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聖剣ちゃんは空気を読まない②
しおりを挟む『え、これ私に回答求められている感じですか? 普通に嫌ですけど』
我らが聖剣様は陽キャイケメン氏の提案を何の逡巡もなく袖にした。
当然、場の空気はエターナルフォースブリザードをぶちかまされたばりに凍りついた。
『え、なんですかこの空気。もしかして私が悪い感じですか?』
「うーんまぁ概ねそんな感じね。端的に言えばそうなる」
だからこの空気もどうにかしてほしい。どーすんだよこれ。
「ハ、ハハハ。聞き間違いかな? そこの陰キャを差し置いて超絶イケメンであるこの僕が断られただと?」
こいつ自尊心が肥大し過ぎてヤバいな。図々しいな、確かにイケメンであることに間違いはないけど超絶ってほどでもないだろ。
『えーでもアレに使われるとか聖剣ちゃん的に生理的に無理なんですけど』
「なっ」
アレ呼ばわりかつ生理的無理の烙印を押された陽キャイケメンは頬をピクピクと痙攣させた。我らが聖剣様はいつだって人の神経を逆なでするのが大のお得意だ。
「フッ無様ね」
『アリスちゃんが悪い顔してるぅ……』
『アリス嬢は相変わらずいい根性してんなぁ』
泣きっ面に蜂とはまさにこのことだ。アリスは魔剣ちゃんがドン引きし、魔導本が感心するような表情でほくそ笑んだ。それ女の子がしちゃいけない顔だろ。
当然、そんな扱いを受けた天上院天下は激昂した。
「ど、どいつもこいつもこの僕を馬鹿にしやがってええええ!! 大司教、アレを寄越せ!!!」
「し、しかし……」
「うるせええええ!!! いいからもってこい、このエロ豚司教が!!!」
「ぶ、ブヒィ!!」
エロ豚司教は『おい焼きそばパン買ってこいよ』とパシられる陰キャのようにドタドタと後方へと走り去っていった
とばっちりを受けるエロ豚司教、可哀そうだな。まぁ色々とやりたい放題していたみたいだし同情の余地はないけど。
一分にも満たない時間で息も絶え絶えながらエロ豚司教は戻ってきた。その懐にはやたら豪華絢爛な装飾を施された木箱を抱えている。その身の丈の半分ぐらいの大きさだ。武器か何かか?
「よこせっ!!」
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取り出したるは一本の長物だ。あれは剣か?
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「へ?」
本当だ。よくよく見ればそれには柄が存在しない。
それは仄かに光を放つなんとも不思議な印象を与える鞘だった。あながち聖剣の鞘という発言が間違いではないと思えたほどだ。
「後悔してももう遅いぞ、この鞘はなぁ! 暴走してこの大陸を沈めかけた聖剣を鎮めたという逸話をもつ神話級武具なんだよぉ!!」
まじか。色々ツッコミたいところはあるが一先ずソレは置いておくとして。
チラリ。
『あーそういえば大昔にそんなこともありしたねぇ』
視線の先の聖剣ちゃんはあっさりとその事実を認めた。
まじか。つまりあの残念陽キャイケメンの発言が正しければ、あの鞘は聖剣を封じる能力が備わっているわけでして――。
アレ? これってもしかしなくとも軽く絶体絶命な状況です???
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