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また俺なんかやっちゃいましたリターン
しおりを挟む「お、さっそく来たかニャ。お待ちかね査定の結果が出ているニャ!!!」
早速、宿から飛び出し冒険者ギルドに顔を出すとまた猫耳受付嬢が元気良く俺達を出迎えた。
ちなみに聖剣ちゃんと魔剣ちゃんはアイテムボックスに収納、魔導本はアリスが着用するローブの下に隠している。合法的にJKに密着できるとか許せんな。後で表紙の端っこ焦がしてやるからな。
魔角猪の討伐報告に来たわけだが、そういえば出発前に絶対龍種の鱗の買取を依頼したことを思い出した。俺が鱗を出した時の受付嬢の反応を見るにかなり高額で売れるとみた。これは結果が楽しみだ。
「ドゥルルルルルル!ティン! な、なんと~~~!」
まさかのセルフドラムロールである。自分の口でそれをやる人初めて見たんですけど。
「査定結果は三〇金貨ニャッ!!」
「な、なんだってーーーーーーー!!!!!」
ネタで若干オーバーリアクションしてしまったが驚いたのは本当だ。
なにせ金貨一枚の価値は聖剣ちゃん曰く日本円にして一〇万円程度。つまり今回の買取額は日本円にして三〇〇万円相当なわけだ。
たかだか鱗一枚でこの額は破格すぎるだろう。いかにあの絶対龍種が規格外な存在か伺えるな。ていうかそんな相手にレベル1の雑魚をぶつけるなよ。
しかもアイテムボックス内には絶対龍種が丸ごと入っているし、そもそも王国国庫から強奪した金貨やら宝物も多数存在する。この世界であれば人生を七度遊んで暮らしてもお釣りが出るレベルまである。
一瞬もう元の世界に帰らなくてもいいんじゃないか?と頭に過るが、娯楽や快適さを考えると悩ましいところである。だってこの世界、ゲームもコンビニもないしなぁ。
「カゲト達は幸運だったニャ~。魔王軍の動きが活性化しているらしいから需要増えて価格が高騰していたみたいなのニャ!」
急に出た魔王軍という単語にアリスの表情が強張った。それは俺も似たような心情だった。なにせ俺達は魔王軍との決戦兵器として異世界召喚された存在だ。そうなるのも仕方なかった。
「魔王軍か……やっぱり被害って凄いの?」
「? 変な質問ニャ。当然、被害は甚大に決まっているニャ!」
「まぁそうよね。変な質問して悪かったね」
「……明星君?」
アリスが俺に怪訝な視線を投げかけた。
別に博愛主義者に目覚めたわけでもないから安心して欲しい。
しかしアリスには今俺の心の中にある疑念を明かしたいところだが、如何せん情報が不足している。
うーん、この手の情報を集めるにはどこに行けばいいんだろうね。
まぁそこら辺はおいおい考えていけばいいか。まずは目の前の金だ。
「それで金貨は結構重いけどそのまま受け取るかニャ? ギルドで預かることも可能ニャ……多少手数料はかかるけどニャ(超小声)」
こいつ最後だけマジで聞こえるか聞こえないかぐらいの小声で言いやがったぞ。
しかし俺には安心安全万能のアイテムボックスがある。下手に預けるよりも安全だし、何よりギルドから引き出す手間がない。
「あ、じゃあ受け取ります」
「チッ」
こいつ舌打ちしやがったぞ。少しは隠せよ。
そしてそのまま懐に入れるフリをしてアイテムボックスに放り込んだ。
「後、魔角猪を倒したから報酬が欲しいんだけど」
「マジかニャ。駆け出しの冒険者が魔角猪を討伐するとか大金星ニャ。カゲトは冴えない顔してるけどもしかしたら案外大物になるかもニャ!」
冴えないは余計だ。ほっとけ。
「じゃあこれ討伐した証拠ね」
そして俺はおもむろに懐から革袋を取り出しカウンターの上に置いた。それなりの重さがあるせいかズシリと音がなった。
「はいニャ??? ニャニャニャニャ二ャ!?!?!?!?」
革袋の中を確認した猫耳受付嬢は驚いた猫のように素っ頓狂な悲鳴を上げた。
中身は魔角猪から切り取った大量の鼻だ。数にして五〇は下らないだろう。
数々のテンプレに習い、この世界でも討伐系の依頼はその体の一部を切り取ってくるだけでいいらしい。
「いつの間にこんな沢山……本当に抜け目がないわね」
アリスが呆れたような表情を浮かべた。
実はこっそりとアリスがレベル上げに勤しむ中、回収してアイテムボックスに放り込んでおいたのだ。アイテムボックス便利過ぎて笑う。
「ね、ねぇ……」
アリスが恐る恐る俺の服の袖を摘まんだ。
なんぞ?
もしかてお礼かな?いやいやもっと褒めてくれてもいいのよ?
「いやそういうのじゃなくて」
アリスは首振り猫耳受付嬢を指さした。
指の先に存在する猫耳受付嬢は何故かプルプルと震えていた。
あ、やべぇ。これ、また俺なんかやっちゃいましたパターンだ。
「ぎ、ギルマスーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」
そして猫耳受付嬢はどこへ駆けて行ってしまった。
あーこれ滅茶苦茶面倒事な予感がする。三十六計逃げるに如かず。こういう時は逃げるのが一番。魔獣討伐報告の途中だったが、ほとぼりが冷めた後に何食わぬ顔でまた来ればいいのだ。
そいうわけで俺達は猫耳受付嬢が戻ってくる前にそそくさと冒険者ギルドを後にした。
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