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I
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「私、女装をやめようと思います」
「えええええ!!!???」
のどやかな春の午後、王宮の庭園に叫び声が響き渡る。
叫んだのはレーリアの良き友であり、未来の義姉のミランダである。ミランダはこの国の王太子妃であり、元は隣国の王女だった。
「じょ、女装をやめるってどういうことかしら、レーリア!こんなにも似合っているのに!
それに私、貴方の女装じゃない姿を見たことがないんだけど?」
「そうですね。私は物心ついた時から女装してましたから。初めは女の子が欲しかった母に付き合わされて仕方なくだったのですが、自分でも気に入ってしまって、ここまでズルズルと続けてしまいました」
「これからも女装すればいいじゃない」
ミランダは相当レーリアの女装姿が気に入ってるようだ。いや、妹のように扱ってきた人が急に弟になっても困るといった心境だろうか。
「でも、また背が伸びてしまいました。何もしていないのに筋肉もついてきてしまいましたし…。やはり、女の子の華奢な感じが私にはないのです。
これ以上悲惨なことになる前に、美しいまま辞めてしまいたいのです」
「そうね…。随分と大きくなったものね。出会った頃はまだあんなに小さかったのに。
私は本当に貴方のことを女の子だと思っていたのよ」
「あの時は随分と驚かせてしまいましたね」
「今は貴方が男だと言う方が違和感があるわ」
「今から髪を切るつもりです」
「貴方のその綺麗な髪を!?貴方のような美しいピンクの髪はなかなかないわ!勿体無い!」
「でも剣術をするときに邪魔ですし…」
「剣術?」
「女装をやめるにあたって、剣術を習い始めようと思いまして。
今までは筋肉をつけないために控えてたんです」
「本気なのね」
「ええ。本気です。」
レーリアは真っ直ぐミランダを見つめた。
レーリアの美しい桃色の瞳が本気だと訴えている。
「…分かったわ。そこまで決めているのなら止める理由はないわね。
でも、キースは悲しむでしょうね」
「キースが?」
キースはレーリアの婚約者であり、この国の第二王子である。
キースとレーリアの仲は良好であり、レーリアの女装も受け入れてくれているが、レーリアにはキースが悲しむ理由が見当たらない。
やはりキースは女の子っぽい方が好きなのだろうか?
「キースは変態だから」
レーリアは飲んでいたお茶を思わず吹き出しそうになった。
ゴホゴホと咳き込み、顔を真っ赤にする。
「キースが変態などどうしてそう思うのです!?
キースは優しくて寛容だから、私が何をしても受け入れてくれると思いますけれど」
「キースは貴方のこと大好きだからね…。
貴方のすることなら否定はしないと思うけど、悲しむだろうな…。
私はキースが貴方に女装するよう泣いて懇願するにベットするわ!」
「急に賭けないでください!
やはり、キースも男ですし、女の子と結婚したかったのでしょうかね…」
「そんなことないわ!むしろ、貴方じゃなきゃダメよ!」
ミランダが慌てて否定する。
そのとき、ミランダの瞳が不自然に動いて、後ろを見つめた。
何だろうと思い、後ろを振り返ろうとすると、後ろからガバリと抱きつかれた。
「キース!!」
「久しぶり、レーリア」
キースは嬉しそうに微笑む。
キースの普段はクールに見えるのに、笑うと犬のように可愛くなるのがレーリアは好きだった。
キースはレーリアのおでこにキスを落とす。
「久しぶりって言っても、一昨日会ったじゃん」
「それでも俺は寂しかったんだ。レーリアは寂しくなかったの?」
しゅんと項垂れるキースはまるで子犬のようだ。頭をわしゃわしゃと撫でたくなる。
「そろそろキースにレーリアを返さなくてはならないようね。
またね、レーリア。また会いましょう」
「はい、お姉様!」
ミランダは多くの侍従を引き連れて去って行った。
「妃殿下と何をお話ししていたの?」
「世間話かなー。あとは女装をやめるって言う話」
「えええええええ!!!!!????」
ミランダの時よりも大きな声が庭園に響き渡る。
「ど、ど、どういうこと!?」
「限界を感じるんだ、自分の女装に」
「そんなことない!可愛いよ!」
「知ってる。ありがとう。
でも、ステラを見て諦めがついたんだ」
「ステラ?あの、聖女の?」
「そう。ステラは華奢でふわふわしていて守ってあげたくなるような女の子でしょ?それを見て、どんなに努力してもこうはなれないなって気づいたんだ」
「いや、でも、」
「明日からは男の格好で学校に行くよ」
「え、いや、待って、レーリア、」
「わっ、いけない。この後髪を切るんだった。もう行かないと。
またね、キース。愛してる」
「か、髪も!?いや、ちょっと待って、レーリア!」
キースの叫びも虚しく、レーリアはキースの頬に軽く口付けするとさっさと去ってしまった。
「えええええ!!!???」
のどやかな春の午後、王宮の庭園に叫び声が響き渡る。
叫んだのはレーリアの良き友であり、未来の義姉のミランダである。ミランダはこの国の王太子妃であり、元は隣国の王女だった。
「じょ、女装をやめるってどういうことかしら、レーリア!こんなにも似合っているのに!
