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Ⅴ
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朝からキースはいつも以上にご機嫌だ。
剣術の試合では5人がかりでも圧勝し、数学の授業では誰も解けなかった問題をスラスラと解いてしまった。
「何かいいことでもあったのか?」
レーリアが尋ねると、キースはさらに笑みを深くした。
「分かる?
もうすぐで合宿があるからだよ!」
「あー、合宿ね。リーゲル島に行って、色んなことして過ごすんだっけ」
「そう!何より、俺たち初めてのお泊まりだよ!!俺たちは一つ屋根の下夜を明かすんだ…」
「別部屋だけどね。」
レーリアの反論は興奮気味のキースには届かない。
「トランプして、王様ゲームして、それでいい感じになったら…」
その時、キースは後ろから誰かにチョップされた。
「浮かれすぎだ、キース」
「エドワルド!」
キースの悪友であり、親友であるエドワルドがやれやれと言った表情で立っていた。
「盛り上がるのもいいけどな、このままだと熱を出すぞ。それに、夜の9時以降は自室からの外出は禁止だ」
「早すぎる!」
キースは項垂れた。
「お前ってやつは、本当にレーリア様のことになると馬鹿になるな…。
レーリア様も大変だろ?」
「ううん、楽しいよ。キースは見てて飽きない。僕の家のポメラニアンみたいだ」
「犬扱いか…」
エドワルドは苦笑する。
「お泊まり会くらいいつでもできるよ」
レーリアはそう言ってキースを慰めるが、レーリアは知らない。
お泊まり会をするには、過保護なレーリアの父と兄という鉄壁を乗り越えなくてはならないことを。
潮風が優しく髪を靡かせ、柔らかな日差しがレーリアの白いほおを照らした。
「気持ちいい…」
木造の豪華な船に生徒たちはわらわらと乗り込んでいる。
穏やかな海を船は優雅に進んでいくが、やはり、乗り物酔いする生徒もいるようだ。
「気持ち悪い…」
甲板の隅でステラがぐったりとしている。
「大丈夫?お水飲む?」
レーリアが顔を覗き込む。
「レーリア…!…様…。大丈夫です。放っておいてください」
ステラの顔色は相当悪い。
「ステラ!これ、薬!」
その時現れたのは同じクラスメイトのデニスだった。
「別にいらないって言ってるでしょ!」
「そんなこと言ったって、飲まなきゃダメだよ!」
いつもおとなしく教室の隅にいるデニスがこんなに大きな声を出すのは初めて聞いた。
もしかしたら、2人は特別な仲なのだろうか。
「その薬、気味が悪いわ。そんな緑色の薬飲めるわけじゃないじゃない!!」
大声を出しているうちに、ステラのほおに赤みが増す。
元気になってきたようだ。
「もう、あっちに行ってよ!
私にかまわないでって言ってるでしょ!」
「でも君のことが心配なんだ!」
2人がギャーギャー言い合いをしているうちに、とうとう船は島に到着した。
剣術の試合では5人がかりでも圧勝し、数学の授業では誰も解けなかった問題をスラスラと解いてしまった。
「何かいいことでもあったのか?」
レーリアが尋ねると、キースはさらに笑みを深くした。
「分かる?
もうすぐで合宿があるからだよ!」
「あー、合宿ね。リーゲル島に行って、色んなことして過ごすんだっけ」
「そう!何より、俺たち初めてのお泊まりだよ!!俺たちは一つ屋根の下夜を明かすんだ…」
「別部屋だけどね。」
レーリアの反論は興奮気味のキースには届かない。
「トランプして、王様ゲームして、それでいい感じになったら…」
その時、キースは後ろから誰かにチョップされた。
「浮かれすぎだ、キース」
「エドワルド!」
キースの悪友であり、親友であるエドワルドがやれやれと言った表情で立っていた。
「盛り上がるのもいいけどな、このままだと熱を出すぞ。それに、夜の9時以降は自室からの外出は禁止だ」
「早すぎる!」
キースは項垂れた。
「お前ってやつは、本当にレーリア様のことになると馬鹿になるな…。
レーリア様も大変だろ?」
「ううん、楽しいよ。キースは見てて飽きない。僕の家のポメラニアンみたいだ」
「犬扱いか…」
エドワルドは苦笑する。
「お泊まり会くらいいつでもできるよ」
レーリアはそう言ってキースを慰めるが、レーリアは知らない。
お泊まり会をするには、過保護なレーリアの父と兄という鉄壁を乗り越えなくてはならないことを。
潮風が優しく髪を靡かせ、柔らかな日差しがレーリアの白いほおを照らした。
「気持ちいい…」
木造の豪華な船に生徒たちはわらわらと乗り込んでいる。
穏やかな海を船は優雅に進んでいくが、やはり、乗り物酔いする生徒もいるようだ。
「気持ち悪い…」
甲板の隅でステラがぐったりとしている。
「大丈夫?お水飲む?」
レーリアが顔を覗き込む。
「レーリア…!…様…。大丈夫です。放っておいてください」
ステラの顔色は相当悪い。
「ステラ!これ、薬!」
その時現れたのは同じクラスメイトのデニスだった。
「別にいらないって言ってるでしょ!」
「そんなこと言ったって、飲まなきゃダメだよ!」
いつもおとなしく教室の隅にいるデニスがこんなに大きな声を出すのは初めて聞いた。
もしかしたら、2人は特別な仲なのだろうか。
「その薬、気味が悪いわ。そんな緑色の薬飲めるわけじゃないじゃない!!」
大声を出しているうちに、ステラのほおに赤みが増す。
元気になってきたようだ。
「もう、あっちに行ってよ!
私にかまわないでって言ってるでしょ!」
「でも君のことが心配なんだ!」
2人がギャーギャー言い合いをしているうちに、とうとう船は島に到着した。
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