婚約破棄で追放されて、幸せな日々を過ごす。……え? 私が世界に一人しか居ない水の聖女? あ、今更泣きつかれても、知りませんけど?

向原 行人

文字の大きさ
133 / 143
第6章 太陽の聖女と星の聖女

第303話 協定連合軍

しおりを挟む
「……では、行ってくる」
「お姉ちゃん。待っててねー!」

 ビアンカさんが周辺国を動かすと言ってくれているけど、私たちがすべき事を相談し、少しでも早く移動する為……と、イナリとコリンの二人が街を出ていった。
 私とロレッタさんを載せない方が確実にイナリは速いと思うし、コリンならハムスターの姿になれるからね。

「さて。じゃあ、私は薬を作っておこうかな」
「でしたら、私は食事を用意しますね。イナリさんたちが帰ってきたら、沢山食べそうですし」

 という訳で教会の一室を借り、薬を作ろうとしたところで、買い物に出掛けようとしていたロレッタさんが……足を止める。

「……あの、アニエスさん。私の疑問が三つあるという話はしましたよね?」
「あ、そうだったね! えっと、二つ目が私の神水の話だよね?」
「えぇ。三つ目の疑問……イナリさんは何者なのでしょうか。大きな狐の姿になったり、闇……に属する魔法を使ったり」
「あ……うーん。現時点で私から言えるのは、狐の獣人族って事だけかな。流石に本人のいないところで勝手にいろいろと話すのも違うと思うし」
「……そう、ですね。失礼しました。では、買い物に行ってきますね」

 ロレッタさんが少し悲しそうに部屋を出て行く。
 とはいえ、私の事は他にも知っている人がいるけど、イナリの事は本当に誰も知らないのよね。
 私とコリンを除いたら、イナリが妖狐だという事を知っているのはソフィアさんくらいじゃないかな?
 流石にこれは勝手に話せないと思いつつ、薬作りに励む。
 暫くしてロレッタさんが戻ってきて、更に時間が経ち、二人で昼食を食べ終えたところで、ビアンカさんがやってきた。

「アニエスさん。ここにいると聞いたので……ひとまず現状をお話ししておきますね」
「魔王討伐の協定の事よね?」
「えぇ。ポートガやゲーマなどの国が、まずは数名の精鋭を送ると言ってくれています。近い国は今夜にも到着する見込みです」

 流石はビアンカさん。
 イナリが話していた通りで、少数精鋭が集まってくるみたい。

「ただフランセーズだけは、トリスタン王子が魔王復活の原因だからか、大勢で向かってきているみたいで」
「えぇ……そうなんだ。まぁ責任を感じているのかもしれないけど……」
「ただ、大勢で他国へ来ると、一歩間違えれば侵略と間違えられかねません。実際、トリスタン王子がフランセーズの国益の為に魔王の力を得たのではないか……と言われていました」
「そう思われても仕方ないわよね」

 流石にトリスタン王子の暴走であって、国ぐるみではないと思いたいけど……ち、違うよね?

「ひとまず、協定も効力を発揮しましたし、アニエスさんは無理しなくて良いですから」
「うーん。無理はしないけど……そうだ。じゃあ、せめてこのポーションを持って行ってください。戦いの中で怪我をした方の為に」
「わかりました。ありがとうございます」
「ビアンカさん。何かあればすぐに呼んでくださいね」

 私の言葉を聞いて、ビアンカさんが一礼して部屋を出て行った。
 確かに、イスパナでいろいろしたけど、こういう時だからこそ協力すべきだと思うんだけどな。
 遠慮しなくて良いのに。
 そんな事を考えながらポーション作りを再開し、陽が沈む。
 ロレッタさんの作ってくれた夕食と共にイナリ達を待っているけれど、まだ戻って来ていない。

「……そろそろ、トリスタン王子が魔王の力を使い始める頃ですよね?」
「そうね。だけど、二人がまだ戻ってこないわね。とはいえ、私たちだけでもトリスタン王子の様子を見に行きたくても……」
「居場所がわからないんですよね」

 ビアンカさんに聞きに行ったんだけど、そもそもビアンカさんもトリスタン王子の居場所は掴んでいないらしい。
 今は、イスパナの騎士団をいろんな所へ派遣して警戒にあたっているのと、協定で来た各国の人たちはこのバーセオーナに滞在しているという事は教えてもらったけど。

「もう一度様子を見に行ってきますね」
「あ、でしたら私も行きます」

 ロレッタさんと共にビアンカさんたちがいる大部屋へ向かうと……同じタイミングで慌てた様子の騎士さんが走ってきて、凄い勢いで扉を開く。

「報告します! トリスタン王子が現れました! 場所は……ここ、聖都です! 正面から乗り込んできました!」

 あ……そうだ。トリスタン王子は……物凄い自信家だった。
しおりを挟む
感想 538

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

婚約破棄された翌日、兄が王太子を廃嫡させました

由香
ファンタジー
婚約破棄の場で「悪役令嬢」と断罪された伯爵令嬢エミリア。 彼女は何も言わずにその場を去った。 ――それが、王太子の終わりだった。 翌日、王国を揺るがす不正が次々と暴かれる。 裏で糸を引いていたのは、エミリアの兄。 王国最強の権力者であり、妹至上主義の男だった。 「妹を泣かせた代償は、すべて払ってもらう」 ざまぁは、静かに、そして確実に進んでいく。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。

ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」 実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて…… 「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」 信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。 微ざまぁあり。

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。