それに私、貴方の女装じゃない姿を見たことがないんだけど?」
「そうですね。私は物心ついた時から女装してましたから。初めは女の子が欲しかった母に付き合わされて仕方なくだったのですが、自分でも気に入ってしまって、ここまでズルズルと続けてしまいました」
「これからも女装すればいいじゃない」
ミランダは相当レーリアの女装姿が気に入ってるようだ。いや、妹のように扱ってきた人が急に弟になっても困るといった心境だろうか。
「でも、また背が伸びてしまいました。何もしていないのに筋肉もついてきてしまいましたし…。やはり、女の子の華奢な感じが私にはないのです。
これ以上悲惨なことになる前に、美しいまま辞めてしまいたいのです」
「そうね…。随分と大きくなったものね。出会った頃はまだあんなに小さかったのに。
私は本当に貴方のことを女の子だと思っていたのよ」
「あの時は随分と驚かせてしまいましたね」
「今は貴方が男だと言う方が違和感があるわ」
「今から髪を切るつもりです」
「貴方のその綺麗な髪を!?貴方のような美しいピンクの髪はなかなかないわ!勿体無い!」
「でも剣術をするときに邪魔ですし…」
「剣術?」
「女装をやめるにあたって、剣術を習い始めようと思いまして。
今までは筋肉をつけないために控えてたんです」
「本気なのね」
「ええ。本気です。」
レーリアは真っ直ぐミランダを見つめた。
レーリアの美しい桃色の瞳が本気だと訴えている。
「…分かったわ。そこまで決めているのなら止める理由はないわね。
でも、キースは悲しむでしょうね」
「キースが?」
キースはレーリアの婚約者であり、この国の第二王子である。
キースとレーリアの仲は良好であり、レーリアの女装も受け入れてくれているが、レーリアにはキースが悲しむ理由が見当たらない。
やはりキースは女の子っぽい方が好きなのだろうか?
「キースは変態だから」
レーリアは飲んでいたお茶を思わず吹き出しそうになった。
ゴホゴホと咳き込み、顔を真っ赤にする。
「キースが変態などどうしてそう思うのです!?
キースは優しくて寛容だから、私が何をしても受け入れてくれると思いますけれど」
「キースは貴方のこと大好きだからね…。
貴方のすることなら否定はしないと思うけど、悲しむだろうな…。
私はキースが貴方に女装するよう泣いて懇願するにベットするわ!」
「急に賭けないでください!
やはり、キースも男ですし、女の子と結婚したかったのでしょうかね…」
「そんなことないわ!むしろ、貴方じゃなきゃダメよ!」
ミランダが慌てて否定する。
そのとき、ミランダの瞳が不自然に動いて、後ろを見つめた。
何だろうと思い、後ろを振り返ろうとすると、後ろからガバリと抱きつかれた。
「キース!!」
「久しぶり、レーリア」
キースは嬉しそうに微笑む。
キースの普段はクールに見えるのに、笑うと犬のように可愛くなるのがレーリアは好きだった。
キースはレーリアのおでこにキスを落とす。
「久しぶりって言っても、一昨日会ったじゃん」
「それでも俺は寂しかったんだ。レーリアは寂しくなかったの?」
しゅんと項垂れるキースはまるで子犬のようだ。頭をわしゃわしゃと撫でたくなる。
「そろそろキースにレーリアを返さなくてはならないようね。
またね、レーリア。また会いましょう」
「はい、お姉様!」
ミランダは多くの侍従を引き連れて去って行った。
「妃殿下と何をお話ししていたの?」
「世間話かなー。あとは女装をやめるって言う話」
「えええええええ!!!!!????」
ミランダの時よりも大きな声が庭園に響き渡る。
「ど、ど、どういうこと!?」
「限界を感じるんだ、自分の女装に」
「そんなことない!可愛いよ!」
「知ってる。ありがとう。
でも、ステラを見て諦めがついたんだ」
「ステラ?あの、聖女の?」
「そう。ステラは華奢でふわふわしていて守ってあげたくなるような女の子でしょ?それを見て、どんなに努力してもこうはなれないなって気づいたんだ」
「いや、でも、」
「明日からは男の格好で学校に行くよ」
「え、いや、待って、レーリア、」
「わっ、いけない。この後髪を切るんだった。もう行かないと。
またね、キース。愛してる」
「か、髪も!?いや、ちょっと待って、レーリア!」
キースの叫びも虚しく、レーリアはキースの頬に軽く口付けするとさっさと去ってしまった。
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