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学園中がざわついている。

公爵家の馬車から降りてきた、見慣れぬ男子。
本来はレーリアが乗っているはずなのに、降りてきたのは美少年である。

薄桃色の髪はサラサラと風になびき、焦茶のシンプルな制服姿がスタイルの良さを引き立てている。

そして、謎の美少年に近づいたのは、レーリアの婚約者、キースである。

キースは少年の手を優しく取った後、キスを落とした。

「男の姿でも君は可愛らしいね、レーリア」

その瞬間、学園中から驚きの声が雷のように轟いた。


「レーリア、本気だったんだね」

「僕はつまらない冗談なんて言わないから」

「“僕”!」

「この格好で私も変だろ?言葉遣いも男っぽくしようと思って」

「良い!逆に良い!新たな扉が開きそうだ!!」

キースは謎に感動の涙を流している。

「何泣いてんの…。はい、ハンカチ」

「ありがとう。明日返すよ」

「いや、今返して」

「え!一旦持ち帰らせてよ」

「は?何でだよ」

「本当に…言葉遣いが男っぽくなってる!
なんか萌える!」

レーリアはキースの言葉を一旦無視する。
いつも意味の分からないことを言われるとスルーしているのだ。

キースとレーリアが廊下を歩いていると、突然声をかけられた。

「あのっ!貴方がレーリア様なのですか?」

数ヶ月前に聖女として認められ、教会の庇護の元この学園に通っているステラだった。

「そうだよ」

「お、男だったのですか!?」

「君は知らなかったのか。貴族たちの間では公然の秘密だったからね。まあ、それでも驚いている生徒たちもいるけれど」

「それも無理ないよ。あんなに可愛かったレーリアがこんなにかっこよくなってるんだから。でもやっぱりどこか可愛さもあるね。そこがキャップ萌えっていうかなんて言うか…」

こうなるとキースは止まらない。
レーリアはまた無視をする。

「…そんな…。だから変なのね。キースの様子がおかしいと思ったわ…。2人はゲームよりも仲がいいし…」

「ん?何か言ったか?」

「いいえ!何でも!
突然声をかけてしまってすみませんでした」

ステラは足早に去って行ってしまった。

ステラを見るとやはり、羨ましいという気持ちが出てきてしまう。
自分はどんなに頑張ってもあんなに細くなることはできないから。
あんなに小さくなることはできないから。

「はぁ」

レーリアが小さくため息をつくと、キースはマシンガントークをやめて、心配そうに覗き込んできた。

「大丈夫?体調でも悪い?レーリア、君に何かあったら俺は生きていけないよ。今すぐに保健室に行こう」

そう言うと、レーリアをお姫様抱っこする。

「わ!ちょっと、大袈裟だ!全然元気だから!」

「本当に?慣れない男装姿で疲れが溜まってるんだよ。今からでも女装したら…」

「キース。僕は決めたんだ。もう女装はやめるって。
降ろして。重いでしょ?」

「ちっとも重くないよ。綿菓子みたいだ」

「これから筋肉つけて重くしなくちゃね」

レーリアはふんっと息巻いた。

レーリアはメラメラとやる気を燃やしている。
キースは諦めて、レーリアがやりたいことをサポートすることに決めたのだった。

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