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ギルドマスター①
しおりを挟む「さ、着いたニャ。ここが我らが冒険者ギルドのギルドマスター室ニャ!」
無事(?)戦闘も終了し、猫耳受付嬢ニャルメア・ナイトメアに俺とアリスが案内されたのは冒険者ギルド内に存在する一室だった。眼前には荘厳な雰囲気を醸し出すいかにもな扉が設置されており、なんかもう帰りたくなった。
「ていうか今更だけど、さっき戦う必要あった?」
「んーないニャ!!」
ニャルメアは大して悩む素振りも見せずハッキリと言い切った。
能天気ここに極まれり。まるで頭の中に反省という概念が存在しないと言わんばかりだ。
「まじか。まじかコイツ。何かあったらどうするつもりだったのさ」
「ま、この程度で死ぬならそれはそれまでニャ」
怖ぇよ。あと怖い。頭、世紀末かよ。
「……理解に苦しむわね」
アリスは頭痛がしてきたのか掌で額を抑えた。わかるわかる。俺も似たような気持ちだ。
「ま、そんなこと気にしてもしょうがないニャなるようになるニャ。ギルマスギルマスー入るニャー」
ニャルメアは扉に取り付けられた呼出カンをガンガンと無遠慮に叩きつけた。ギルドマスターと受付嬢という組み合わせのわりに随分気さくな関係らしい。
「おおニャルか。ちょうど君達を待っていたところだよ。入り給え」
その行動に返ってきた声は凛々しく落ち着いた女性の声だった。
しかも驚くべきことに、ドア向こうの声はまるでこちらの人数が見えているようだった。
「どもどもニャ~件の人物達を連れて来たニャ~」
「おお君達が例の。いきなり呼び出してすまないね」
そう言うなら呼び出さないでほしい。陰キャ的に権力ある人とかは苦手なので本当に勘弁してよね。ほら部活動の部長とか大抵陽キャだし。
とはいえ一応相手は目上だ。挨拶ぐらいはしないと不味いか。
「えっと一応自己紹介はしたほうが良い感じか。俺はカゲト。あんまりよろしくはしたくないけど、まぁよろしく」
「私はアリス。右に同じくよ」
「ハハこれは手厳しい。私はアルマテア・ガラハッド。不肖の身ながらこの冒険者ギルドのマスターをやらせてもらっているよ」
俺達を出迎えたギルドマスターは大人の女性という感じだった。見た目年齢は恐らく二〇代半ばから後半といったところだろう。本来ギルドマスターという冒険者の中でも高位の立場であればもっと高齢の存在がつくはずだが、それだけに彼女の実力の高さが伺えた。
それになんというか色々と全てにおいてデカい。
「明星君、今すぐその下卑た視線を向けるのを止めなさい。初対面の人間にこの上なく失礼よ」
「べ、ベツニミテマセンシー」
「なんでカタコトになるの。もう少し隠す努力をしなさいよ」
アリスは俺を見て心底呆れたように溜息を吐いた。女の子ってなんでこうも男の子の視線に敏感なんだろうね。怖い、あと怖い。
「ハハハ君達は随分と仲が良いんだね。独り身の私達からすれば羨ましくすら思えるよ。なぁニャルよ」
「あ、一緒にしないで貰えますかニャ。アタシはギルマスと違って平民にも優しいタイプの貴族を捕まえて玉の輿に乗る未来が待っているニャ豪遊しまくるニャおーるでいぱーりないニャッ!」
「おま、まだそんなこと言っているのか……」
ギルドマスターはニャルメアの発言に心底ドン引きしたのか顔を引きつらせた。これはまぁ俺も引くわ。
「コホン、それでそのギルドマスター様がたかだか底辺冒険者である俺達に何の用なんですかね」
あまりにも話が脱線しそうなので俺は一度咳払いをして話を元に戻した。
「ふむ……」
それに対しアルマテアは少しだけ考えるような素振りをすると、ゆっくりと視線を俺の顔辺りに移してきた。本来であれば陰キャ的に女性と目が合えば頬を赤らめるところだ。しかし、そういうわけにはいきそうもなかった。
なにせその瞳からは殺意にも近い剣呑な雰囲気が漂っていたからだ。
「まぁそう邪険にしないでおくれよ。とはいえ私もこれでせっかちな方でね、まどろっこしい話は苦手なんだ。君達もそう思うだろう――勇者殿」
そして彼女は何の躊躇いもなくそうハッキリと言い放つのだった。
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