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第6章 太陽の聖女と星の聖女

挿話62 神水を飲んだ占星術師ロレッタ

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 トリスタン王子の占いを行った時の結果が不穏過ぎて、アニエスさんへ伝えに来たら……私のお腹が鳴ってしまい、夕食をいただく事になってしまった。

「ごちそうさまでした。アニエスさんのご飯……本当に美味しかったです」
「あはは。お口に合って何よりです。あ、そうだ。もう時間も遅いので、今晩は泊まっていってください」
「えぇっ!? 流石にそれは申し訳ないというか……」
「私もソフィアさんの家を使わせてもらっているだけですけど、殆どの部屋が余っているんです。このまま使わないのも勿体無い気がするので、是非」

 という訳で、食事だけでなく泊めていただく事になってしまった。
 しかし、それにしても……アニエスさんの作った夕食をいただいてから、不思議と力が湧いてくるというか、湧き過ぎている気がする。
 これは……いつもより魔力が溢れているの?

「もしかして、今なら普段は占えない自分の事が占えるのでは?」

 窓から外を見てみると、満点の星空が広がっている。
 いつも自分の事を占おうとしても、精度が低いというか、見当外れな答えが返って来たりする事もあったけど、今ならいつもよりハッキリと星の声が聞こえると思う。
 屋敷から中庭へ出ると、光り輝く星たちに、これから私は一体どうするべきかと問いかけてみた。
 それから星の声に耳を傾けて集中していると、魔力が高まっているからか、いろんな星の声が聞こえてくる。

『ロレッタ。私たちには貴女の事を導く事が出来ないのです』

 これは、自分の事を占った時にいつも言われる事ね。
 占星術師の宿命なのか、自分の事を占う事は出来ないみたい。

『自分の心に素直になりなさい』
『星の導きは、迷える者への導き』
『貴女の信じた道が、貴女の進むべき道です』

 うん。これも時々聞く言葉よね。
 身体から溢れるくらいに魔力があって、沢山の星の声が聞こえるんだけど、結局いつもと同じなのかと思っていると……

『……一緒に居る青髪の女性と行動を共にしなさい……』

 小さな声だけど、確かに聞こえた。
 前にトリスタン王子を占った時と同じ様に、導きの星の名も教えてくれない。
 けど、あの時とも違う声。
 それに、いつもの精度が低い時の言い方とは明らかに違う。
 普段、自分の事を何度も占うと、じゃあ……と、仕方なさそうに「明日は雨かもしれないから、洗濯しな方が良いかも……」と日常的な事を自信なさげに言われ、しかも晴れる。
 もしかして、いつも様々な星が声を発しているけれど、普段は私の魔力が少なくて、その声が一つしか聞き取れていなかったのだろうか。
 そして今回は、いつもよりも遥かに魔力が多いので、より多くの……小さな声まで聞こえたという事なの?

「けど、一緒に居る青髪の女性って、アニエスさんの事よね? そうだ。いつも他の人の事は占えるのだから、アニエスさんの事を占えば良いのよね」

 という訳で、アニエスさんにこれから起こる事について聞いてみる。

『私たちには、あの女性の事を教える事は出来ません』

 えっ!? ど、どういう事なのっ!?
 私自身の事でもないのに、星が導きを拒否した!?
 しかも、どの星も声を揃えてダメだと言う。
 こんなの初めてだけど……もしかしたら小さな声で何か教えてくれる星があるのでは? と思ったんだけど……

『……神の水……』

 唯一聞こえたのは、これだけ。
 神の水ってどういう事なの!?
 アニエスさんは一体何者なの!?
 だけど、アニエスさんと一緒に居る事が星の導きだというのであれば、私は私の占いを信じる。
 明日、アニエスさんに同行させてもらうよう、お願いする事にした。
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