しばらくは自宅で療養するだろう。
“今まで通りにはできない”
キースの冷たい視線を思い出す。
あんな風に見つめられたことはなかった。
いつも甘くて優しくて、蜂蜜のようだった。
「キース、会いたいよ…」
レーリアは馬車の中で1人涙を流した。
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