上 下
6 / 15

しおりを挟む
朝からキースはいつも以上にご機嫌だ。

剣術の試合では5人がかりでも圧勝し、数学の授業では誰も解けなかった問題をスラスラと解いてしまった。

「何かいいことでもあったのか?」

レーリアが尋ねると、キースはさらに笑みを深くした。

「分かる?
もうすぐで合宿があるからだよ!」

「あー、合宿ね。リーゲル島に行って、色んなことして過ごすんだっけ」

「そう!何より、俺たち初めてのお泊まりだよ!!俺たちは一つ屋根の下夜を明かすんだ…」

「別部屋だけどね。」

レーリアの反論は興奮気味のキースには届かない。

「トランプして、王様ゲームして、それでいい感じになったら…」

その時、キースは後ろから誰かにチョップされた。

「浮かれすぎだ、キース」

「エドワルド!」

キースの悪友であり、親友であるエドワルドがやれやれと言った表情で立っていた。

「盛り上がるのもいいけどな、このままだと熱を出すぞ。それに、夜の9時以降は自室からの外出は禁止だ」

「早すぎる!」

キースは項垂れた。

「お前ってやつは、本当にレーリア様のことになると馬鹿になるな…。
レーリア様も大変だろ?」

「ううん、楽しいよ。キースは見てて飽きない。僕の家のポメラニアンみたいだ」

「犬扱いか…」

エドワルドは苦笑する。

「お泊まり会くらいいつでもできるよ」

レーリアはそう言ってキースを慰めるが、レーリアは知らない。
お泊まり会をするには、過保護なレーリアの父と兄という鉄壁を乗り越えなくてはならないことを。


潮風が優しく髪を靡かせ、柔らかな日差しがレーリアの白いほおを照らした。

「気持ちいい…」

木造の豪華な船に生徒たちはわらわらと乗り込んでいる。

穏やかな海を船は優雅に進んでいくが、やはり、乗り物酔いする生徒もいるようだ。

「気持ち悪い…」

甲板の隅でステラがぐったりとしている。

「大丈夫?お水飲む?」

レーリアが顔を覗き込む。

「レーリア…!…様…。大丈夫です。放っておいてください」

ステラの顔色は相当悪い。

「ステラ!これ、薬!」

その時現れたのは同じクラスメイトのデニスだった。

「別にいらないって言ってるでしょ!」

「そんなこと言ったって、飲まなきゃダメだよ!」

いつもおとなしく教室の隅にいるデニスがこんなに大きな声を出すのは初めて聞いた。
もしかしたら、2人は特別な仲なのだろうか。

「その薬、気味が悪いわ。そんな緑色の薬飲めるわけじゃないじゃない!!」

大声を出しているうちに、ステラのほおに赤みが増す。

元気になってきたようだ。

「もう、あっちに行ってよ!
私にかまわないでって言ってるでしょ!」

「でも君のことが心配なんだ!」

2人がギャーギャー言い合いをしているうちに、とうとう船は島に到着した。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

好きな人の婚約者を探しています

迷路を跳ぶ狐
BL
一族から捨てられた、常にネガティブな俺は、狼の王子に拾われた時から、王子に恋をしていた。絶対に叶うはずないし、手を出すつもりもない。完全に諦めていたのに……。口下手乱暴王子×超マイナス思考吸血鬼 *全12話+後日談1話

祝福という名の厄介なモノがあるんですけど

野犬 猫兄
BL
魔導研究員のディルカには悩みがあった。 愛し愛される二人の証しとして、同じ場所に同じアザが発現するという『花祝紋』が独り身のディルカの身体にいつの間にか現れていたのだ。 それは女神の祝福とまでいわれるアザで、そんな大層なもの誰にも見せられるわけがない。  ディルカは、そんなアザがあるものだから、誰とも恋愛できずにいた。 イチャイチャ……イチャイチャしたいんですけど?! □■ 少しでも楽しんでいただけたら嬉しいです! 完結しました。 応援していただきありがとうございます! □■ 第11回BL大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございましたm(__)m

転生したけどやり直す前に終わった【加筆版】

リトルグラス
BL
 人生を無気力に無意味に生きた、負け組男がナーロッパ的世界観に転生した。  転生モノ小説を読みながら「俺だってやり直せるなら、今度こそ頑張るのにな」と、思いながら最期を迎えた前世を思い出し「今度は人生を成功させる」と転生した男、アイザックは子供時代から努力を重ねた。  しかし、アイザックは成人の直前で家族を処刑され、平民落ちにされ、すべてを失った状態で追放された。  ろくなチートもなく、あるのは子供時代の努力の結果だけ。ともに追放された子ども達を抱えてアイザックは南の港町を目指す── ***  第11回BL小説大賞にエントリーするために修正と加筆を加え、作者のつぶやきは削除しました。(23'10'20) **

【完結】役立たずの僕は王子に婚約破棄され…にゃ。でも猫好きの王子が溺愛してくれたのにゃ

鏑木 うりこ
BL
僕は王宮で能無しの役立たずと全員から疎まれていた。そしてとうとう大失敗をやらかす。 「カイ!お前とは婚約破棄だ!二度と顔を出すんじゃない!」  ビクビクと小さくなる僕に手を差し伸べてくれたのは隣の隣の国の王子様だった。 「では、私がいただいても?」  僕はどうしたら良いんだろう?え?僕は一体?!  役立たずの僕がとても可愛がられています!  BLですが、R指定がありません! 色々緩いです。 1万字程度の短編です。若干のざまぁ要素がありますが、令嬢ものではございせん。 本編は完結済みです。 小話も完結致しました。  土日のお供になれば嬉しいです(*'▽'*)  小話の方もこれで完結となります。お読みいただき誠にありがとうございました! アンダルシュ様Twitter企画 お月見《うちの子》推し会で小話を書いています。 お題・お月見⇒https://www.alphapolis.co.jp/novel/804656690/606544354

なんでも諦めてきた俺だけどヤンデレな彼が貴族の男娼になるなんて黙っていられない

迷路を跳ぶ狐
BL
 自己中な無表情と言われて、恋人と別れたクレッジは冒険者としてぼんやりした毎日を送っていた。  恋愛なんて辛いこと、もうしたくなかった。大体のことはなんでも諦めてのんびりした毎日を送っていたのに、また好きな人ができてしまう。  しかし、告白しようと思っていた大事な日に、知り合いの貴族から、その人が男娼になることを聞いたクレッジは、そんなの黙って見ていられないと止めに急ぐが、好きな人はなんだか様子がおかしくて……。

学園の俺様と、辺境地の僕

そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ? 【全12話になります。よろしくお願いします。】

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

【完結】異世界転生して美形になれたんだから全力で好きな事するけど

福の島
BL
もうバンドマンは嫌だ…顔だけで選ぶのやめよう…友達に諭されて戻れるうちに戻った寺内陸はその日のうちに車にひかれて死んだ。 生まれ変わったのは多分どこかの悪役令息 悪役になったのはちょっとガッカリだけど、金も権力もあって、その上、顔…髪…身長…せっかく美形に産まれたなら俺は全力で好きな事をしたい!!!! とりあえず目指すはクソ婚約者との婚約破棄!!そしてとっとと学園卒業して冒険者になる!!! 平民だけど色々強いクーデレ✖️メンタル強のこの世で1番の美人 強い主人公が友達とかと頑張るお話です 短編なのでパッパと進みます 勢いで書いてるので誤字脱字等ありましたら申し訳ないです…

処理中です...