45 / 67
一ノ瀬アリスさんはマジぱない②
しおりを挟む「改めてまぁ随分と強くなったもんだなぁ……」
俺は眼前の平原に広がる惨状にゴクリと喉を鳴らした。
死屍累々。一〇〇体近く存在した魔角猪は今や一体たりとも見当たらない。俺も多少手助けをしたとはいえ、そのほとんどをこの一ノ瀬アリスがやったのだから言葉も出ないね。
『だから言っただろうが小僧。アリス嬢はよっぽどテメーなんかより面白い素材だってな』
宙にフワフワと浮かぶ魔導本は相も変わらず俺に対してだけクソ生意気だ。燃やしてやろうか。
だいたいアイテムボックスに入っていたということは、俺が国庫強盗した時、根こそぎ奪った品々の中に紛れていたということに他ならない。つまり俺があの窮屈極まりない場所から出してあげた恩人というわけなのだ。
感謝、感謝がまったくもって足りないだろコイツ。ここはガツンと言ってやらねばならない。
「ぐぅ」
「ぐうの音も出ないということかしら……」
『マスターそれ伝わりづらいですよ』
『魔剣ちゃん的にセンスざこ♡ざこ♡』
うるさいうるさいうるさいやい。
上からアリス、聖剣ちゃん、魔剣ちゃん。女子?三人寄れば姦しいとはよく言ったもので俺に対して本当に言いたい放題だ。
いやぁ実際、魔導本の言う通りアリスの潜在能力は凄まじいものだった。そのステータスの数値もさることながら特に魔術が一級品だ。距離さえ稼げれば彼女一人で都市すらも陥落させるんじゃなかろうか。怖い。
というけで言い返したくてもまるで言い返せねーハハハ。
とにもかくにもこの話題だと旗色が悪い。俺はちっぽけなプライドをかなぐり捨てて話題をそらすことにした。
「し、しかし結構な数を倒したもんだね。これはかなりレベルアップしたんじゃない?」
「今のステータスはこんな感じね」
「どらどら……」
俺はアリスの前の空間にポップアップしたステータスを覗き込んだ。
名前 :一ノ瀬アリス
レベル:37
職業 :魔術使い(全)
HP :1500
MP :17700
SP :300
筋力 :200
耐久 :317
魔力 :12563
俊敏 :354
運 :70
おっふ。
俺はステータスを見て二度見どころか三度見した。その他のステータス値は置いておくとして、魔力やMPの値が桁違いだ。
この感じ俺と同じレベルになったら魔力ステータスがとんでもないことになるんじゃなかろうか。単純計算で三倍か?まさに魔術特化の超火力型だ。
アリスさんの逆鱗とかに触れたらマジで消し炭にされかねん。クワバラクワバラ。
あ、ちなみに俺はレベル上がってないです。
なにせ最初に倒した敵が絶対龍種だからなぁ。魔角猪をいくら倒したところでろくに経験値が入らなかったわけだ。クスン。
『アリスちゃんも随分と成長しましたねぇ。私が色々と指導した甲斐がありますよ』
「ちょおまっそれ洒落にならねぇぞ」
まさかの聖剣ちゃんによる問題発言。
ブラックジョークにもほどがあるだろ。アリスはもう怒っていないみたいだが、なんかフワフワした気分になるだろ。やめれ。
『聖剣ちゃんってそういうところあるよね~』
「苦笑いしたほうがいいのかしらね……」
『お前さんらはまことにやかましいなぁオイ』
俺のツッコミに魔剣ちゃん、アリス、魔導本と続いた。
『なんですかなんですか。皆で寄ってたかってか弱い私を苛めるなんて。許せません、ここは私の威光を再確認されるために……ブツブツ』
それに聖剣ちゃんは不貞腐れるようにぶつくさと文句を言い始めた。ブツブツとか本当に言うなよ。
しかしまぁ随分と賑やかになったものである。とりあえず聖剣ちゃんの戯言は置いておくとして、
「よし。目的は達したし都市に戻ろうか」
俺の問いかけに聖剣ちゃん達は力強く頷いた。
あまりにも紆余曲折しすぎたが、とにもかくにも無事に目的は達成することが出来た。新たな厄介事に巻き込まれる前にさっさと都市に戻るとしよう。
しかし、今回の討伐でアリスがあまりにも強くなり過ぎた気がしないでもない。このままでは俺がお荷物になる未来がわりと高確率で見える件について。
無事、日本に戻ったら約束通り三億円くれるかなぁ……?
53
お気に入りに追加
370
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

日本VS異世界国家! ー政府が、自衛隊が、奮闘する。
スライム小説家
SF
令和5年3月6日、日本国は唐突に異世界へ転移してしまった。
地球の常識がなにもかも通用しない魔法と戦争だらけの異世界で日本国は生き延びていけるのか!?
異世界国家サバイバル、ここに爆誕!
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる