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第6章 太陽の聖女と星の聖女
第249話 トリスタン王子の居場所
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ギルドを出て大通りを歩いていると、通行人に聞き込みをしているコリンとロレッタさんを見つけた。
ひとまずギルドで聞いた話を共有しようと思い、人通りの少ない路地裏へ行くと、コリンが口を開く。
「お姉ちゃんたちは何か話が聞けたー?」
「そうね。トリスタン王子がこの街に来た事は確認が取れたわ」
「そうなんだ! 残念ながら、こっちは王子の顔を知っている人が居なくて、そういう話が聞けなかったんだー」
あ、やっぱり。
冒険者ギルドの職員さんですら知らないのだから、通行人の方はフランセーズの第三王子の顔を知らないわよね。
「それで、何やら変な人たちと一緒に行動しているみたいね。十人以上の集団で、大通りを歩いていたとか」
「あ! それなら、僕たちも聞いたよね。ロレッタお姉さん」
「えぇ。何でも全身黒ずくめの服で、帽子を目深に被っていたそうです。ただ、先頭を歩く男性だけは服装が違い、帽子も被ってないんですけど、周囲の人を見下すような視線を送っていて不快だったとか。おそらく、その先頭の方がトリスタン王子だったんでしょうね」
黒ずくめの人たちを大勢連れて……一体、あの人は何をしているのだろうか。
けど、それはそれとして、目立っているのだけれど、誰も関わりたくないと思ったのか、どこへ行ったのかは誰からも聞けなかったらしい。
「ここからだけど……このまま南西に向かえばピナーっていう大きな街があるわね」
「前に行った時は、領主さんが歓迎パーティを開いてくれたんだよねー! ご飯が食べ放題だったんだー!」
「え? 領主様から歓迎パーティ!? どうして、そんな事に?」
コリンが言ったのは、私が神水で周辺の田畑を蘇らせて土の聖女って言われていた時の事ね。
私は土の聖女ではないので、完全な勘違いなんだけど……説明するとややこしい事になっちゃうかな。
「ま、まぁピナーの街はいろいろあったんですよ」
「そ、そうですか」
「うん……あ! それより、今日はそろそろ宿を探しましょうか。今からだと、もう馬車も出ていないでしょうし」
という訳で、本日の聞き込みは終了し、適当な宿へ。
宿に食事処が併設されていたので、三人で食事を取っていると、何かに気付いたロレッタさんが声を上げる。
「そうだ! 今日は天気が良いので、きっと星が沢山出ると思うんです。改めてトリスタン王子の居場所を占ってみます。例の武器については方角しか示されなかったのですが、おそらく王子の位置であれば、具体的な地名がわかるのではないかと」
「そうなんだ! ロレッタさんの占いってやっぱり凄いよね」
「ありがとうございます。ただ、私は星の声を聞いているだけなんですけどね」
その声を聞けるのが凄いと思うんだけど……それはそれとして、食事を済ませて部屋に戻り、ロレッタさんに言われた時間まで私は薬を作っておく事に。
幾つかの超級ポーションと、様々な症状に効くポーションを少しずつ数種類作ったところで、扉がノックされてロレッタさんが呼びにきた。
「では、参りましょう。宿の裏庭をお借りしたいと思います」
コリンとイナリにも声をかけ、ロレッタさんと共に宿の外へ。
満点の星空の下で、ロレッタさんの周囲が淡く輝き、星の瞬きが落ちて来たかのような錯覚に陥っていると……ロレッタさんが口を開く。
「わかりました。トリスタン王子は、バーセオーナという街に居るそうです」
「バーセオーナ……ここから東にいった所にある大きな街ね」
「今の聖都ですよね? 確か、元々別の街に聖都があったけど、事故か何かで壊滅してバーセオーナに聖都を移したと聞きましたが」
「そう……ですね。あの街でも色々ありましたね」
