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第6章 太陽の聖女と星の聖女

第262話 何かに引っかかるアニエス

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 翌朝。
 昨晩はいろいろあって大変だったし、就寝するのも遅かったので、普段よりもかなり遅めの起床となった。
 だけど、ビアンカさんがいろいろと取り計らってくれたのだろう。
 もう朝食というにはかなり遅い時間なのだけど、私たちの朝食が用意されていた。

「……ごちそうさまでした」

 教会の食堂で朝食を出してくれた料理人さんにお礼を言い、これからの事を確認する事に。

「えっと、昨日のロレッタさんの占いでは、トリスタン王子は南西に向かっているという話でしたよね?」
「えぇ。具体的な目的地はわからないものの、私が占った時点で……夜の時点でこの街を出ていますので、今は更に移動しているか、もしくはどこかの街で休んでいるかもしれませんね」
「じゃあ、私たちも南西に向かって行って、またトリスタン王子の聞き込みかしらね」

 トリスタン王子は黒づくめの人たちと一緒に行動しているのだから、もっと目撃情報があってもおかしくない。
 だけど、ロレッタさんの占いで判明した通り、夜に移動しているのであれば、あまり人目についていないというのも分かる。

「……あれ? ちょ、ちょっと待って!」
「アニエスさん? どうかされたのですか?」
「違うの。何か……何か引っかかるの。少しだけ考えさせて」

 ロレッタさんを制し、たった今、自分で思った事について、もう一度考える。
 トリスタン王子の事を考えて、何か違和感があって……えっと、夜に移動しているから目撃情報がないっていう事を私は考えていた。
 その前は……黒づくめと一緒に行動しているっていう事。
 あと、トリスタン王子たちが南西に向かっていて……つまり、黒づくめの人たちも南西に向かっている。
 このバーセオーナから南西に行けば何があったっけ?
 確か、前の聖都が南西に……って、そうだっ!

「わかった! トリスタン王子と一緒にいるっていう黒づくめの人たちって、昨日の裏部隊の人じゃない!?」
「えっと、裏部隊っていうと、あの廃墟にいた三人組の事……ですか?」
「そう! 太陽の神殿の宝物庫の鍵を盗んだって言っていたでしょ? その太陽の神殿が、ここから南西にあるの!」
「それってつまり……トリスタン王子が手にしようとしている、魔の力に関するものが、太陽の神殿にあるという事ですか!?」
「おそらく……ちょ、ちょっとビアンカさんに確認しましょう!」

 ビアンカさんは、宝物庫にあるものは全て復興の為に使ったと言っていたけど、当然トリスタン王子はそんな事を知らないはずだ。
 なら、太陽の神殿の裏部隊の人たちは?
 裏部隊の人たちがビアンカさんの行動を知っていれば、宝物庫に目的の物が無いと知っているはず。
 つまり宝物庫の中身ではなく、宝物庫自体が目的……例えば、宝物庫の中に、隠された何かがあるのかも。
 一方で、ビアンカさんの行動を知らないのであれば、既に無くなっている何かを入手しに行こうとしているって事よね。
 前者なら、一刻も早く止めないと、トリスタン王子が魔の力の封印を解き放ちかねない。
 後者なら、目的の物が無いとわかったら、その所在を調べる為、宝物庫の中身を知る物……つまり、ビアンカさんのところに、裏部隊の人たちが来る可能性が高い。

「あの、大至急ビアンカさんと話がしたいのですが」
「今は朝のお祈り中です。終わるまでおまちください」

 食堂の入り口に控えていた、教会の職員っぽい人に話を聞いてみると、神聖な儀式なので絶対に止められないと言われてしまった。
 そういえば、初めてビアンカさんにあった時も、お祈りを欠かす訳にはいかないと言って、大慌てしていたっけ。
 仕方がないので、お祈りをする場所の出入り口でビアンカさんを待たせてもらう事にした。
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