上 下
12 / 15

しおりを挟む
「ちょっと!あのままでいいんですか?」

放課後、急にステラに呼び止められ、レーリアは足を止める。

「何のこと?」

「きーすさまのことです!あの女狐に奪われるかもしれませんよ!!」

「こら、ステラ。相手は王族だよ。冗談でもそんなこと言っちゃいけない」

「でも…」

ステラは釈然としない顔をする。

「ステラは優しいね。僕のことを気遣ってくれてるんでしょう?」

「ちがっ!そんなんじゃ…!」

レーリアは優しく微笑む。

「でも大丈夫だよ。キースと僕の縁はそんなにやわじゃないから。
僕はキースを信じてる。」

レーリアはステラをまっすぐ見つめて言った。

「そんなこと言ってると私がキース様を奪っちゃうかもしれませんよ!」

「?
ステラはデレクのことが好きだろ?」

「で、デレクのことを!?
全然好きじゃありません、あんな奴!!」

「でも、デレクのことをいつも目で追いかけてるじゃないか。それにデレクが他の女の子と話してるのを見るとものすごく悲しそうな顔をしてる」

ステラは顔が真っ赤になった。
口をぱくぱくさせて声にならない叫びをあげている。

「それはっ…!
ただ、懐いてる野犬が他の人にも懐いてるの見て寂しい、みたいな!そんな感情です!好きじゃありませんから!」

レーリアはニヤニヤした顔をする。

「その顔やめてください!本当に好きじゃありませんから!!」

顔を真っ赤にさせて怒るステラも可愛らしい。

本当に自分の感情に気づいていないのか、それとも気づいてて否定しているのか。

いずれにせよ、2人の恋を応援したいとレーリアは思った。

2人はきっとお似合いだろうから。



レーリアとキースが廊下で話していると、案の定ベルトラムがやってきた。

「キース様っ!」

ベルトラムはレーリアの体をぐいっと押す。

レーリアの体がふらっと傾いた。

不幸なことにレーリアのすぐ横は階段であった。

落ちる。

そう思った瞬間に誰かに突き飛ばされた。

「キース!!!」

スローモーションのようにキースが落ちていく。

ドンっと大きな音を立ててキースは床に頭をぶつけた。

「キース!キース、しっりして!!」

レーリアが声をかけるがキースは返事をしない。

キースはそのまま医務室へと運ばれた。


キースが目を覚ましたのは3時間後だった。

レーリアはその間ずっとキースのそばにいた。

「キース、目を覚ましてくれ…」

レーリアがキースの手をぎゅっと握りしめる。

「んん…」

その時キースがかすかに身じろぎした。

「キース!」

「ん…。痛…。頭が痛いな…」

「キース!良かった!目を覚ましてくれて本当に良かった。」

レーリアは涙目になりながらキースに抱きつく。

「ん…?君は誰だ?」

キースのビー玉のような目がレーリアを見つめていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

祝福という名の厄介なモノがあるんですけど

野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。 愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。 それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。  ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。 イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?! □■ 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 完結しました。 応援していただきありがとうございます! □■ 第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

【完結】雨を待つ隠れ家

エウラ
BL
VRMMO 『Free Fantasy online』通称FFOのログイン中に、異世界召喚された桜庭六花。しかし、それはその異世界では禁忌魔法で欠陥もあり、魂だけが召喚された為、見かねた異世界の神が急遽アバターをかたどった身体を創って魂を容れたが、馴染む前に召喚陣に転移してしまう。 結果、隷属の首輪で奴隷として生きることになり・・・。 主人公の待遇はかなり酷いです。(身体的にも精神的にも辛い) 後に救い出され、溺愛されてハッピーエンド予定。 設定が仕事しませんでした。全員キャラが暴走。ノリと勢いで書いてるので、それでもよかったら読んで下さい。 番外編を追加していましたが、長くなって収拾つかなくなりそうなのでこちらは完結にします。 読んでくださってありがとう御座いました。 別タイトルで番外編を書く予定です。

【完結】役立たずの僕は王子に婚約破棄され…にゃ。でも猫好きの王子が溺愛してくれたのにゃ

鏑木 うりこ
BL
僕は王宮で能無しの役立たずと全員から疎まれていた。そしてとうとう大失敗をやらかす。 「カイ!お前とは婚約破棄だ!二度と顔を出すんじゃない!」  ビクビクと小さくなる僕に手を差し伸べてくれたのは隣の隣の国の王子様だった。 「では、私がいただいても?」  僕はどうしたら良いんだろう?え?僕は一体?!  役立たずの僕がとても可愛がられています!  BLですが、R指定がありません! 色々緩いです。 1万字程度の短編です。若干のざまぁ要素がありますが、令嬢ものではございせん。 本編は完結済みです。 小話も完結致しました。  土日のお供になれば嬉しいです(*'▽'*)  小話の方もこれで完結となります。お読みいただき誠にありがとうございました! アンダルシュ様Twitter企画 お月見《うちの子》推し会で小話を書いています。 お題・お月見⇒https://www.alphapolis.co.jp/novel/804656690/606544354

好きな人の婚約者を探しています

迷路を跳ぶ狐
BL
一族から捨てられた、常にネガティブな俺は、狼の王子に拾われた時から、王子に恋をしていた。絶対に叶うはずないし、手を出すつもりもない。完全に諦めていたのに……。口下手乱暴王子×超マイナス思考吸血鬼 *全12話+後日談1話

【完】ちょっと前まで可愛い後輩だったじゃん!!

福の島
BL
家族で異世界転生して早5年、なんか巡り人とか言う大層な役目を貰った俺たち家族だったけど、2人の姉兄はそれぞれ旦那とお幸せらしい。 まぁ、俺と言えば王様の進めに従って貴族学校に通っていた。 優しい先輩に慕ってくれる可愛い後輩…まぁ順風満帆…ってやつ… だったなぁ…この前までは。 結婚を前提に…なんて…急すぎるだろ!!なんでアイツ…よりによって俺に…!?? 前作短編『ゆるだる転生者の平穏なお嫁さん生活』に登場する優馬の続編です。 今作だけでも楽しめるように書きますが、こちらもよろしくお願いします。

【完結】王子に婚約破棄され故郷に帰った僕は、成長した美形の愛弟子に愛される事になりました。──BL短編集──

櫻坂 真紀
BL
【王子に婚約破棄され故郷に帰った僕は、成長した美形の愛弟子に愛される事になりました。】 元ショタの美形愛弟子×婚約破棄された出戻り魔法使いのお話、完結しました。 1万文字前後のBL短編集です。 規約の改定に伴い、過去の作品をまとめました。 暫く作品を書く予定はないので、ここで一旦完結します。 (もしまた書くなら、新しく短編集を作ると思います。)

なぜか第三王子と結婚することになりました

鳳来 悠
BL
第三王子が婚約破棄したらしい。そしておれに急に婚約話がやってきた。……そこまではいい。しかし何でその相手が王子なの!?会ったことなんて数えるほどしか───って、え、おれもよく知ってるやつ?身分偽ってたぁ!? こうして結婚せざるを得ない状況になりました…………。 金髪碧眼王子様×黒髪無自覚美人です ハッピーエンドにするつもり 長編とありますが、あまり長くはならないようにする予定です

処理中です...