117 / 128
第6章 太陽の聖女と星の聖女
第289話 ファイアー・ドレイクの封印
しおりを挟む
「見えたっ!」
イナリに案内してもらい、無事に旧聖都へ戻ってきた。
ただ、ここへ戻って来るだけで夕方になってしまったので、既にトリスタン王子たちが何かしてしまっているかもしれない。
急いで旧聖都の門へ向かうと、出入口を管理している人の所へ。
「貴女は……薬師さんっ! 戻ってきてくださったんですね!」
「えぇ。ですが、それよりも……今日ここに、黒ずくめの人たちが来ませんでしたか!?」
「黒ずくめの人……ですか? 少なくとも、この門には来ていませんね」
「なるほど。他の門にも聞いてみた方が良いですかね?」
「そうですが……ただ、普通に入って来る人は我々で管理しておりますが、あいにく旧聖都はこの惨状ですので、門以外からでも幾らでも入れます。薬師さんが探されている方がどのような方かはわかりませんが、忍び込もうと思えば幾らでも入れてしまうので……」
黒ずくめ人という、明らかに怪しい呼び方をしているからか、門番の方が困惑しているけど……確かに、街を囲う壁が壊れて修復出来ていないので、幾らでも入り込む事が出来そうだ。
「すみません。ありがとうございました。中に入っても良いですか?」
「もちろんです! どうぞお入りください」
旧聖都に入って門から離れると、以前にファイアー・ドレイクを封印した場所へ行こうと思ったんだけど、ロレッタさんから待ったが掛かる。
「アニエスさん。宝物庫はそっちではありませんが……」
「えっと、ファイアー・ドレイクが封印されていた場所を見に行こうと思って」
「なるほど。ですが、前にトリスタン王子たちが来たのは宝物庫でした。そちらも見ておいた方が良い気がします」
ロレッタさんの言う事も尤もで……とはいえ、どちらも確証がないので、同じ街の中なので二手に分かれる事にした。
「ファイアー・ドレイクが封印された場所は、万が一封印が解かれていた場合に備え、我とアニエスで行こう」
「じゃあ、僕とロレッタお姉さんは宝物庫に行くね!」
「二人とも、気を付けてね」
それぞれ別方向に向かって走って行き、かつてファイアー・ドレイクが現れた場所……封印された場所に繋がる地割れへとやってきた。
だけど、地割れを塞ぐ為に私が生み出した氷魔法……永久氷結で生み出した、溶けない氷のオブジェが今も残っている。
「地割れが塞がったまま……トリスタン王子たちは、ここには来ていないの?」
「いや、以前に偽物の太陽の聖女……リタと言ったか。奴の指示で封印を解いた者が居たであろう。そちらの道から来た可能性がある」
「ディアナさんね。確かにそっちの道が本来の行き方で、ここはファイアー・ドレイクが復活して地上へ出た時に出来た穴だったわね」
ディアナさんはリタさんに弟さんを人質にされ、仕方なく封印を解いたと言っていたと思う。
何処かにその道へ続く場所があるのだろうけど、黒ずくめの人たちはリタさんの部下? だったという話だった気がするから、知っていてもおかしくはない。
「じゃあ、やっぱり封印を確認した方が良いわね。イナリ、この氷を溶かしてもらえる?」
そう言うと、イナリが黒い炎を生み出し、あっさり氷のオブジェが溶けた。
イナリが私を抱きかかえ、そのまま穴の中へ飛び降りる。
……イナリの事を信頼しているから簡単に思えるけど、そうでなければ一人で降りるのは無理だったわね。
音もなく地底に着地すると、前に来た時と同じ様に地底湖が広がり、私が作った囲いの中でファイアー・ドレイクの核に絶えず水が注がれている。
「……何も無さそうね」
「そうだな。人が来た気配もないな」
「という事は、トリスタン王子の狙いは宝物庫!?」
「いや、奴らが夜に動くという事も考えられる……あちらに通路のように見える穴があるから、あの穴を塞いで地上へ戻るか」
そう言って、イナリが闇色の壁のようなものを作り出し、再び私を抱きかかえて跳ぶ。
岩から岩へと飛び移り、地上へ戻って来たところで氷魔法を使って地割れを塞ぐ。
……急いで宝物庫へ行かなきゃ!
