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聖剣と書いて不良債権と読む
しおりを挟む訓練施設から抜け出してウロウロしていると二つの人影が目に入った。見覚えがある。俺と同じく拉致同然で異世界召喚されたクラスメイトだ。一人は非常に人相の悪い金髪ヤンキー。もう一人は学園一とも言われるほどの黒髪美少女一ノ瀬アリスだ。
「やめてっ! 触らないでくれるかしら!」
「へへへ、いいじゃねぇか」
わぁお。
なんて見たことあるような展開なんだ。そこには人類がこれまで発展してきた要因をドブに放り投げる阿呆がいた。要はセクハラ。
まぁいつの時代も脳と下半身が直結したヤンキーの行動なんて一緒か。もうなんかいっそ哀れですらある。
「あ? なに見てンだ。見せ物じゃ……って、お前はクソ陰キャじゃねぇか」
いや陰キャであることに間違いはないんだけど。こうもストレートに言われるとそれはそれで遺憾だ。遺憾の意を示しますゾ。
「いやいや。一応悲鳴が聞こえたみたいだから様子を見に来ただけだよ」
「チッ余計なことを。いいか? こいつはな、無能の役立たずなんだよ! だからそれ以外で役に立って貰うってわけだ。何だったらお前にもいい思いをさせてやろうか?」
俺が飽きるまで使った後だけどな、と下品な笑みを続けた。こいつほんとクソヤンキーって感じ。
「あっ、間に合ってます」
別に間に合ってはない。俺は依然として童貞街道まっしぐら爆走中である。そして大変悲しいことにコースアウトする見込みはまるでない件について。
まぁいいや。元より純愛主義者であり無理矢理は趣味ではないのだ。あ、薄い本とかそういうのであれば大好物ですハイ。
「つーかよぉお前、聖剣をよこせよ! クソ陰キャ!!」
「あ、はい。どうぞどうぞ」
「えっ」
「えっ」
ヤンキーどころかアリスすら唖然とした。
いやぁ捨てるのは無理でも譲渡ならいけるかなって。
「あーいや、やけに素直だなおい。まぁいいや貰うかんな?」
「どうぞどうぞ」
正直、そんなの持っていたところで戦争兵器にされるだけですしおすし。
その点、ヤンキー氏は富と名声及び性欲にしか興味なさそうだからおあつらえ向きでしょ。
しかし、事はそう上手く進まなかった。
「ぐお!? お、重くて持ち上がらねぇ!? てめぇ何しやがった!?」
そんなこと言われましても。実はなにもしていないんだなこれが。
まぁそんな予感はしていましたよ。そもそも誠に遺憾ながら選ばれた人間しか抜けない聖剣だ。抜けなかった人間に譲渡出来るはずもなかった。
うーん、やっぱりだめだったかぁ。どうしよこの不良債権。
「てめぇ……馬鹿にしやがって! 覚えていろよなっ!!」
えぇ……むしろそっちの要求に従っただけなんだよなぁ。
ヤンキー氏はその激情に任せるまま壁に蹴りを入れるとこの場を去ってしまった。残された俺とアリスはただただ呆然とするばかりである。
とりあえず思ったことを一言。壁を蹴飛ばしていたけど足痛くないの?
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