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第6章 太陽の聖女と星の聖女
第274話 旧聖都出発
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「……エスさん。アニエスさん。朝ですよ?」
翌朝。
ロレッタさんの声で慌てて飛び起きる。
外は明るいし、思いっきり寝坊してしまった。
「ご、ごめんなさい。すぐに朝食を……」
「いえ、食事の準備が済んだので起こしに来たんです。何やらお疲れの様子でしたので」
「あ、あはは……えっと、ありがとうございます」
ロレッタさんが心配そうに見つめてくるけど……い、言えない。眠れなかったので、眠くなるまでポーションを作っていただけなんて。
それから着替えて朝食をいただき、まずはこの街の入り口に居たオジサンの所へ。
「すみません。急用が出来てしまって、今日ここを発たなければならないんです」
「えぇっ!? そ、そうか……四人ともいろいろ手伝って下さったし、特に薬師様は皆の希望というか、無くてはならない存在ですが、仕方ありませんね」
「えっと、今後何かあった時の為に、大量にポーションを作っておきましたので、暫くは大丈夫かと」
「なるほど。では、そちらを買い取らせていただいて……」
「いえいえ。置いていきますので、困っている方に分けてあげてください。まずこちらのポーションが……」
一通り、ポーションの効能を説明し……不要だと言ったのにどうしてもと断れず、代金を受け取って旧聖都を出発する事に。
「くすりのおねえちゃーん! ありがとー!」
「アニエス様、ありがとうございました!」
「また近くへ来られる事がありましたら、是非立ち寄ってくださーい!」
いつの間に話が広まったのか、サラちゃんを始めとした、大勢の人たちに見送られて街を出る。
南西に向けて街道を歩いて行くんだけど……まだ見られている気がするなぁ。
「お姉ちゃん、大人気だねー!」
「薬師さんが居なかったからね」
「ふっ、アニエスの人徳故であろう」
コリンはともかく、イナリの言う人徳はどうかな。
そういうのではないと思うんだけど。
「えっと、トリスタン王子たちは、私たちよりも二日程先に進んでいるのよね?」
「そうなりますね。宝物庫で遭った時も、そのまま進んで行きましたし、昨日も進んでいるはずなので」
「ただ、向こうは夜にしか行動出来ないって言っていたし、どこかの街で馬車に乗れれば一気に追いつくはずよね」
「その通りだと思います」
という訳で、街道をひたすら進んで行く。
旧聖都という事で、元々は国の中心地だから、すぐに街か村があるだろうと思っていると、早速村を見つけた。
早速馬車を探そうとしたんだけど……何かがおかしい。
「あれ? ……この村、人が居ない!?」
十数件の家が立ち並び、今は閉まっているけど、お店もある。
それなのに、人の気配がない。
「あ……お姉ちゃん。畑に作物があるよ?」
「じゃあ、完全に無人って訳ではないのね」
「アニエスよ。そこの家に、人が居る。話を聞いてみれば良いのではないか? 特に気配を隠したりもしておらぬし、問題無いとは思うが」
イナリの言う通り一つの家の中から気配がするので、早速声を掛けようとしたところで、慌てたイナリに止められる。
「ごめんくだ……」
「待つのだ! 敵意が向けられておる! おそらく今まで我々に気付いていなかったのだ!」
イナリに手を引かれ、家から少し離れた直後、突然扉が開く。
「また来よったのか!」
家の中から男性が現れ、手にしていた槍を向けられてしまった。
翌朝。
ロレッタさんの声で慌てて飛び起きる。
外は明るいし、思いっきり寝坊してしまった。
「ご、ごめんなさい。すぐに朝食を……」
「いえ、食事の準備が済んだので起こしに来たんです。何やらお疲れの様子でしたので」
「あ、あはは……えっと、ありがとうございます」
ロレッタさんが心配そうに見つめてくるけど……い、言えない。眠れなかったので、眠くなるまでポーションを作っていただけなんて。
それから着替えて朝食をいただき、まずはこの街の入り口に居たオジサンの所へ。
「すみません。急用が出来てしまって、今日ここを発たなければならないんです」
「えぇっ!? そ、そうか……四人ともいろいろ手伝って下さったし、特に薬師様は皆の希望というか、無くてはならない存在ですが、仕方ありませんね」
「えっと、今後何かあった時の為に、大量にポーションを作っておきましたので、暫くは大丈夫かと」
「なるほど。では、そちらを買い取らせていただいて……」
「いえいえ。置いていきますので、困っている方に分けてあげてください。まずこちらのポーションが……」
一通り、ポーションの効能を説明し……不要だと言ったのにどうしてもと断れず、代金を受け取って旧聖都を出発する事に。
「くすりのおねえちゃーん! ありがとー!」
「アニエス様、ありがとうございました!」
「また近くへ来られる事がありましたら、是非立ち寄ってくださーい!」
いつの間に話が広まったのか、サラちゃんを始めとした、大勢の人たちに見送られて街を出る。
南西に向けて街道を歩いて行くんだけど……まだ見られている気がするなぁ。
「お姉ちゃん、大人気だねー!」
「薬師さんが居なかったからね」
「ふっ、アニエスの人徳故であろう」
コリンはともかく、イナリの言う人徳はどうかな。
そういうのではないと思うんだけど。
「えっと、トリスタン王子たちは、私たちよりも二日程先に進んでいるのよね?」
「そうなりますね。宝物庫で遭った時も、そのまま進んで行きましたし、昨日も進んでいるはずなので」
「ただ、向こうは夜にしか行動出来ないって言っていたし、どこかの街で馬車に乗れれば一気に追いつくはずよね」
「その通りだと思います」
という訳で、街道をひたすら進んで行く。
旧聖都という事で、元々は国の中心地だから、すぐに街か村があるだろうと思っていると、早速村を見つけた。
早速馬車を探そうとしたんだけど……何かがおかしい。
「あれ? ……この村、人が居ない!?」
十数件の家が立ち並び、今は閉まっているけど、お店もある。
それなのに、人の気配がない。
「あ……お姉ちゃん。畑に作物があるよ?」
「じゃあ、完全に無人って訳ではないのね」
「アニエスよ。そこの家に、人が居る。話を聞いてみれば良いのではないか? 特に気配を隠したりもしておらぬし、問題無いとは思うが」
イナリの言う通り一つの家の中から気配がするので、早速声を掛けようとしたところで、慌てたイナリに止められる。
「ごめんくだ……」
「待つのだ! 敵意が向けられておる! おそらく今まで我々に気付いていなかったのだ!」
イナリに手を引かれ、家から少し離れた直後、突然扉が開く。
「また来よったのか!」
家の中から男性が現れ、手にしていた槍を向けられてしまった。
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