異世界クラス転移した俺氏、陰キャなのに聖剣抜いたった ~なんかヤバそうなので学園一の美少女と国外逃亡します~

みょっつ三世

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レベルアップは異世界転移の基本

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『レベルアップしました』

 突如と頭の中に直接鳴り響いた無機質な声。聞き慣れないというよりはむしろ逆。もうね日本にいた時に滅茶苦茶ゲームとかで聞いてきた言葉ですわ。

「えっ、そういうシステムな感じ?」

「いきなりどうしたのかしら。気でもふれた?」

 状況を飲み込めていないアリスは真っ先に俺の頭の正常さを疑った。分からなくもないけどそれはそれで酷いと思う件について。

『あー所謂異世界転移特典ってやつですね』

「……特典?」

 アリスは理解出来なかったのか可愛らしくちょこんと首を傾げた。彼女はこの手の知識には疎いらしい。
 対する俺はこの手の話のエキスパートとも言える。なにせ授業中に教師の目を盗んではその手のWEB小説をよく読んでいるからね。陰キャの嗜みってやつだ。

『あらあら~? アリスちゃんそんなことも知らないのぉ?』

「テンプレ。基礎中の基礎だね」

 由緒正しき便乗厨である俺はその手の空気に敏感だ。魔剣ちゃんの煽りに即座に便乗しドヤ顔をかました。

「何故かしら……とてつもなく屈辱的で腹ただしく感じるのだけれど」

 ごめんて。数少ない陰キャのマウントポイントだから許してほしい。

『まぁ正確には王国が転移時に施した改造……コホン。救済処置のようなものですが。とりあえずものは試しです。ステータスオープンと言ってみましょう!!』

「おい。今改造って言ったか?」

『失礼かみまみたっ☆』

 何それうっざ。絶対ワザとじゃん。

「もう少し隠す努力をしたほうがいいんじゃないかしら……」

 聖剣ちゃんのあまりにもアレな言動にアリスはゲンナリとした。

 ほんとそれな。
 しかし聖剣ちゃんの言葉は一度置いておくとして、
 テンプレ通りであるならそこまで悪いことではないのだろう。そして何よりゲーマーとして心が動かないわけがなかった。

「コホン、ステータスオープン!」

 その言葉を起動合図として目の前に半透明のスクリーンセーバーらしきものが現れた。

 名前 :明星影人
 レベル:97
 職業 :勇者(陰)


 HP    :55739
 MP   :17564
 SP    :23456

 筋力 :9654
 耐久 :8976
 魔力 :7150
 俊敏 :12548
 運  :3

 
「レベル97!?」

 数字を見てたまげた。本当にたまげた。
 レベルの高さも去ることながらその他もろもろの数値の高さも凄まじかった。
 でも運が低過ぎるのは置いておくとして勇者(隠)ってなんだ。意味不明なカテゴライズすんな馬鹿。

「私そういうことにあまり詳しくないのだけれど、それは凄いことなのかしら?」

「……多分?」

 言われてみればどうなんだろうか。しかし高いか低いかと聞かれれば決して低くはない数値なはずだ。

『ちなみに参考までに言っておくと一般人のレベルがだいたい10程度、王国兵でも30ぐらいでしょうかね。ステータスのほうはもっと露骨で筋力以下は一般人で10、王国兵で100程度です』

 すげーたけーじゃねえか。訓練された兵士を軽く凌駕しているとかヤバすぎるでしょ。

「それだけ先ほどの龍が規格外の存在だったということかしら」

『ま、そういうこと。眷属とはいえ龍種だし、そもそも雑魚雑魚マスターがよわよわのよわよわだったからってのが大きいけどねっ。マスターのざーこ♡ざーこ♡』

 そして相変わらずのメスガキムーブ。なんかもうむしろ逆に安心してきたまである。

『さてさて障害は排除したことですし、さっさと先に進みましょう!』

 聖剣ちゃんの言葉に従うのはいささか腹ただしいが特段断る理由もない。俺達は下山を開始した。
 ちなみにドラゴンの死体はその全てが高値で売れるらしいのでアイテムボックスに放り込んでおいた。



 ◆



 アリスがこの森から抜けるべく先に進む中、俺は彼女アリスに気づかれないように足を止めた。

『おや? 立ち止まってどうしましたマスター?』

 なんてことはない。立ち止まったのは彼女聖剣に問いただすべきことがあったからだ。

「聖剣ちゃん、わざとここに着地したでしょ?」

『はて? なんのことやら』

「白々しいよ。展開があまりにも出来過ぎているもの。ちょうど都合良く絶対龍種ドラゴンなんているわけがねぇよ」

 この世界でドラゴンがどれだけありふれた存在だろうがそんな偶然があるはずもない。確かに俺は愛と希望にあふれた男子高校生だが、荒唐無稽なことを信じるほどロマンチストでもないのだ。

 それに先ほどこの聖剣ちゃんはドラゴンを見て『久しぶり』とも『遥々こんなところまで来た』と言ったはずだ。つまりは少なくともこの地においてはイレギュラーな存在であることが窺い知れた。

『あららマスターは存外鋭いですねぇ』

 対して聖剣ちゃんは特に抵抗も弁明もすることなく認めた。

『えぇそうですそうですその通りです。何せ聖剣たる私は当然最強ですがマスターはクソ雑魚の雑魚雑魚ですからね』

 お前は魔剣ちゃんか。

「だから強くするためにそうしたと?」

『はい。特に異世界人たるマスターは魔力吸収効率が段違いですからね。あぁちなみに王国がマスターの体を改造したわけじゃないですよ。不幸中の幸いというやつです』

 なんでも彼女曰く魔力がほとんどない世界にいたせいか、逆に吸収率が高いそうな。そんなことあるんだね。

『まぁ先ほども軽く言いましたがこのステータス機能自体は王国が整えたものですがね。原石を研磨し宝石にするようなもの。むしろ体に良いぐらいです安心して大丈夫ですよ』

 ほんとか?
 正直あの王国の事は完全に信頼出来ないんだが。とはいえ現段階ではそれをどうにかするどころか確かめることすら不可能だ。今は信じるほかなさそうだ。

『さ、街はここからそこそこ歩く必要があります。さっさと先に進みましょう!』

「はぁ~ま、結果オーライだからいっか。でも今後こういうことは無しにしてほしいもんだね」

 この聖剣まだまだ何か裏がありそうだ。俺のことをマスターともてはやすのはいいが、どうにも全ての事を話しているようにはとても思えなかった。
 どのみち今段階だと気にしても大して意味がない。今のところメリット自体はあるし目をつむることにするけどさ。
 そもそも呪いの装備みたいなもんだから着脱不可だしな。

『マスターも大変ねぇ』

 そんな俺達を尻目に魔剣ちゃんが聞こえるか聞こえない程度の声で、そんなことを呟いた気がしたのだった。
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