57 / 134
第6章 太陽の聖女と星の聖女
第230話 墓地の人影
しおりを挟む
森の中へ入ったのは良いものの、どっちへ行けば良いのかが分からない。
でも、行くとしたらお墓がある場所よね?
だとしたら、一応道らしきものがあるので、これを真っすぐ進めば良いはず!
「……って、どうしていつまで経ってもお墓に着かないの!?」
「そうだよね。僕たち、結構走ったよね?」
「そもそも、そんなに大きな森だったかしら?」
いえ、決して小さな森ではないと思うんだけど、コリンの言う通り私たちは森の中を走り続けたのに、墓地へ辿り着かないし、森を抜けたりする訳でもない。
長老さんだって、平地に森が出来たって言っていたし、実は大きな森へ繋がっているって事はないと思う。
「あれ? お姉ちゃん。この木、さっきもあったよね?」
「そ、そう?」
「うん。一本だけ枯れているし、ちょっと変な形だから覚えていたんだー」
「じゃあ、私たちは真っすぐ走っていると思っていたけど、実は少しずつ道が曲がっていて、同じところをグルグル回っていたりするの!?」
「うわぁ……それは結構悲しいかも」
立ち止まって前後を確認してみると、緩やかに道が左側に向かって曲がっている様にも見える。
真ん中に木が生えていたり、枝が突きでていたりして、元々直進ではないにせよ、走っている最中に気付けなかったのは悲しい。
「急がば回れ……かしら。少し速度を落として、どこか通れそうな所があったら、曲がりましょう」
コリンと一緒に、獣道などが無いか確認しながら早歩きで進んで行くと、あった! 細いけど、奥に続いてる!
「コリン! きっとここよ!」
左側に細い獣道を見つけたので、そちらへ進んで行くと、灰色の石が見えた。
おそらく、あれが長老の言っていた墓地ね。
ようやく目的地に着いたんだけど、肝心のイナリが居ない。
そう思った直後、街で感じたのとは全然違う、異質な嫌な気配を感じた。
これをどう表現すれば良いのか……凄い悪意を向けられているというか、妬みや嫉妬、怒りや悲しみなど、いろんな負の感情を向けられているような感じがする。
「お、お姉ちゃん……僕、何だか寒気がする」
「そうね。これ以上、近付かない方が良いかも。でもイナリは……」
「お姉ちゃんっ! あれっ!」
真っ青になっていたコリンが振るえる手で指し示した方角を見てみると、暗い森の中に更に暗い人影が見えた。
暗闇の中で一層濃く、暗く見える闇色のそれは、遠くに見えていたけど、私たちに向かって近付いて来る。
これは……逃げなきゃっ!
そう思ったのに、身体が動かず、声も出せない。
どうしよう! せめてコリンだけでも何とか……でも、どう頑張っても金縛りにあっているかのように身体が動かず、暗い影が目前に迫ってきている。
もうダメ……と思ったところで、身体が浮き、黒い影を避ける事が出来た。
「全く。来てはならぬと言ったのだがな」
「イナリっ! ありがとう! ……あっ! コリンは!?」
「もちろん無事だ。だが、二人共油断するでない。奴は……レイスという魔物だ。アニエスには悪いが、いわゆる幽霊系の魔物だな」
「うぅ、やっぱり……」
暗い墓地で、人影で、金縛りみたいなのを掛けられて……そういう系なんだろうなって思ったけど、やっぱりそうなのね。
イナリが私とコリンをかかえながら、一旦墓地から離れる。
これでひとまず安全なのかな? と思ったら……いやぁぁぁっ! まだ追いかけてくるぅぅぅっ!
でも、行くとしたらお墓がある場所よね?
だとしたら、一応道らしきものがあるので、これを真っすぐ進めば良いはず!
「……って、どうしていつまで経ってもお墓に着かないの!?」
「そうだよね。僕たち、結構走ったよね?」
「そもそも、そんなに大きな森だったかしら?」
いえ、決して小さな森ではないと思うんだけど、コリンの言う通り私たちは森の中を走り続けたのに、墓地へ辿り着かないし、森を抜けたりする訳でもない。
長老さんだって、平地に森が出来たって言っていたし、実は大きな森へ繋がっているって事はないと思う。
「あれ? お姉ちゃん。この木、さっきもあったよね?」
「そ、そう?」
「うん。一本だけ枯れているし、ちょっと変な形だから覚えていたんだー」
「じゃあ、私たちは真っすぐ走っていると思っていたけど、実は少しずつ道が曲がっていて、同じところをグルグル回っていたりするの!?」
「うわぁ……それは結構悲しいかも」
立ち止まって前後を確認してみると、緩やかに道が左側に向かって曲がっている様にも見える。
真ん中に木が生えていたり、枝が突きでていたりして、元々直進ではないにせよ、走っている最中に気付けなかったのは悲しい。
「急がば回れ……かしら。少し速度を落として、どこか通れそうな所があったら、曲がりましょう」
コリンと一緒に、獣道などが無いか確認しながら早歩きで進んで行くと、あった! 細いけど、奥に続いてる!
「コリン! きっとここよ!」
左側に細い獣道を見つけたので、そちらへ進んで行くと、灰色の石が見えた。
おそらく、あれが長老の言っていた墓地ね。
ようやく目的地に着いたんだけど、肝心のイナリが居ない。
そう思った直後、街で感じたのとは全然違う、異質な嫌な気配を感じた。
これをどう表現すれば良いのか……凄い悪意を向けられているというか、妬みや嫉妬、怒りや悲しみなど、いろんな負の感情を向けられているような感じがする。
「お、お姉ちゃん……僕、何だか寒気がする」
「そうね。これ以上、近付かない方が良いかも。でもイナリは……」
「お姉ちゃんっ! あれっ!」
真っ青になっていたコリンが振るえる手で指し示した方角を見てみると、暗い森の中に更に暗い人影が見えた。
暗闇の中で一層濃く、暗く見える闇色のそれは、遠くに見えていたけど、私たちに向かって近付いて来る。
これは……逃げなきゃっ!
そう思ったのに、身体が動かず、声も出せない。
どうしよう! せめてコリンだけでも何とか……でも、どう頑張っても金縛りにあっているかのように身体が動かず、暗い影が目前に迫ってきている。
もうダメ……と思ったところで、身体が浮き、黒い影を避ける事が出来た。
「全く。来てはならぬと言ったのだがな」
「イナリっ! ありがとう! ……あっ! コリンは!?」
「もちろん無事だ。だが、二人共油断するでない。奴は……レイスという魔物だ。アニエスには悪いが、いわゆる幽霊系の魔物だな」
「うぅ、やっぱり……」
暗い墓地で、人影で、金縛りみたいなのを掛けられて……そういう系なんだろうなって思ったけど、やっぱりそうなのね。
イナリが私とコリンをかかえながら、一旦墓地から離れる。
これでひとまず安全なのかな? と思ったら……いやぁぁぁっ! まだ追いかけてくるぅぅぅっ!
93
お気に入りに追加
7,722
あなたにおすすめの小説

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
側妃は捨てられましたので
なか
恋愛
「この国に側妃など要らないのではないか?」
現王、ランドルフが呟いた言葉。
周囲の人間は内心に怒りを抱きつつ、聞き耳を立てる。
ランドルフは、彼のために人生を捧げて王妃となったクリスティーナ妃を側妃に変え。
別の女性を正妃として迎え入れた。
裏切りに近い行為は彼女の心を確かに傷付け、癒えてもいない内に廃妃にすると宣言したのだ。
あまりの横暴、人道を無視した非道な行い。
だが、彼を止める事は誰にも出来ず。
廃妃となった事実を知らされたクリスティーナは、涙で瞳を潤ませながら「分かりました」とだけ答えた。
王妃として教育を受けて、側妃にされ
廃妃となった彼女。
その半生をランドルフのために捧げ、彼のために献身した事実さえも軽んじられる。
実の両親さえ……彼女を慰めてくれずに『捨てられた女性に価値はない』と非難した。
それらの行為に……彼女の心が吹っ切れた。
屋敷を飛び出し、一人で生きていく事を選択した。
ただコソコソと身を隠すつまりはない。
私を軽んじて。
捨てた彼らに自身の価値を示すため。
捨てられたのは、どちらか……。
後悔するのはどちらかを示すために。

公爵令嬢はアホ係から卒業する
依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」
婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。
そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。
いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?
何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。
エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。
彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。
*『小説家になろう』でも公開しています。

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います
登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」
「え? いいんですか?」
聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。
聖女となった者が皇太子の妻となる。
そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。
皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。
私の一番嫌いなタイプだった。
ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。
そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。
やった!
これで最悪な責務から解放された!
隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。
そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。
聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい
金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。
私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。
勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。
なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。
※小説家になろうさんにも投稿しています。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。
結界師、パーティ追放されたら五秒でざまぁ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「こっちは上を目指してんだよ! 遊びじゃねえんだ!」
「ってわけでな、おまえとはここでお別れだ。ついてくんなよ、邪魔だから」
「ま、まってくださ……!」
「誰が待つかよバーーーーーカ!」
「そっちは危な……っあ」

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。