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そもそものクソみたいな経緯
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現在、単なる一高校生でしかない俺、明星陰人は非常に困惑していた。
それは何故かって何の因果か俺の手の中に煌めく剣が握られているからだ。もちろん比喩表現なんかじゃない。何故???
どうしよう聖剣引き抜いちゃった。
陰キャが聖剣を引き抜いたら国家反逆罪とかにならないかな。
ていうかこれ絶対なにかの間違いだろ。なんか聖剣もすんごい反応してるし。ものっそい点滅してるもんこれ。
しかもなんか聖剣から困惑的な感情が伝わってくるんですけど。俺はこれは何かの間違いだと絶対的に確信し、試しに近くに鎮座する偉そうな騎士団長的な人に話しかけてみた。
「あ、あの~出来れば辞退したいな~って」
「鳴々……なんとめでたき日だ! 皆のもの喜べ!! ついに聖剣の使い手が誕生した!!!!!!!」
オオオオオオオオオオオオ!!!!!
騎士団長の有難く迷惑極まりない言葉に活気づく兵士や貴族的な人達。まさに大歓声である。
あーこれ話を聞いてくれる感じじゃないなぁ。
何故こんなことに???
当然の疑問に脳内は埋め尽くされていく。そもそも事の発端は一時間前程度に遡る。
◆
冴えない人生でした。
俺、明星陰人のこれまでの人生は誠に大変大層に遺憾ながらその一言で済せることが可能だった。
恋人はおろか友達ですらろくにいない。スマートフォンには家族以外の連絡先はなく高級目覚まし時計でしかないレベル。電話もかかって来ないのだからいよいよその存在意義が危ぶまれる。
教室の片隅、ブックカバーで隠したラノベをひっそりと読むそんな人生だった。いや良いんだよこれはこれで楽しいし。つ、強がりじゃねーし!
まぁそんな日々が続く中、突如として教室の中心に魔方陣が浮かび上がった。
そして気がつけば異世界に来ていたわけである。
意味不明だよね。うん俺もそう思う。でも本当にそうなのだからしょうがない。しょうがないったらしょうがない。
しかもありがちな展開らしく王女的な存在が俺達を出迎え、魔王を倒して欲しいとかのたまいやがった。これが特にふざけてやがる。
彼女は俺達に特別な力を持ったとか選ばれし存在とか、なんとも口当たりの良い言葉を吐いてきたがどうにも胡散臭い。
とはいえ実際、異世界転移特典なるものがあり各々特殊な力を得るらしい。
ちなみにそれを聞いたクラスメイトの面々は戦争の駒とされるのも同然のはずなのに興奮し喜ぶ始末だった。義務教育の敗北か。
自分の家族とか帰還方法とかそういう心配はいいのかよ。
どうにも昨今の異世界転移ものの浸透か皆ある程度の知識は有しているみたいで、気楽に帰れると思っているらしい。浅はか過ぎワロタ。
王女はそんなこと一言も言及してなかったけど大丈夫なのだろうか。
とまぁそう思いつつも反対する人間も特にいなかったのでそんな感じで話はどんどん進んでいった。
そして話題はついに問題の聖剣へと移った。
王女曰く聖剣とは女神が魔王に蹂躙される人類を哀れみ天から遣わされた神造兵器。覚醒すればその一振りは山脈すら削り取るそうな。こわ。
「そしてこちらがその聖剣となります」
王女が案内した場所には部屋の中心にポツンと設置された台座が一つ。そしてそこには一振りの剣が突き立てられていた。
その荘厳な雰囲気に呑まれつつある俺達に王女は言った。この聖剣はこの中のただ一人選ばれし存在だけが抜けるのだと。
すぐさま注目が集まったのは天上院天下だ。
彼はクラスにおいてトップカーストに君臨する存在であり、非の打ち所がないハイスペイケメンだ。しかも実家が地主らしく金まで持っているときた。天は一物どころか二物も三物与えやがった。まじ理不尽。
そんなわけで誰しもが聖剣を引き抜くのは彼だと思っていた。もちろん俺を含めてだ。
しかしここで事件が起きた。
そんな彼をもってしても聖剣は抜けなかったのだ。まさかの事態だ。これに俺達はもちろん王国側の人間も困惑の色を浮かべた。
順々に他の面々も抜こうとするが全然ダメ。聖剣は抜ける気配すら見せなかった。
「最後は……はぁ貴方だけですか」
最後に忘れられたように自分の番が回ってきた。そんな俺を視認した王女の表情はなんとも露骨に落胆したものだった。
もうね。
『どうせ抜けないだろうけど。一応ね?』とか思考が見え透けてるんだよね。どうせやっても無駄なんだけど一応規則だからやれみたいなね。
まぁ抜きますけど。俺自身もどうせ抜けないとは思うけど抜きますとも。どうせ抜けないけど。だってほら俺って勇者なんて柄じゃないですし。
そう思っていた。思っていたはずなのに――
抜けちゃったんだよなぁこれが。どうしてこうなった……。
◆
そして冒頭に戻る。
回想は終わったが本当にどうしようか。刺すような視線が無駄に集まっているし状況は何一つ好転していない。というかあまりにも自分に勇者適性がなさ過ぎてゲロ吐きそう。我隠キャぞ?
『そんなことないですよ勇者様』
突然、頭に直接響くような声音が聞こえた。慌てて辺りを見回すが近くに声音を発したであろう人物は見当たらない。
えっ、どなた様!?
