異世界クラス転移した俺氏、陰キャなのに聖剣抜いたった ~なんかヤバそうなので学園一の美少女と国外逃亡します~

みょっつ三世

文字の大きさ
上 下
59 / 67

アリスと魔導本の真骨頂③

しおりを挟む

「ふぅ……こんなところかしらね」

 たった一人かつ、ものの一分もかからず王国軍隊を壊滅させた一ノ瀬アリスは、まるで一冊の本を読み終えた時のような軽さで一息ついた。

 そんな彼女の態度とは裏腹に、俺の目に前に広がる光景は地獄と言っても過言ではなかった。

 しかも何故か彼女だけ演出が違うんすけど。
 殲滅された王国兵士達は辛うじて息はあるものの、どいつもこいつも死にぞこないであり死屍累々と地獄のような様相を呈していた。
 しかし彼女だけは違う。雲の隙間から伸びる一筋の光が照らし、地獄に降り立った純白の天使にすら見えてしまった。俺、病院行った方がいいな。

 当然、こんな光景を目の当たりにすれば俺の中には一つの疑問が浮かんできた。

「ねぇねぇ聖剣ちゃん聖剣ちゃん。一ノ瀬って本当に無能扱いだったの? 目の前の地獄絵図を見ているととてもそうは思えないんだけど」

『まぁマスターの気持ちも分からないではないですがねぇ。まぁ流行りってやつですよ流行り。マスターの世界でも追放ざまぁとか流行っているじゃないですか。あれと似たようなもんですよ』

 んなわけあるかい、と思ったがそれだけアリスの潜在能力が高かったということだろう。
 実際、聖剣ちゃんに聞いたステータス値(王国兵士のステータス値がだいたい100ってやつ)が真実なら可笑しな話でもない。なにせ彼女の魔力ステータス値は10000を軽く超えているからね。

 目の前の凄惨たる光景に呆けていると、

「――なに調子乗ってんだコラァ!!」

 ヤンキー氏が聞くに堪えないダミ声を上げた。
 あ、まだいたんだ。

「ハ、ハ、ハ! ハハハ!! 確かにさっきの魔術はそりゃ凄ぇけどよ。所詮は見掛け倒しだ、そうに決まっている!!」

 そしてそんなあまりにも見当違いなことをおほざきになられた。

「えぇ、見掛け倒しって目の前で完膚無きまでに王国兵士達がフルボッコにされているじゃん」

『マスター、この手の輩に正論をぶちかますのは可哀そうですよ。どうせ下半身に脳がついているんですからそんなこと理解できるわけないじゃないですか』

『聖剣ちゃん言うね~まぁでも魔剣ちゃん的にもダサダサの極みで論外♡』

「うるせぇよ! なんだったらこの俺様の力を見せて――」

「ハァ」

 アリスはヤンキー氏の言葉を露骨に遮るように溜息を吐いた。俗にいうクソデカ溜息というやつだ。

「うっ」

 アリスのあまりにも威圧的な雰囲気に圧倒されて、ヤンキー氏は次の言葉が出せないでいた。
 しかし彼女はそんな彼の惨状を見てもお構いなしだ。矢継ぎ早に言葉を重ねていった。

「まったくお目出度過ぎて失笑すらでないわ。

 あ、ほんとだ。
 よくよく見ればまだ彼女の頭上にはいくつもの炎弾が浮かんでいる。全然気がつかなかったわ。

『ま、つまりこういうこった。収束っと』

 そんな中、魔導本がそっけなく呟いた。
 すると次の瞬間、驚くべきことにヤンキー氏の体を覆い尽くすようにいくつもの魔術陣が浮かび上がった。

「ちょっ、おまっ!?」

「さようなら、灰燼に帰しなさい」

 そして数十発にも及ぶ炎弾がヤンキー氏に殺到し、問答無用で炸裂するのだった。

 ……本当に余談だが俺はこの時、キンタマがひゅんっとなる感覚に陥ったね。本当に余談だけど。



 ◆



「ぶ……べ……」

 アリスの炎弾をもろにくらったヤンキー氏はプスプスと黒煙を上げ気絶するように地面に倒れ込んだ。
 しかし彼女がそれを気にかけることはない。一瞥すら向けなかったほどだ。

 そして、そんな彼女はとある一点に絶対零度とも言えるほど冷徹な視線を送っていた。

「それでどうするのかしら?」


「はは、これは予想外だ。少々困ったな」

 その視線の先には陽キャイケメンこと天上院天下がこんな状況にも関わらず余裕な笑みを浮かべているのだった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

異世界に召喚されたが「間違っちゃった」と身勝手な女神に追放されてしまったので、おまけで貰ったスキルで凡人の俺は頑張って生き残ります!

椿紅颯
ファンタジー
神乃勇人(こうのゆうと)はある日、女神ルミナによって異世界へと転移させられる。 しかしまさかのまさか、それは誤転移ということだった。 身勝手な女神により、たった一人だけ仲間外れにされた挙句の果てに粗雑に扱われ、ほぼ投げ捨てられるようなかたちで異世界の地へと下ろされてしまう。 そんな踏んだり蹴ったりな、凡人主人公がおりなす異世界ファンタジー!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

月が導く異世界道中

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  漫遊編始めました。  外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

処理中です...