私としては、いろいろあったのはバーセオーナではなく、元々の聖都の方だけど。
バーセオーナは少し立ち寄った程度だから、あまり詳しくはないけれど、早速明日向かいましょうか。
ひとまずギルドで聞いた話を共有しようと思い、人通りの少ない路地裏へ行くと、コリンが口を開く。
「お姉ちゃんたちは何か話が聞けたー?」
「そうね。トリスタン王子がこの街に来た事は確認が取れたわ」
「そうなんだ! 残念ながら、こっちは王子の顔を知っている人が居なくて、そういう話が聞けなかったんだー」
あ、やっぱり。
冒険者ギルドの職員さんですら知らないのだから、通行人の方はフランセーズの第三王子の顔を知らないわよね。
「それで、何やら変な人たちと一緒に行動しているみたいね。十人以上の集団で、大通りを歩いていたとか」
「あ! それなら、僕たちも聞いたよね。ロレッタお姉さん」
「えぇ。何でも全身黒ずくめの服で、帽子を目深に被っていたそうです。ただ、先頭を歩く男性だけは服装が違い、帽子も被ってないんですけど、周囲の人を見下すような視線を送っていて不快だったとか。おそらく、その先頭の方がトリスタン王子だったんでしょうね」
黒ずくめの人たちを大勢連れて……一体、あの人は何をしているのだろうか。
けど、それはそれとして、目立っているのだけれど、誰も関わりたくないと思ったのか、どこへ行ったのかは誰からも聞けなかったらしい。
「ここからだけど……このまま南西に向かえばピナーっていう大きな街があるわね」
「前に行った時は、領主さんが歓迎パーティを開いてくれたんだよねー! ご飯が食べ放題だったんだー!」
「え? 領主様から歓迎パーティ!? どうして、そんな事に?」
コリンが言ったのは、私が神水で周辺の田畑を蘇らせて土の聖女って言われていた時の事ね。
私は土の聖女ではないので、完全な勘違いなんだけど……説明するとややこしい事になっちゃうかな。
「ま、まぁピナーの街はいろいろあったんですよ」
「そ、そうですか」
「うん……あ! それより、今日はそろそろ宿を探しましょうか。今からだと、もう馬車も出ていないでしょうし」
という訳で、本日の聞き込みは終了し、適当な宿へ。
宿に食事処が併設されていたので、三人で食事を取っていると、何かに気付いたロレッタさんが声を上げる。
「そうだ! 今日は天気が良いので、きっと星が沢山出ると思うんです。改めてトリスタン王子の居場所を占ってみます。例の武器については方角しか示されなかったのですが、おそらく王子の位置であれば、具体的な地名がわかるのではないかと」
「そうなんだ! ロレッタさんの占いってやっぱり凄いよね」
「ありがとうございます。ただ、私は星の声を聞いているだけなんですけどね」
その声を聞けるのが凄いと思うんだけど……それはそれとして、食事を済ませて部屋に戻り、ロレッタさんに言われた時間まで私は薬を作っておく事に。
幾つかの超級ポーションと、様々な症状に効くポーションを少しずつ数種類作ったところで、扉がノックされてロレッタさんが呼びにきた。
「では、参りましょう。宿の裏庭をお借りしたいと思います」
コリンとイナリにも声をかけ、ロレッタさんと共に宿の外へ。
満点の星空の下で、ロレッタさんの周囲が淡く輝き、星の瞬きが落ちて来たかのような錯覚に陥っていると……ロレッタさんが口を開く。
「わかりました。トリスタン王子は、バーセオーナという街に居るそうです」
「バーセオーナ……ここから東にいった所にある大きな街ね」
「今の聖都ですよね? 確か、元々別の街に聖都があったけど、事故か何かで壊滅してバーセオーナに聖都を移したと聞きましたが」
「そう……ですね。あの街でも色々ありましたね」
私としては、いろいろあったのはバーセオーナではなく、元々の聖都の方だけど。
バーセオーナは少し立ち寄った程度だから、あまり詳しくはないけれど、早速明日向かいましょうか。
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