狂わせたのは君なのに

白兪

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「私たちも一緒に食べてもいいかな?」

ランと2人で昼食を食べているとロージーから声をかけられた。

普段ロージーは攻略対象者である、チューリッヒ(騎士団長の息子)、ネモ(宰相の息子)と食事をとっている。
俺と食事をとることはあまりない。

ランと食べるようになってから声をかけられたということは、やはり、ロージーはランのことが気になっているのだろうか。


「構いませんよ。ランもいいよね?」

「うん!
ご一緒できて嬉しいです」

ランがニコッと微笑むと3人は見惚れた。

そんな姿を見て俺は内心すごく落ち込んだ。

やはり運命には抗えないのか。ランはみんなを魅了して、俺は断罪されて…。

ランさえいなければ…。ランさえ…。


「ガベラ!どうしたの?ぼうっとして」

ランに声をかけられてハッと意識を取り戻す。

俺はなんてことを考えていたんだろう。これじゃ、本当の悪役じゃないか。

黙りこくる俺をよそに4人は楽しそうにお喋りを続ける。


「それにしても魔術の時間のランはすごかったね。光魔法を使える人なんてなかなかいないよ」

「本当にな!俺感動したぜ!俺、剣術は得意なんだけど魔術は苦手なんだよな~」

「何言ってるんだ。お前は教養もろくにできていないだろ」

「はぁ?ネモだって運動音痴のヒョロヒョロのくせに」

「はぁ。2人はいつもこうなんだよ。水と油っていうか、性格が真逆というか…。」

ロージーは大げさにため息をついてみせた。

「あはははっ。でも仲良しの証拠じゃないですか。喧嘩してても息があってる感じがするっていうか…。2人には絆を感じます」

「確かに2人はいつも一緒にいるな。
なんだかんだで仲良しなんじゃないか?」

「「はぁ?誰がコイツなんかと!!」」

息ぴったりの2人にさらに笑いは込み上がってくる。

ランとロージーは顔を見合わせて笑った。


「なんだか、ランと話しているといつもより楽しいな。君といると落ち着く気がする」

「そんな…。もったいないお言葉です」

「ランは謙虚で努力家だな!」

チューリッヒがそう言った後、ちらりと俺の方を見た気がした。

暗に俺は傲慢で怠惰だと言われている気がして、怒りが込み上げてきた。

苦しくなって辛くなって、どうしてここにいるんだろう、なんて考えだしてしまう始末だ。

これ以上ここにいると良くない。

そう感じて俺は席を立った。

「用事があったのを思い出しました。先に失礼します」

そう言って軽く会釈すると、3人は興味なさげに手を振った。

それがますます惨めだった。

ランでもそんな対応をしただろうか?
引き留めたんじゃないか?
それか、手伝うって言って一緒に席を立ったんじゃないか?

こんな無駄な妄想したって意味ないと分かっているのに、考えてしまう。


俺は早歩きで食堂を出た。

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