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Ⅶ
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レーリアは来たる衝撃に備えてぎゅっと目を瞑った。しかし、キースが下敷きになってくれたおかげであまり大きな打撃は来なかった。
「キース!大丈夫!?」
レーリアはキースに声をかける。
「これくらいなんとも無いよ。受け身を取ったから」
さすが、何年も武道を行っていた人は違う。レーリアも早くそうなりたいものだ。
「結構落ちたみたいだね…。ここはどこか全くわからない」
レーリアは辺りを見渡すが、獣道一つすらない。
「そうだね。今動くのは危険だ。ここにとどまって救助を待とう」
「分かった。発煙筒でもあれば場所を知らせられるんだけどな…」
レーリアとキースは倒木に座り込む。
2人の状況とは反対に、風がそよそよと吹き心地よい。
「2人きりだね」
「何言ってんの。今までも2人きりになることは沢山あったでしょ」
「でも、最近はずっと忙しくて2人きりになれなかったから、こんな状況でも嬉しいよ」
キースは寂しそうに微笑んだ。
確かに最近は、学校のテストやら合宿の準備やらで忙しくて2人でゆっくりする時間もなかった。
「こうして2人きりになれるのも悪くは無いかもね」
レーリアがくすりと微笑むとキースは目を輝かせた。
「素直なレーリア…!嬉しい…!!」
「森の中にいると、初めて会った日のことを思い出すな」
レーリアはキースと初めて会った日のことを思い出していた。
王家主催の狩猟大会にレーリアも見物に参加していた。男たちが狩猟しているのを待つ間、妻や子供たちは社交を行うのだ。
レーリアは見た目のこともあって、女の子たちと一緒にいることが多かった。
だが、やはり女の子とは話が合わないことも多々あり、どちらの輪にも入らずに1人でまったりすることもあった。
男の子が美しい花に手を伸ばそうとしているのが目に入った。
「待って!その花はだめ!毒を持ってる!」
レーリアは慌てて声をかける。
少年はチラリとこちらを一瞥すると淡々とした声で言った。
「知っている。しかし、毒は薬にもなる。父上が怪我をした時のために摘んでおこうと思ったんだ。」
「随分と博識なんですね」
レーリアは素直に感嘆した。
その花は山奥の一部にしか咲かない珍しい種類の花だった。
余程の植物好きなのかもしれない。
「しかし、君も知っていた。」
「私は、植物が好きだからたまたま知っていただけです。」
「じゃあこの花の名前は?」
「ヒメオドリコソウですね」
「こっちは?」
「水芭蕉です」
「すごい知識だな。」
少年は少し目を輝かせた。
無表情な顔に少し赤みが増す。
「先ほどとても珍しいお花を見つけたんです。よろしければ一緒に観に行きませんか?」
「ああ。」
2人は並んで歩く。
するとカエルが飛び出してきた。
少年はカエルを見て、それからレーリアの顔を見た。
「騒がないのだな。」
「はい?」
「普通、女というのはカエルを見ると大騒ぎだ。」
「私はそれには当てはまりませんから。
それに、こんなに可愛いカエルをどうして嫌うことなどできましょうか」
レーリアは可愛らしい雨蛙を見てふふふと笑った。
「君は不思議な人だ。私にも気後れせずに話しかけるし、博識だし、虫も怖がらない。」
「あら、そういえば挨拶がまだでしたね。
お初お目にかかります、ローズベルト公爵家のレーリアと申します。以後お見知り置きを、王子殿下」
レーリアは美しいカーテシーを見せた。
にこりと微笑むと、少年の顔が真っ赤になる。
「やはり、私の正体などわかっていたか」
「それはもちろん、王国の太陽の顔がわからないことなどあり得ませんもの」
「私のことはキースと呼んでくれ、レーリア」
キースの見せた初めての笑顔だった。
あどけなく美しい笑顔であった。
レーリアはその眩しさに目を細めたのだった。
「キース!大丈夫!?」
レーリアはキースに声をかける。
「これくらいなんとも無いよ。受け身を取ったから」
さすが、何年も武道を行っていた人は違う。レーリアも早くそうなりたいものだ。
「結構落ちたみたいだね…。ここはどこか全くわからない」
レーリアは辺りを見渡すが、獣道一つすらない。
「そうだね。今動くのは危険だ。ここにとどまって救助を待とう」
「分かった。発煙筒でもあれば場所を知らせられるんだけどな…」
レーリアとキースは倒木に座り込む。
2人の状況とは反対に、風がそよそよと吹き心地よい。
「2人きりだね」
「何言ってんの。今までも2人きりになることは沢山あったでしょ」
「でも、最近はずっと忙しくて2人きりになれなかったから、こんな状況でも嬉しいよ」
キースは寂しそうに微笑んだ。
確かに最近は、学校のテストやら合宿の準備やらで忙しくて2人でゆっくりする時間もなかった。
「こうして2人きりになれるのも悪くは無いかもね」
レーリアがくすりと微笑むとキースは目を輝かせた。
「素直なレーリア…!嬉しい…!!」
「森の中にいると、初めて会った日のことを思い出すな」
レーリアはキースと初めて会った日のことを思い出していた。
王家主催の狩猟大会にレーリアも見物に参加していた。男たちが狩猟しているのを待つ間、妻や子供たちは社交を行うのだ。
レーリアは見た目のこともあって、女の子たちと一緒にいることが多かった。
だが、やはり女の子とは話が合わないことも多々あり、どちらの輪にも入らずに1人でまったりすることもあった。
男の子が美しい花に手を伸ばそうとしているのが目に入った。
「待って!その花はだめ!毒を持ってる!」
レーリアは慌てて声をかける。
少年はチラリとこちらを一瞥すると淡々とした声で言った。
「知っている。しかし、毒は薬にもなる。父上が怪我をした時のために摘んでおこうと思ったんだ。」
「随分と博識なんですね」
レーリアは素直に感嘆した。
その花は山奥の一部にしか咲かない珍しい種類の花だった。
余程の植物好きなのかもしれない。
「しかし、君も知っていた。」
「私は、植物が好きだからたまたま知っていただけです。」
「じゃあこの花の名前は?」
「ヒメオドリコソウですね」
「こっちは?」
「水芭蕉です」
「すごい知識だな。」
少年は少し目を輝かせた。
無表情な顔に少し赤みが増す。
「先ほどとても珍しいお花を見つけたんです。よろしければ一緒に観に行きませんか?」
「ああ。」
2人は並んで歩く。
するとカエルが飛び出してきた。
少年はカエルを見て、それからレーリアの顔を見た。
「騒がないのだな。」
「はい?」
「普通、女というのはカエルを見ると大騒ぎだ。」
「私はそれには当てはまりませんから。
それに、こんなに可愛いカエルをどうして嫌うことなどできましょうか」
レーリアは可愛らしい雨蛙を見てふふふと笑った。
「君は不思議な人だ。私にも気後れせずに話しかけるし、博識だし、虫も怖がらない。」
「あら、そういえば挨拶がまだでしたね。
お初お目にかかります、ローズベルト公爵家のレーリアと申します。以後お見知り置きを、王子殿下」
レーリアは美しいカーテシーを見せた。
にこりと微笑むと、少年の顔が真っ赤になる。
「やはり、私の正体などわかっていたか」
「それはもちろん、王国の太陽の顔がわからないことなどあり得ませんもの」
「私のことはキースと呼んでくれ、レーリア」
キースの見せた初めての笑顔だった。
あどけなく美しい笑顔であった。
レーリアはその眩しさに目を細めたのだった。
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