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第6章 太陽の聖女と星の聖女
第287話 人相書き
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セルジオさんから手紙を預かり、騎士さんたちと別れて北の国境へ。
黒ずくめの人たちは既に国境を越えたという話なので、私たちもイスパナへ戻る事になる。
トリスタン王子が、こっちにいるのか、それともセルジオさんの読み通り、これも囮なのか。
現時点では判断出来ないので、ひとまずこっちに来た黒ずくめたちを追うしかない……そう考えている内に、国境の村へ到着した。
「止まれ! ここは国境の村! 行き先を告げ、身分証を提示してもらおう」
「あ、私たちは黒ずくめの人たちを追っ……」
「何っ!? まさか貴様たちは、奴らの仲間なのかっ!?」
あぁぁぁ、無理矢理国境を突破されたからだろうか。
物凄く兵士さんたちの気が立っている!
「アニエスさん。騎士団の方からの手紙をお見せすれば……」
「そ、そうね。私たちは騎士団と一緒に行動していたんです。で、これがセルジオさんからの手紙です」
国境の兵士さんが、私から手紙をひったくるように取り上げると、目を通して……顔色が変わった?
「も、申し訳ありませんでしたぁぁぁっ!」
「えぇっ!? な、何がですかっ!?」
「賊に国境を越えられたのは我々の落ち度であるにもかかわらず、その不甲斐なさをアニエス様へぶつけてしまいました。どうか愚かな我らにお慈悲をっ!」
セルジオさんは一体手紙に何を書いたのっ!?
苛立っていた兵士さんたちがここまで態度を変えるのって、相当だと思うんだけど。
「あ、あの、何が書かれていたかはわかりませんが、ひとまずお話を聞かせていただけますか?」
「はい、勿論です!」
国境の兵士さんたちの詰所に案内されると、これから提出するという報告書を見せて貰えた。
これによると、十人くらいの黒ずくめの男性たちが国境を無理矢理突破していったという事と、可能な限りで黒ずくめたちの顔や服装などが描かれている。
流石に全員分が描かれている訳ではないけれど、その中に金髪だと書かれた注釈のある人相書きがあった。
「これって、トリスタン王子……よね?」
「僕はかなり似てると思うよー」
「そうだな。我もあのバカについて描かれた絵だと思うが」
私とコリンとイナリの意見が一致したので、これはトリスタン王子の情報だと考えて間違いないだろう。
それによると、トリスタン王子は黒い槍を持っていて……って、間違いなくこれでしょ!
「すみません! この人たちはどちらの方角へ向かったんですか!?」
「は、はい! 国境を越えてイスパナへ逃げた後、身を隠す為か、北東へ伸びる街道を通らずに、南東の森へ入って行きました」
「南東……やはりイスパナから海へ逃げるつもり? それとも、魔槍を持ってフランセーズへ帰ろうとしているの?」
「フランセーズへ帰る……というのは、相手の事を御存知なのですか?」
「えぇ。この人は、フランセーズの第三王子、トリスタン王子です」
「なるほど。ただ、ポートガとフランセーズは国交が殆ど無いので、事と場合によっては大事になってしまうかもしれませんね」
トリスタン王子が持っている槍が魔槍だとすると、大事どころではなくなってしまう。
なので、イスパナにもフランセーズにも事情を説明して警戒してもらうように依頼し、大急ぎで王子たちの後を追う事にした。
黒ずくめの人たちは既に国境を越えたという話なので、私たちもイスパナへ戻る事になる。
トリスタン王子が、こっちにいるのか、それともセルジオさんの読み通り、これも囮なのか。
現時点では判断出来ないので、ひとまずこっちに来た黒ずくめたちを追うしかない……そう考えている内に、国境の村へ到着した。
「止まれ! ここは国境の村! 行き先を告げ、身分証を提示してもらおう」
「あ、私たちは黒ずくめの人たちを追っ……」
「何っ!? まさか貴様たちは、奴らの仲間なのかっ!?」
あぁぁぁ、無理矢理国境を突破されたからだろうか。
物凄く兵士さんたちの気が立っている!
「アニエスさん。騎士団の方からの手紙をお見せすれば……」
「そ、そうね。私たちは騎士団と一緒に行動していたんです。で、これがセルジオさんからの手紙です」
国境の兵士さんが、私から手紙をひったくるように取り上げると、目を通して……顔色が変わった?
「も、申し訳ありませんでしたぁぁぁっ!」
「えぇっ!? な、何がですかっ!?」
「賊に国境を越えられたのは我々の落ち度であるにもかかわらず、その不甲斐なさをアニエス様へぶつけてしまいました。どうか愚かな我らにお慈悲をっ!」
セルジオさんは一体手紙に何を書いたのっ!?
苛立っていた兵士さんたちがここまで態度を変えるのって、相当だと思うんだけど。
「あ、あの、何が書かれていたかはわかりませんが、ひとまずお話を聞かせていただけますか?」
「はい、勿論です!」
国境の兵士さんたちの詰所に案内されると、これから提出するという報告書を見せて貰えた。
これによると、十人くらいの黒ずくめの男性たちが国境を無理矢理突破していったという事と、可能な限りで黒ずくめたちの顔や服装などが描かれている。
流石に全員分が描かれている訳ではないけれど、その中に金髪だと書かれた注釈のある人相書きがあった。
「これって、トリスタン王子……よね?」
「僕はかなり似てると思うよー」
「そうだな。我もあのバカについて描かれた絵だと思うが」
私とコリンとイナリの意見が一致したので、これはトリスタン王子の情報だと考えて間違いないだろう。
それによると、トリスタン王子は黒い槍を持っていて……って、間違いなくこれでしょ!
「すみません! この人たちはどちらの方角へ向かったんですか!?」
「は、はい! 国境を越えてイスパナへ逃げた後、身を隠す為か、北東へ伸びる街道を通らずに、南東の森へ入って行きました」
「南東……やはりイスパナから海へ逃げるつもり? それとも、魔槍を持ってフランセーズへ帰ろうとしているの?」
「フランセーズへ帰る……というのは、相手の事を御存知なのですか?」
「えぇ。この人は、フランセーズの第三王子、トリスタン王子です」
「なるほど。ただ、ポートガとフランセーズは国交が殆ど無いので、事と場合によっては大事になってしまうかもしれませんね」
トリスタン王子が持っている槍が魔槍だとすると、大事どころではなくなってしまう。
なので、イスパナにもフランセーズにも事情を説明して警戒してもらうように依頼し、大急ぎで王子たちの後を追う事にした。
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