イナリに案内してもらい、無事に旧聖都へ戻ってきた。
ただ、ここへ戻って来るだけで夕方になってしまったので、既にトリスタン王子たちが何かしてしまっているかもしれない。
急いで旧聖都の門へ向かうと、出入口を管理している人の所へ。
「貴女は……薬師さんっ! 戻ってきてくださったんですね!」
「えぇ。ですが、それよりも……今日ここに、黒ずくめの人たちが来ませんでしたか!?」
「黒ずくめの人……ですか? 少なくとも、この門には来ていませんね」
「なるほど。他の門にも聞いてみた方が良いですかね?」
「そうですが……ただ、普通に入って来る人は我々で管理しておりますが、あいにく旧聖都はこの惨状ですので、門以外からでも幾らでも入れます。薬師さんが探されている方がどのような方かはわかりませんが、忍び込もうと思えば幾らでも入れてしまうので……」
黒ずくめ人という、明らかに怪しい呼び方をしているからか、門番の方が困惑しているけど……確かに、街を囲う壁が壊れて修復出来ていないので、幾らでも入り込む事が出来そうだ。
「すみません。ありがとうございました。中に入っても良いですか?」
「もちろんです! どうぞお入りください」
旧聖都に入って門から離れると、以前にファイアー・ドレイクを封印した場所へ行こうと思ったんだけど、ロレッタさんから待ったが掛かる。
「アニエスさん。宝物庫はそっちではありませんが……」
「えっと、ファイアー・ドレイクが封印されていた場所を見に行こうと思って」
「なるほど。ですが、前にトリスタン王子たちが来たのは宝物庫でした。そちらも見ておいた方が良い気がします」
ロレッタさんの言う事も尤もで……とはいえ、どちらも確証がないので、同じ街の中なので二手に分かれる事にした。
「ファイアー・ドレイクが封印された場所は、万が一封印が解かれていた場合に備え、我とアニエスで行こう」
「じゃあ、僕とロレッタお姉さんは宝物庫に行くね!」
「二人とも、気を付けてね」
それぞれ別方向に向かって走って行き、かつてファイアー・ドレイクが現れた場所……封印された場所に繋がる地割れへとやってきた。
だけど、地割れを塞ぐ為に私が生み出した氷魔法……永久氷結で生み出した、溶けない氷のオブジェが今も残っている。
「地割れが塞がったまま……トリスタン王子たちは、ここには来ていないの?」
「いや、以前に偽物の太陽の聖女……リタと言ったか。奴の指示で封印を解いた者が居たであろう。そちらの道から来た可能性がある」
「ディアナさんね。確かにそっちの道が本来の行き方で、ここはファイアー・ドレイクが復活して地上へ出た時に出来た穴だったわね」
ディアナさんはリタさんに弟さんを人質にされ、仕方なく封印を解いたと言っていたと思う。
何処かにその道へ続く場所があるのだろうけど、黒ずくめの人たちはリタさんの部下? だったという話だった気がするから、知っていてもおかしくはない。
「じゃあ、やっぱり封印を確認した方が良いわね。イナリ、この氷を溶かしてもらえる?」
そう言うと、イナリが黒い炎を生み出し、あっさり氷のオブジェが溶けた。
イナリが私を抱きかかえ、そのまま穴の中へ飛び降りる。
……イナリの事を信頼しているから簡単に思えるけど、そうでなければ一人で降りるのは無理だったわね。
音もなく地底に着地すると、前に来た時と同じ様に地底湖が広がり、私が作った囲いの中でファイアー・ドレイクの核に絶えず水が注がれている。
「……何も無さそうね」
「そうだな。人が来た気配もないな」
「という事は、トリスタン王子の狙いは宝物庫!?」
「いや、奴らが夜に動くという事も考えられる……あちらに通路のように見える穴があるから、あの穴を塞いで地上へ戻るか」
そう言って、イナリが闇色の壁のようなものを作り出し、再び私を抱きかかえて跳ぶ。
岩から岩へと飛び移り、地上へ戻って来たところで氷魔法を使って地割れを塞ぐ。
……急いで宝物庫へ行かなきゃ!
123
お気に入りに追加
7,736
あなたにおすすめの小説
妹と旦那様に子供ができたので、離縁して隣国に嫁ぎます
冬月光輝
恋愛
私がベルモンド公爵家に嫁いで3年の間、夫婦に子供は出来ませんでした。
そんな中、夫のファルマンは裏切り行為を働きます。
しかも相手は妹のレナ。
最初は夫を叱っていた義両親でしたが、レナに子供が出来たと知ると私を責めだしました。
夫も婚約中から私からの愛は感じていないと口にしており、あの頃に婚約破棄していればと謝罪すらしません。
最後には、二人と子供の幸せを害する権利はないと言われて離縁させられてしまいます。
それからまもなくして、隣国の王子であるレオン殿下が我が家に現れました。
「約束どおり、私の妻になってもらうぞ」
確かにそんな約束をした覚えがあるような気がしますが、殿下はまだ5歳だったような……。
言われるがままに、隣国へ向かった私。
その頃になって、子供が出来ない理由は元旦那にあることが発覚して――。
ベルモンド公爵家ではひと悶着起こりそうらしいのですが、もう私には関係ありません。
※ざまぁパートは第16話〜です
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~
大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」
唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。
そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。
「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」
「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」
一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。
これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。
※小説家になろう様でも連載しております。
2021/02/12日、完結しました。
私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました
新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。