それは何故かって何の因果か俺の手の中に煌めく剣が握られているからだ。もちろん比喩表現なんかじゃない。何故???
どうしよう聖剣引き抜いちゃった。
陰キャが聖剣を引き抜いたら国家反逆罪とかにならないかな。
ていうかこれ絶対なにかの間違いだろ。なんか聖剣もすんごい反応してるし。ものっそい点滅してるもんこれ。
しかもなんか聖剣から困惑的な感情が伝わってくるんですけど。俺はこれは何かの間違いだと絶対的に確信し、試しに近くに鎮座する偉そうな騎士団長的な人に話しかけてみた。
「あ、あの~出来れば辞退したいな~って」
「鳴々……なんとめでたき日だ! 皆のもの喜べ!! ついに聖剣の使い手が誕生した!!!!!!!」
オオオオオオオオオオオオ!!!!!
騎士団長の有難く迷惑極まりない言葉に活気づく兵士や貴族的な人達。まさに大歓声である。
あーこれ話を聞いてくれる感じじゃないなぁ。
何故こんなことに???
当然の疑問に脳内は埋め尽くされていく。そもそも事の発端は一時間前程度に遡る。
◆
冴えない人生でした。
俺、明星陰人のこれまでの人生は誠に大変大層に遺憾ながらその一言で済せることが可能だった。
恋人はおろか友達ですらろくにいない。スマートフォンには家族以外の連絡先はなく高級目覚まし時計でしかないレベル。電話もかかって来ないのだからいよいよその存在意義が危ぶまれる。
教室の片隅、ブックカバーで隠したラノベをひっそりと読むそんな人生だった。いや良いんだよこれはこれで楽しいし。つ、強がりじゃねーし!
まぁそんな日々が続く中、突如として教室の中心に魔方陣が浮かび上がった。
そして気がつけば異世界に来ていたわけである。
意味不明だよね。うん俺もそう思う。でも本当にそうなのだからしょうがない。しょうがないったらしょうがない。
しかもありがちな展開らしく王女的な存在が俺達を出迎え、魔王を倒して欲しいとかのたまいやがった。これが特にふざけてやがる。
彼女は俺達に特別な力を持ったとか選ばれし存在とか、なんとも口当たりの良い言葉を吐いてきたがどうにも胡散臭い。
とはいえ実際、異世界転移特典なるものがあり各々特殊な力を得るらしい。
ちなみにそれを聞いたクラスメイトの面々は戦争の駒とされるのも同然のはずなのに興奮し喜ぶ始末だった。義務教育の敗北か。
自分の家族とか帰還方法とかそういう心配はいいのかよ。
どうにも昨今の異世界転移ものの浸透か皆ある程度の知識は有しているみたいで、気楽に帰れると思っているらしい。浅はか過ぎワロタ。
王女はそんなこと一言も言及してなかったけど大丈夫なのだろうか。
とまぁそう思いつつも反対する人間も特にいなかったのでそんな感じで話はどんどん進んでいった。
そして話題はついに問題の聖剣へと移った。
王女曰く聖剣とは女神が魔王に蹂躙される人類を哀れみ天から遣わされた神造兵器。覚醒すればその一振りは山脈すら削り取るそうな。こわ。
「そしてこちらがその聖剣となります」
王女が案内した場所には部屋の中心にポツンと設置された台座が一つ。そしてそこには一振りの剣が突き立てられていた。
その荘厳な雰囲気に呑まれつつある俺達に王女は言った。この聖剣はこの中のただ一人選ばれし存在だけが抜けるのだと。
すぐさま注目が集まったのは天上院天下だ。
彼はクラスにおいてトップカーストに君臨する存在であり、非の打ち所がないハイスペイケメンだ。しかも実家が地主らしく金まで持っているときた。天は一物どころか二物も三物与えやがった。まじ理不尽。
そんなわけで誰しもが聖剣を引き抜くのは彼だと思っていた。もちろん俺を含めてだ。
しかしここで事件が起きた。
そんな彼をもってしても聖剣は抜けなかったのだ。まさかの事態だ。これに俺達はもちろん王国側の人間も困惑の色を浮かべた。
順々に他の面々も抜こうとするが全然ダメ。聖剣は抜ける気配すら見せなかった。
「最後は……はぁ貴方だけですか」
最後に忘れられたように自分の番が回ってきた。そんな俺を視認した王女の表情はなんとも露骨に落胆したものだった。
もうね。
『どうせ抜けないだろうけど。一応ね?』とか思考が見え透けてるんだよね。どうせやっても無駄なんだけど一応規則だからやれみたいなね。
まぁ抜きますけど。俺自身もどうせ抜けないとは思うけど抜きますとも。どうせ抜けないけど。だってほら俺って勇者なんて柄じゃないですし。
そう思っていた。思っていたはずなのに――
抜けちゃったんだよなぁこれが。どうしてこうなった……。
◆
そして冒頭に戻る。
回想は終わったが本当にどうしようか。刺すような視線が無駄に集まっているし状況は何一つ好転していない。というかあまりにも自分に勇者適性がなさ過ぎてゲロ吐きそう。我隠キャぞ?
『そんなことないですよ勇者様』
突然、頭に直接響くような声音が聞こえた。慌てて辺りを見回すが近くに声音を発したであろう人物は見当たらない。
えっ、どなた様!?
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