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EX2 陽キャイケメン天上院天下
しおりを挟む地元有数企業かつ地主である天上院家の長男。
輝かしい未来約束された存在。頭脳容姿家柄。その全てに恵まれ生まれながらにしての勝ち組。それが僕、天上院天下だった。
僕の望むもの大抵何でも手に入ったし、それに大した苦労をした覚えも特にない。
しかし最近はことが上手く進まないことが多く、それらは際限なく僕に苛立ちを募らせた。
ある日突然に何の前部触れもなく異世界に転移した。それはまぁいい。むしろ自分が選ばれし存在だとより強く認識できる喜ばしいことにすら思えた。しかし。しかしだ。
――聖剣が抜けなかった。
異世界転移した僕に待っていた現実は厳しいものだった。
ただ一人選ばれし存在のみが引き抜けるという聖剣。それを成し遂げることが出来るのは転移したクラスメイトの中で唯一自分だけだと自他共に確信していた。
そのはずなのに。それがまるで抜けなかったのだ。もう本当に笑えるぐらいで本当に一ミリたりとも抜けなかった。
まるで理解出来ないし意味不明だった。普通ここは抜ける場面だろう。
しかもだ。しかも許せないのが聖剣を抜いたのがクラス一の陰キャだったことだ。
何の取り柄もなく、何の成果も残さず、ただただ搾取され続け一人寂しく死んでいく存在がこの僕を差し退けて聖剣を引き抜いたのだ。
ふざけるな。許せるものか。そうだ到底許せる行為ではなかった。陰キャの分際でこの僕に恥をかかせやがってっ。
しかも己が立場を誇示したいためか。
クラスメイトの意見をまとめた結果、聖剣はこの僕、天上院天下が扱うに相応しいと決定したというのにそれを拒否した。
あのクソ陰キャはこの最も相応しい使い手である僕に聖剣を譲るつもりがまるでない。なんて恥知らずで自己中心的な奴だ。
しかし所詮は陰キャ。
僕がいかに有能で己がどれだけ無能かすぐ理解することになるだろう。そうなれば自然と聖剣は僕の手元へと来る。そうに決まっている。
とはいえ聖剣の件で不満は多いが異世界転移も悪いことばかりではなかった。
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