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第6章 太陽の聖女と星の聖女
第271話 緊急事態
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サラちゃんのお母さんを治し、イナリと共にいつもの薬を配っている場所へ戻ると、真っ青に青ざめた男性が待っていた。
さっき並んでいた全員に、薬を渡してサラちゃんのところへ行ったんだけど……急に体調が悪くなったのだろうか。
「どうされました?」
「あっ! 薬師さんっ! た、大変です! 向こうで家が倒壊して、中に人が……」
「えぇっ!? ど、どちらですかっ!?」
現場に向かって走りながら話を聞くと、暫く人が住んでいない家を数人で更地にしていたらしい。
その家は慎重に対処していたので問題なかったそうなんだけど、その時の作業の衝撃なのか、お隣……ではなく、二つ隣の家が突然崩壊したのだとか。
「我々の認識では、三人の親子が住んでいるはずなんです! ただ、父親は復興作業をしてくれているから無事は確定なのですが、母親と幼い娘と連絡が取れていないんです」
大急ぎで現場へ行くと、倒壊した家を大勢の人たちが囲み、必死の形相でガレキをどかせている。
「薬師さん。私もガレキをどかせる作業に加わります。母親か娘を見つけたらすぐにお呼びしますので、少し待っていていただけませんか?」
「勿論です」
「ありがとうございます」
そう言って、私を呼びに来た男性も救助活動に参加したので、少し離れて子狐姿のイナリに話し掛ける。
「イナリ……探知魔法で、あのガレキのどの辺りにいるかわかる?」
『アニエスよ。あの者たちには悪いが、あのガレキの中に生きている者はおらぬ』
「えっ!? そ、それってつまり……そんな」
『早く止めてやった方が、あの者たちの為だろう』
何て……事だ。
息さえあれば……神水さえ飲む事が出来れば、何とかなるだろうと思っていたのに、もう既に手遅れだなんて。
「ジェシカっ! ジェニファーっ!」
ガレキを撤去する中で、誰かの名前を叫び、手から血を流したまま救助活動を続ける男性がいる。
おそらく……父親なのだろう。
奥さんと娘さんを助けだそうと必死になっているあの人に、何て声を掛ければよいの!?
「ふむ。アニエスが声を掛けづらいのであれば、我が止めてこよう」
「えっ!? ま、待って! 大丈夫。私が……行くわ」
皆が救助活動に注目していて、誰も見ていないからだろう。
イナリが本来の姿に戻り、スタスタと歩き出したので、慌てて止める。
だけど、自分で言うと言ったものの、どうすればと躊躇っていると、別の人影が私の横を通って行く。
「ど、どうしてっ!? 私たちの家が……」
「えっ!? ジェシカっ!? ジェニファーも! 無事だったのか!」
「え? えぇ。でも、これは一体……」
「二人が無事なら、それだけで良いんだ。命さえ無事なら、この街と同じように、幾らでもやり直せるんだ」
あ……奥さんと娘さんは、出掛けていて無事だったんだ。
良かった……本当に良かった。
「……って、イナリ。奥さんたちが無事なら、そう言ってよ」
「言ったではないか。あのガレキの下に生きている者はいないと」
「いや、そうだけど……言い方をもうちょっとね」
ひとまず二人の無事を喜び、手を激しく怪我している旦那さんに薬を渡して、騒動は終わりとなった。
けど、今回は無事だったとはいえ、同じ事が起こりかねない。
「氷の家なら出せるんだけど……透明で中が丸見えなのは困るよね」
「我が補強していけば倒壊は防げるが……我にせよアニエスにせよ、全ての家に対応は出来ぬ。まぁ時間を掛ければ別だが」
「……トリスタン王子が魔の力を再び手に入れようとしていると思っていたから急いでいたけど、そうではないのなら、しっかり腰を据えて復興作業を手伝っても良いと思うけど?」
