婚約破棄で追放されて、幸せな日々を過ごす。……え? 私が世界に一人しか居ない水の聖女? あ、今更泣きつかれても、知りませんけど?

向原 行人

文字の大きさ
上 下
121 / 134
第6章 太陽の聖女と星の聖女

第291話 トリスタン王子の居場所

しおりを挟む
 イナリの力で、魔の力の使い方が記されている紙がこの宝物庫に納められていた事がわかった。
 その紙をイナリに見せてもらったんだけど、何が書かれているのかは少しもわからない。
 何かの日付と時刻? そして、方角だろうか。それらが表にまとめられている。
 でも、数字は今の文字と同じなんだけど、そこに書かれている説明文は私たちの知っている文字ではなく、見た事のない文字だ。

「イナリ。これって何の事かわかる?」
「いや、さっぱりだ。ここに書かれている意味を……むっ! 我の力が強すぎたのか、気を失ってしまったか」

 イナリの言葉で目を向けると、先程の男性が倒れている。
 調べてみると……うん。命に別状は無さそうね。

「すみません。私にも見せていただいて良いですか?」
「えぇ、どうぞ」
「僕も僕もー!」

 ロレッタさんとコリンが紙に目を通すと、二人がそれぞれ口を開く。

「……おそらくですが、これは日の出と日没の時間ではないでしょうか。この列の日付と、この列の時刻だと概ね数字が合うかと」
「それから、これは獣人族の古い文字だよー! 何て書いてあるか全部は読めないけど、空へ放つ……っていうのだけは読めたよー!」
「ロレッタさんもコリンも凄い! よく、わかったわね」

 私もイナリも、何が書いてあるのかサッパリだったけど、書かれている事が少しだけ判明した。

「私は星が出ていないと占いが出来ないので、時期毎のおおよその日没時間を覚えているので。地理的に、このイスパナでも大きな差はないと思います」
「そっか。ロレッタさんならではの視点ね」
「お役に立てて何よりです。日没の時間は時期によって違うので、こういった資料が作られたのかと。ですが、その後に続く列の数字などは、何を表しているのかはわかりませんが」

 時刻の次の列には、矢印と角度を示すような数字の組み合わせがそれぞれ二つ続く。
 何かの方角だったりするのだろうか?
 表の項目が何を表しているのかが分かれば良いのだけど。

「コリンも、昔の文字を読めるなんて凄いわね」
「えへへ。昔教えてもらった事があるんだー。あと、この資料を作ったのは、獣人族の人だと思うよ。今は少ないけど、昔は獣人族って沢山いたらしいし」
「そうなんだ。けd、空へ放つ……って、何を空へ放つのかな?」
「魔の力の使い方って言っていたから……魔槍?」

 流石に槍を空へ放つなんて事はしないはずだから、何かの比喩表現というか、隠語みたいなものだと思う。
 魔槍は普通に槍として使うのではなくて、投げて使うものだという事だろうか。

「とりあえず、太陽の神殿へ行かなきゃ!」
「そうだな。ここに記されている時間が気になる。もう間もなくであろう」
「今から急いで……でも、ここから聖都へ行くには、どうやっても間に合わない!」

 馬車で数日掛かるような距離を、今から数分で移動なんてイナリでも出来ないだろうし、聖都の人たちに避難してもらうにしても連絡が取れない。
 それでも行くしかないと北東へ向かおうとして……イナリに止められる。

「アニエスよ。どこへ行くのだ?」
「えっ!? 太陽の神殿がある聖都でしょ?」
「待つのだ。この資料は明らかに古いものだ。今の太陽の聖女がいる神殿は、つい最近出来たものであろう」
「あっ! という事は、この旧聖都にある……」
「そうだ。アニエスが氷魔法で再現した、太陽の神殿にバカ王子はいるのだろう」

 ファイアー・ドレイクに破壊された太陽の神殿を、復旧の手助けになるかも……と、私が氷魔法で同じ物を作りだしたんだ!
 は、早くトリスタン王子を止めなきゃ!
しおりを挟む
感想 530

あなたにおすすめの小説

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

側妃は捨てられましたので

なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」 現王、ランドルフが呟いた言葉。 周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。 ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。 別の女性を正妃として迎え入れた。 裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。 あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。 だが、彼を止める事は誰にも出来ず。 廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。 王妃として教育を受けて、側妃にされ 廃妃となった彼女。 その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。 実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。 それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。 屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。 ただコソコソと身を隠すつまりはない。 私を軽んじて。 捨てた彼らに自身の価値を示すため。 捨てられたのは、どちらか……。 後悔するのはどちらかを示すために。

公爵令嬢はアホ係から卒業する

依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」  婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。  そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。   いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?  何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。  エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。  彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。    *『小説家になろう』でも公開しています。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」 「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」 「ま、まってくださ……!」 「誰が待つかよバーーーーーカ!」 「そっちは危な……っあ」

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。