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第6章 太陽の聖女と星の聖女
第258話 廃墟に潜入するアニエスたち
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壊れた壁の中へ入ると、広い中庭が広がっていた。
ただ、元は綺麗な庭園だったと思うのだけど、今は水の枯れた噴水や、何の花も生えていない花壇が並んでいるけど。
『アニエスよ。ここは右から回って行くのだ。左の道を通ると、地面に何かが仕掛けられている』
『そこはどちらも通れぬな。そこの荒れた花壇を通るべきだろう』
『次は真ん中だ。左右にある壊れた像には触れぬようにな』
イナリの指示のおかけで、なんとか中庭を抜けて館の入り口へ辿り着いた。
「た、大変でしたね。アニエスさんに言ってもらえなければ、どうなっていたか」
「お姉ちゃん、ありがとー」
「と、とりあえず、やっと中庭を抜けただけだし、ここからが本番だから、気を付けないとね」
うん。イナリと一緒でなれば通り抜けられなかったわね。
ちなみに、イナリによると三人は地下にいるみたい。
そうでなければ、軽く跳んで捕らえてくる……と。
確かにイナリなら出来そうだけどね。
「じゃあ、中へ入りましょうか」
「お姉ちゃん。これだけ庭にいろいろあったけど、正面から入れるのかな?」
「確かに。ちょっと待ってね」
そう言いながら、小狐姿のイナリの目を見つめ……小首を傾げた。
えっと、コリンの話を聞いてなかったのかな?
念話は一方向で、私からイナリに話せないのが辛いわね。
『もしかして、このドアを警戒しておるのか? であれば、魔力的な仕掛けは何も無いぞ』
ありがとうイナリ……と、心の中で感謝しつつ、コリンに大丈夫そうだと話して扉を開ける。
――チリーン
扉を開けると、静かな館の中に、鈴の音が響き渡った。
えーっと、これって……扉を開けたって気付かれたよね。
『ふむ。庭にあれだけ魔法的な仕掛けていたのに、最後に物理的な仕掛けか。はっはっは、これはやられたな』
あ、イナリも気付いてなかった……というか、気付けないよね。
開けた瞬間に落とし穴とかじゃないし、相手を探さなくても向こうから来てくれる……と、ポジティブに考えよう。
「とりあえず、中へ……何処かに身を隠しましょうか」
「そうですね。ここだと弓矢などで射られてしまいます」
「お姉ちゃん、あっち!」
コリンが大きな像を見つけたので、三人でその台座の陰へ。
ここの館に住んでた人……庭にも館にも彫像が沢山あるけど、集めるのが趣味なのかな?
息を潜めていると、誰かがやって来たらしく、イナリから警戒の念話が来たんだけど、珍しく困惑している。
『むぅ。この魔力は……厄介な奴らだな』
イナリが知っている相手なの!?
とはいえ、この状況で聞く事も出来ず、様子を見るしかない。
「……俺はこの辺りを調べる。向こうを頼む」
「……わかった」
二人の男性がやって来て、一人が何処かへ行き、もう一人が辺りを調べ始めたんだけど、とにかく音を立てない。
普段から、こういう行動をしている泥棒とかなのだろうか。
だとしたら、探し物は得意だろうし、見つかるのは時間の問題かもしれない。
なので、氷魔法で動きを封じたいと思うんだけど、私の氷魔法は静かに出てきてくれないのよね。
動きを封じるとなると、結構大きな氷を出さないといけないので、出した時の音で他の男性が戻ってきてしまう。
でも、このまま何もしない訳にはいかないので、早速氷魔法で壁を作って動けなくしようとしたんだけど……突然男性が動かなくなった?
『あまり我の好みではないが、厄介な相手故、精神を操作した。こやつは明日まで眠ったままだ』
精神を操作……あ、ゲーマのラインハルトさんから取り戻した力だ。
イナリはこの力が好きじゃないからって、取り戻してからも今まで一度も使った事が無かったのに……こ、この相手って何者なのっ!?
