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EX7 神造兵器問答
しおりを挟む白い白い真っ白な空間。アイテムボックスの中だ。
某猫型ロボットのポケットのように様々なものが雑然と浮いているわけでもなく、不気味かつ虹色の空間というわけでもない。ただただ真っ白で偶に白亜の建造物が点在するだけの無機質な空間が広がっていた。
そんな中に聖剣、魔剣、魔導本が輪になるように集まりフワフワと浮かんでいた。
『俺らがこうも集まるとか随分と久しぶりじゃねぇか』
『私達が同時期に覚醒しているのって案外少ないですからねぇ』
『三人も集まるなんて何百年ぶりよ? 魔導本ちゃんとか全然起きてこなかったもんね~』
彼女らの会話は久しぶりに再会した同級生のように気さくなものだった。案外と仲は悪くないみたいだ。
『他の奴らはどうなんだよ?』
『現在感知出来ているのは魔鎚ぐらいですかね。ていうか他は覚醒の有無はおろか居場所すら知りませんよ』
魔導本の問いに聖剣がほんの少し困ったように答えた。
『あーアイツかぁ。あれはどうにも無機質すぎて苦手なんだよなぁ』
『あ、その気配は魔剣ちゃんも感じてる~なんか海向こうとか地下とか転々としてる感じだよね』
『まぁ彼に関しては言っても聞くようなタイプではないですし、好きにやらせておくとしましょう』
聖剣の発言に魔剣と魔導本は苦笑いを浮かべた。あーアイツそういとこあるもんねー、そんな感じのニュアンスだ。彼らも色々と苦労しているみたい。
『しかし久しぶり目覚めてはみたがこの吐き気を催す大気の魔素、トネリコのクソが依然と幅を利かせてやがんな』
『まぁそんな感じよね。魔剣ちゃん的にもうウンザリって感じぃ』
『それにそれだけじゃないですよ。あのクソアバズレは何を考えているのか異世界の通路を確立させようと躍起になっているみたいですし、色々とキナ臭いことこの上ないです』
『うへー魔剣ちゃんもう現実逃避したーぃ』
『まぁまぁ、マスターの世界の言葉風に言えば賽は投げられたということですよ。せいぜい盤上の駒でしかない我々は好き勝手に踊ることとしましょう』
そして聖剣はそう会話を締め括った。
今後自らに襲い掛かるであろう未来を予測したのか、三人は同時に深いため息を吐いた。どうやら色々と込み入った事情があるみたいだ。
良い感じだ。驚くほど中身はなさそうだが何やらほどよく彼らからは格好良い雰囲気が漂っている。とにかく良い感じなのだ。
しかしそんな中、何かを思いついた魔導本はその空気をぶち壊すかのように声を上げた。
『ていうか話は変わるんだがよ。お前さん言葉や雰囲気こそ人間に寄せてるが、相変わらず人間味がねぇよな』
『あ、それ魔剣ちゃんも思った思った!』
『別に意味も意図もあるのは分かるから怒らねえけどよ。アリス嬢に九死に一生スペシャルをぶち込むとか正直ドン引きだわ。アレやめたほうがいいぞ』
九死に一生スペシャルとは先にアリスが腹部を魔角猪《ホーンボア》の角に貫かれたことを指しているのだろう。
『それな。魔剣ちゃんも魔導本ちゃんの意見に全面的同意~』
『ぶ~~~私からすれば貴方達が人間種に影響され過ぎなんですぅー』
『うわっ可愛げがまるでねぇな。コイツまじで全然変わってねぇわっ』
『聖剣ちゃんは本当にそういうところあるよね~』
『あ、酷い。深く傷つきました心外です聖剣(権)侵害です。これはマスターにヨシヨシして貰わないと治りませんねっ。さらばっ!!』
三十六計逃げるに如かず。
分が悪いと判断したのか聖剣は捨て台詞を吐くと、そそくさとこの空間から消え去ってしまった。
『あ、ズルーい! 魔剣ちゃんも雑魚雑魚マスターに甘やかされたーい!』
お前は普段のメスガキムーブはどうしたんだよとツッコミどころ満載だが彼女的にはそれどころではないらしい。
続けて魔剣も聖剣を追いかけるようにこの空間から消え去った。
突如として置いていかれた者は呆然とする他ない。
『……やっぱお前らは本当にやかましいことこの上ないわ』
そして最後に残された魔導本の呟きがこの白亜の空間に虚しく響き渡るのだった。
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