改めてコリンとロレッタさんの意見を聞いてみようという事になり、一旦それぞれが作業を終える夕方まで待つ事にした。
さっき並んでいた全員に、薬を渡してサラちゃんのところへ行ったんだけど……急に体調が悪くなったのだろうか。
「どうされました?」
「あっ! 薬師さんっ! た、大変です! 向こうで家が倒壊して、中に人が……」
「えぇっ!? ど、どちらですかっ!?」
現場に向かって走りながら話を聞くと、暫く人が住んでいない家を数人で更地にしていたらしい。
その家は慎重に対処していたので問題なかったそうなんだけど、その時の作業の衝撃なのか、お隣……ではなく、二つ隣の家が突然崩壊したのだとか。
「我々の認識では、三人の親子が住んでいるはずなんです! ただ、父親は復興作業をしてくれているから無事は確定なのですが、母親と幼い娘と連絡が取れていないんです」
大急ぎで現場へ行くと、倒壊した家を大勢の人たちが囲み、必死の形相でガレキをどかせている。
「薬師さん。私もガレキをどかせる作業に加わります。母親か娘を見つけたらすぐにお呼びしますので、少し待っていていただけませんか?」
「勿論です」
「ありがとうございます」
そう言って、私を呼びに来た男性も救助活動に参加したので、少し離れて子狐姿のイナリに話し掛ける。
「イナリ……探知魔法で、あのガレキのどの辺りにいるかわかる?」
『アニエスよ。あの者たちには悪いが、あのガレキの中に生きている者はおらぬ』
「えっ!? そ、それってつまり……そんな」
『早く止めてやった方が、あの者たちの為だろう』
何て……事だ。
息さえあれば……神水さえ飲む事が出来れば、何とかなるだろうと思っていたのに、もう既に手遅れだなんて。
「ジェシカっ! ジェニファーっ!」
ガレキを撤去する中で、誰かの名前を叫び、手から血を流したまま救助活動を続ける男性がいる。
おそらく……父親なのだろう。
奥さんと娘さんを助けだそうと必死になっているあの人に、何て声を掛ければよいの!?
「ふむ。アニエスが声を掛けづらいのであれば、我が止めてこよう」
「えっ!? ま、待って! 大丈夫。私が……行くわ」
皆が救助活動に注目していて、誰も見ていないからだろう。
イナリが本来の姿に戻り、スタスタと歩き出したので、慌てて止める。
だけど、自分で言うと言ったものの、どうすればと躊躇っていると、別の人影が私の横を通って行く。
「ど、どうしてっ!? 私たちの家が……」
「えっ!? ジェシカっ!? ジェニファーも! 無事だったのか!」
「え? えぇ。でも、これは一体……」
「二人が無事なら、それだけで良いんだ。命さえ無事なら、この街と同じように、幾らでもやり直せるんだ」
あ……奥さんと娘さんは、出掛けていて無事だったんだ。
良かった……本当に良かった。
「……って、イナリ。奥さんたちが無事なら、そう言ってよ」
「言ったではないか。あのガレキの下に生きている者はいないと」
「いや、そうだけど……言い方をもうちょっとね」
ひとまず二人の無事を喜び、手を激しく怪我している旦那さんに薬を渡して、騒動は終わりとなった。
けど、今回は無事だったとはいえ、同じ事が起こりかねない。
「氷の家なら出せるんだけど……透明で中が丸見えなのは困るよね」
「我が補強していけば倒壊は防げるが……我にせよアニエスにせよ、全ての家に対応は出来ぬ。まぁ時間を掛ければ別だが」
「……トリスタン王子が魔の力を再び手に入れようとしていると思っていたから急いでいたけど、そうではないのなら、しっかり腰を据えて復興作業を手伝っても良いと思うけど?」
改めてコリンとロレッタさんの意見を聞いてみようという事になり、一旦それぞれが作業を終える夕方まで待つ事にした。
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