ただ、元は綺麗な庭園だったと思うのだけど、今は水の枯れた噴水や、何の花も生えていない花壇が並んでいるけど。
『アニエスよ。ここは右から回って行くのだ。左の道を通ると、地面に何かが仕掛けられている』
『そこはどちらも通れぬな。そこの荒れた花壇を通るべきだろう』
『次は真ん中だ。左右にある壊れた像には触れぬようにな』
イナリの指示のおかけで、なんとか中庭を抜けて館の入り口へ辿り着いた。
「た、大変でしたね。アニエスさんに言ってもらえなければ、どうなっていたか」
「お姉ちゃん、ありがとー」
「と、とりあえず、やっと中庭を抜けただけだし、ここからが本番だから、気を付けないとね」
うん。イナリと一緒でなれば通り抜けられなかったわね。
ちなみに、イナリによると三人は地下にいるみたい。
そうでなければ、軽く跳んで捕らえてくる……と。
確かにイナリなら出来そうだけどね。
「じゃあ、中へ入りましょうか」
「お姉ちゃん。これだけ庭にいろいろあったけど、正面から入れるのかな?」
「確かに。ちょっと待ってね」
そう言いながら、小狐姿のイナリの目を見つめ……小首を傾げた。
えっと、コリンの話を聞いてなかったのかな?
念話は一方向で、私からイナリに話せないのが辛いわね。
『もしかして、このドアを警戒しておるのか? であれば、魔力的な仕掛けは何も無いぞ』
ありがとうイナリ……と、心の中で感謝しつつ、コリンに大丈夫そうだと話して扉を開ける。
――チリーン
扉を開けると、静かな館の中に、鈴の音が響き渡った。
えーっと、これって……扉を開けたって気付かれたよね。
『ふむ。庭にあれだけ魔法的な仕掛けていたのに、最後に物理的な仕掛けか。はっはっは、これはやられたな』
あ、イナリも気付いてなかった……というか、気付けないよね。
開けた瞬間に落とし穴とかじゃないし、相手を探さなくても向こうから来てくれる……と、ポジティブに考えよう。
「とりあえず、中へ……何処かに身を隠しましょうか」
「そうですね。ここだと弓矢などで射られてしまいます」
「お姉ちゃん、あっち!」
コリンが大きな像を見つけたので、三人でその台座の陰へ。
ここの館に住んでた人……庭にも館にも彫像が沢山あるけど、集めるのが趣味なのかな?
息を潜めていると、誰かがやって来たらしく、イナリから警戒の念話が来たんだけど、珍しく困惑している。
『むぅ。この魔力は……厄介な奴らだな』
イナリが知っている相手なの!?
とはいえ、この状況で聞く事も出来ず、様子を見るしかない。
「……俺はこの辺りを調べる。向こうを頼む」
「……わかった」
二人の男性がやって来て、一人が何処かへ行き、もう一人が辺りを調べ始めたんだけど、とにかく音を立てない。
普段から、こういう行動をしている泥棒とかなのだろうか。
だとしたら、探し物は得意だろうし、見つかるのは時間の問題かもしれない。
なので、氷魔法で動きを封じたいと思うんだけど、私の氷魔法は静かに出てきてくれないのよね。
動きを封じるとなると、結構大きな氷を出さないといけないので、出した時の音で他の男性が戻ってきてしまう。
でも、このまま何もしない訳にはいかないので、早速氷魔法で壁を作って動けなくしようとしたんだけど……突然男性が動かなくなった?
『あまり我の好みではないが、厄介な相手故、精神を操作した。こやつは明日まで眠ったままだ』
精神を操作……あ、ゲーマのラインハルトさんから取り戻した力だ。
イナリはこの力が好きじゃないからって、取り戻してからも今まで一度も使った事が無かったのに……こ、この相手って何者なのっ!?
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