62 / 67
聖剣ちゃんは空気を読まない②
しおりを挟む『え、これ私に回答求められている感じですか? 普通に嫌ですけど』
我らが聖剣様は陽キャイケメン氏の提案を何の逡巡もなく袖にした。
当然、場の空気はエターナルフォースブリザードをぶちかまされたばりに凍りついた。
『え、なんですかこの空気。もしかして私が悪い感じですか?』
「うーんまぁ概ねそんな感じね。端的に言えばそうなる」
だからこの空気もどうにかしてほしい。どーすんだよこれ。
「ハ、ハハハ。聞き間違いかな? そこの陰キャを差し置いて超絶イケメンであるこの僕が断られただと?」
こいつ自尊心が肥大し過ぎてヤバいな。図々しいな、確かにイケメンであることに間違いはないけど超絶ってほどでもないだろ。
『えーでもアレに使われるとか聖剣ちゃん的に生理的に無理なんですけど』
「なっ」
アレ呼ばわりかつ生理的無理の烙印を押された陽キャイケメンは頬をピクピクと痙攣させた。我らが聖剣様はいつだって人の神経を逆なでするのが大のお得意だ。
「フッ無様ね」
『アリスちゃんが悪い顔してるぅ……』
『アリス嬢は相変わらずいい根性してんなぁ』
泣きっ面に蜂とはまさにこのことだ。アリスは魔剣ちゃんがドン引きし、魔導本が感心するような表情でほくそ笑んだ。それ女の子がしちゃいけない顔だろ。
当然、そんな扱いを受けた天上院天下は激昂した。
「ど、どいつもこいつもこの僕を馬鹿にしやがってええええ!! 大司教、アレを寄越せ!!!」
「し、しかし……」
「うるせええええ!!! いいからもってこい、このエロ豚司教が!!!」
「ぶ、ブヒィ!!」
エロ豚司教は『おい焼きそばパン買ってこいよ』とパシられる陰キャのようにドタドタと後方へと走り去っていった
とばっちりを受けるエロ豚司教、可哀そうだな。まぁ色々とやりたい放題していたみたいだし同情の余地はないけど。
一分にも満たない時間で息も絶え絶えながらエロ豚司教は戻ってきた。その懐にはやたら豪華絢爛な装飾を施された木箱を抱えている。その身の丈の半分ぐらいの大きさだ。武器か何かか?
「よこせっ!!」
天上院天下は特に礼を言うわけでもなく、エロ豚司教から木箱の中身を強引に引き抜いた。
取り出したるは一本の長物だ。あれは剣か?
「こいつはなぁ、聖剣の鞘だっ!!!!!」
「へ?」
本当だ。よくよく見ればそれには柄が存在しない。
それは仄かに光を放つなんとも不思議な印象を与える鞘だった。あながち聖剣の鞘という発言が間違いではないと思えたほどだ。
「後悔してももう遅いぞ、この鞘はなぁ! 暴走してこの大陸を沈めかけた聖剣を鎮めたという逸話をもつ神話級武具なんだよぉ!!」
まじか。色々ツッコミたいところはあるが一先ずソレは置いておくとして。
チラリ。
『あーそういえば大昔にそんなこともありしたねぇ』
視線の先の聖剣ちゃんはあっさりとその事実を認めた。
まじか。つまりあの残念陽キャイケメンの発言が正しければ、あの鞘は聖剣を封じる能力が備わっているわけでして――。
アレ? これってもしかしなくとも軽く絶体絶命な状況です???
50
お気に入りに追加
370
あなたにおすすめの小説
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。
スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。
地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!?
異世界国家サバイバル、ここに爆誕!
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!
椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。
しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。
身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。
そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる