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まさかの疑惑
しおりを挟む『あ、そうだ。ついでにドラゴンの素材を売ってみてはいかがですか? それなりにいい金額になるはずですよ』
討伐目標も決めてギルドを後にしようとしたところ、聖剣ちゃんが一つ提案してきた。
正直、金には大して困ってないがそれはそれでありな気もする。なんというか自分が倒した魔獣の素材を売って金にするのは一種のロマンなのだ。それで小金持ちになり悠々自適に過ごす。まさにロマンだね。
『とりあえず鱗一枚程度にしておきましょうか。変に騒ぎになっても面倒ですし』
それもそうか。
まぁ冒険者になりたてのルーキーがいきなりドラゴンの死体を持ってきたら騒ぎになるのは必然だ。ここは素直に聖剣ちゃんの言うことに従ったほうが良さそうだ。
「あのすいません。この素材を買い取ってくれますか?」
アイテムボックスから目的の物を取り出し、そのまま猫耳受付嬢近くのカウンター上に置いた。
「ハイハイ、素材の買取ですか――にゃ、ニャニャニャ!? ドラゴンの鱗ニャ!?!?!?」
え、不味かった感じか?
「ち、ちちちちちなみにこれをどこでニャ???」
「あ、いや近くの森で拾いました」
「拾った!? あ、いやそういうこともあり得るかニャ? そういえば謎の人物にドラゴンが討伐されたって話だしそういうことかニャぁ?」
咄嗟に出た嘘だったが向こうが勝手に納得してくれた。結果オーライオーライ、人生行き当たりバッタリでもなんとかなるもんだ。まぁその謎の人物の正体は俺なんだけどね。
「にゃ、ニャハハ……と、とりあえず流石にドラゴンの鱗だと査定に時間がかかるニャ。明日までかかりそうだけどそれで良いかニャ?」
「あ、それで大丈夫です」
お、この反応。これは中々に高金額を期待出来そうだ。
そして俺達は素材買取の為の軽い手続きを済ませ、今度こそ冒険者ギルドを後にした。
去り際、猫耳受付嬢がなにやら騒がしかった気もしたが、
「ぎ、ギルマスーーーーー!!!!! 大変だ大変だニャーーーーーー!!!!!」
面倒そうなので見なかったことにした。
◆
場所変わって都市外から少し離れた平原。
『ん~やっと窮屈な空間から出れましたねぇ』
『魔剣ちゃんも同意~』
人目がなくなると見るや、聖剣ちゃん達はアイテムボックスから飛び出た。勝手に。もっと自重しろ?
「やっぱりそのアイテムボックス?の中って狭いのかしら?」
「そういえばどうなんだろうね?」
『いやぁそういうわけじゃないんですけど、ずっと同じ空間にいるわけですからね。気が滅入りますよ』
『アタシも聖剣ちゃんがいなかったらまじムリポヨ~』
まぁタコ部屋みたいなもんか。
そんなに中にいるのが嫌ならこの前みたいに人型になればと言ってみたら、『ちっちっちっ。マスターは分かってませんね。私達の高貴なる御姿はそう簡単に見せるものではないのです』と言われた。
自分で言うなよ図々しい。
まぁいくら元が聖剣魔剣とはいえ見た目は間違いなく美少女。陰キャ童貞の精神衛生上、あまり擬人化しないでくれたほうがありがたいけど。
「そういえば一ノ瀬の職業とかステータスってどんな感じなの?」
一ノ瀬のレベル上げをするために都市外に来たわけだが、俺は彼女に何が出来て何が出来ないのかまるで知らない。昨今、個人情報開示の危険性が叫ばれてやまないが、知っておくべきことだろう。命に係わることだし。
「この後のことを考えるとステータスは開示……すべきなんでしょうね」
「? そりゃまぁその通りだけど」
「……見てもいいけどあまり期待しないでね」
どうにもアリスの言葉は歯切れが悪かった。なんというか申し訳なさが滲み出ているような感じだ。
……あっそうか。
彼女は元々そのステータスが原因でクラスメイトから疎み蔑まれ理不尽な目に遭ってきた経緯がある。やべぇ。
「あ、いや。もし嫌なら――」
「いいえ必要なことだから気遣いは無用よ。ステータスオープン」
アリスは俺の言葉を遮り、その言葉を発した。なんかごめん配慮とかまるで出来ない陰キャでごめん。
『ほほぅ。これがアリスちゃんのステータスですかー』
『魔剣ちゃんも見る見る~』
アリスの言葉を起動音に、彼女の前にスクリーンセーバーのようなものが出現した。俺は一抹の申し訳を感じつつ、それを覗き込んだ。
ちなみにステータスは本人に見せる意思があれば他人にも見せることが可能なそうな。
名前 :一ノ瀬アリス
レベル:1
職業 :魔術使い(全)
HP :10
MP :15
SP :3
筋力 :1
耐久 :1
魔力 :9
俊敏 :5
運 :70
おや? おやや? おやややや???
魔術特化のステだなとか運がやたら高くねとか色々言いたいところだけど、ひとまず魔術使い(全)ってなに?
まさにまさかの展開である。これはなにやらネット小説なろう特有のざまぁ展開の予☆感。
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