上 下
71 / 118
第6章 太陽の聖女と星の聖女

第243話 ロレッタさんのお願い

しおりを挟む
 薬師ギルドでA級薬師に認定され、身分証が渡されたんだけど……ギュスターヴさんには少し悪い事をしてしまったかもしれない。
 ソフィアさんに対抗意識を燃やしていたように思えたけど、水の回転でポーションの効能が上がるっていうのは、神水を隠す為の嘘なんです。
 もしも私が言った水の回転について研究をしても、時間の無駄になっちゃうんだけど……いやでも、試験官として得た情報を私的に使わないって言っていたし、私が気にし過ぎかな。

「ただいまー!」
「お姉ちゃん、どうだったー?」
「何とか合格したわよ」
「よかったねー! お姉ちゃん、いっぱい勉強していたもんねー!」

 ソフィアさんの家に戻ると、コリンが最初に出迎えてくれた。

『アニエスよ、おめでとう。お主なら、きっと大丈夫だと思っておったぞ』
「アニエスさん、おめでとうございます」
「うん、皆ありがとう!」

 それから、イナリとロレッタさんにも祝ってもらい……今まで、こういうのがなかったから、ちょっと照れるかな。
 なので、話題を変える為にも、私が試験を受ける前にロレッタさんが言いたそうにしていた事を聞いてみる。

「えっと、ひとまず私の用事は済んだので、ロレッタさんのお話を聞かせていただければと」
「はい。昨晩は何故か身体に魔力が溢れていたので、私の占星術で普段は占う事が出来ない、自分自身の事を占ってみたのです。すると、星の声がアニエスさんと行動を共にするようにと言っておりまして」
「えっ!? わ、私?」
「えぇ。そこで、アニエスさん。非常に申し訳ないのですが、暫く一緒に同行させていただけないでしょうか。アニエスさん程、料理は上手くありませんが、家事全般と占いが出来ます。お願い致しますっ!」
「……み、皆はどうかな? 私は構わないけど」

 私は特に問題ないけど、イナリとコリンはどうなんだろう?

「ボクは別に良いよー!」
『我も別に構わぬぞ。魔力の量は多いが、敵意がない事はわかったらかな』

 コリンもイナリも快諾してくれたので、改めてロレッタさんに向き直る。

「……という訳で、大丈夫です。ロレッタさん、これから宜しくお願い致します」
「あ、ありがとうございます! アニエスさん、コリン君。あと、キツネちゃん? 宜しくお願い致しますね」
「うん! こちらこそ、宜しくねー!」

 ロレッタさんが深々と頭を下げ、コリンが返事をしていたけど、キツネちゃん……か。
 いやまぁイナリは子狐の姿の時は、冒険者ギルドから渡されたリボンを身に着けているからね。
 ちゃん付けで呼ばれても仕方がな……あ、うん。ちょっと不機嫌そうかも。
 とはいえ、いきなり本当の話をしても良いかわからないし、暫くは仕方ないかな。

「えっと、ひとまず南西に向かう……で良いのよね?」
「そう……ですね。トリスタン王子は南西に向かっているはずですので、止めるのであればそちらへ向かうべきかと。ただ、そうは言っても方角しかわからないので、行き過ぎてしまう……可能性もありますが」
「少なくとも、フランセーズ国内ではトリスタン王子の事を知っている人も多いと思うから、聞き込みをしながらイスパナへ向かいましょう」

 ロレッタさんと共に、魔剣と同じ様な武器の封印を解こうとするトリスタン王子を探して止める事にした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

貴方の愛人を屋敷に連れて来られても困ります。それより大事なお話がありますわ。

もふっとしたクリームパン
恋愛
「早速だけど、カレンに子供が出来たんだ」 隣に居る座ったままの栗色の髪と青い眼の女性を示し、ジャンは笑顔で勝手に話しだす。 「離れには子供部屋がないから、こっちの屋敷に移りたいんだ。部屋はたくさん空いてるんだろ? どうせだから、僕もカレンもこれからこの屋敷で暮らすよ」 三年間通った学園を無事に卒業して、辺境に帰ってきたディアナ・モンド。モンド辺境伯の娘である彼女の元に辺境伯の敷地内にある離れに住んでいたジャン・ボクスがやって来る。 ドレスは淑女の鎧、扇子は盾、言葉を剣にして。正々堂々と迎え入れて差し上げましょう。 妊娠した愛人を連れて私に会いに来た、無法者をね。 本編九話+オマケで完結します。*2021/06/30一部内容変更あり。カクヨム様でも投稿しています。 随時、誤字修正と読みやすさを求めて試行錯誤してますので行間など変更する場合があります。 拙い作品ですが、どうぞよろしくお願いします。

そんなに幼馴染の事が好きなら、婚約者なんていなくてもいいのですね?

新野乃花(大舟)
恋愛
レベック第一王子と婚約関係にあった、貴族令嬢シノン。その関係を手配したのはレベックの父であるユーゲント国王であり、二人の関係を心から嬉しく思っていた。しかしある日、レベックは幼馴染であるユミリアに浮気をし、シノンの事を婚約破棄の上で追放してしまう。事後報告する形であれば国王も怒りはしないだろうと甘く考えていたレベックであったものの、婚約破棄の事を知った国王は激しく憤りを見せ始め…。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?

水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」 「はぁ?」 静かな食堂の間。 主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。 同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。 いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。 「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」 「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」 父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。 「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」 アリスは家から一度出る決心をする。 それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。 アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。 彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。 「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」 アリスはため息をつく。 「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」 後悔したところでもう遅い。

婚約者に消えろと言われたので湖に飛び込んだら、気づけば三年が経っていました。

束原ミヤコ
恋愛
公爵令嬢シャロンは、王太子オリバーの婚約者に選ばれてから、厳しい王妃教育に耐えていた。 だが、十六歳になり貴族学園に入学すると、オリバーはすでに子爵令嬢エミリアと浮気をしていた。 そしてある冬のこと。オリバーに「私の為に消えろ」というような意味のことを告げられる。 全てを諦めたシャロンは、精霊の湖と呼ばれている学園の裏庭にある湖に飛び込んだ。 気づくと、見知らぬ場所に寝かされていた。 そこにはかつて、病弱で体の小さかった辺境伯家の息子アダムがいた。 すっかり立派になったアダムは「あれから三年、君は目覚めなかった」と言った――。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。