聖女なのに婚約破棄した上に辺境へ追放? ショックで前世を思い出し、魔法で電化製品を再現出来るようになって快適なので、もう戻りません。

向原 行人

文字の大きさ
上 下
83 / 86
第2章 辺境の地で快適に暮らす土の聖女

第62話 味噌尽くし

しおりを挟む
 エレンさんからの要望に応えようと、お味噌を使った料理を沢山作る。
 まずは、ふろふき大根。
 輪切りにした大根を柔らかく煮て、そこへ味噌や砂糖で作った味噌だれをかけて出来上がり。

「ほう。この大根にかけられたソースが旨いな」
「ホクホクしているのじゃ。優しい味なのじゃ」
「おねーちゃん、おいしー!」

 セマルグルさんたちは美味しいと言ってくれたけど、味噌を作っているエレンさんはどうかな?
 大根を小さく切って、口へ運ぶエレンさんの様子を見ていると、

「ミソは辛い物なのに、甘辛く……ミソがこんな味になるなんて」

 良かった。喜んで貰えたみたい。
 という訳で、次の料理は、サバの味噌煮……ならぬ、グレート・トラウトの味噌煮。
 これはどうかな?

「こ、これは、グレート・トラウトっ!? こ、こんな超レアな魚をミソで煮込むなんて……いや、もちろん美味しいけど、これは簡単に食べられないよ」

 あー、そっか。
 ヴォーロスが簡単に捕まえてくれるから、すっかり忘れていたけど、貴重なお魚なんだっけ。

「ふむ。野菜や魚も悪くないが、我はやはり肉が食べたいな」
「僕は、この魚料理は好きだよー」
「うむ。妾もそうなのじゃ! この魚料理は旨すぎるのじゃ!」

 まぁヴォーロスもバステトさんも、お魚は好きだもんね。
 マヘス君なんて、一心不乱で食べてくれているし。

「ふっふっふ、セマルグルさん。心配無用よ。ちゃんと、お肉料理も用意しているからね」
「おぉ、流石はセシリアだ。良くわかっている」
「今回は、本当に色々と作作ったからねー。いっぱい作って私も楽しかったわ。……とりあえず、次のお肉を使った料理を取ってくるわね」

 家を出て、外のオーブンで温めている料理を取りに行くと……何やら凄い視線を感じる。
 それも沢山。羨ましむような、怯えているような、敵対しているような……いろんな視線を感じて顔を向けると、大勢の人たちが結界に張り付いていた。

「きゃぁぁぁっ! ……だ、大丈夫ですか?」

 よく見ると、血だらけの人が多い。
 とりあえず、治癒魔法が使えるセマルグルさんを呼びに行こうと思った所で、真っ先にマヘス君がやって来た。

「おねーちゃん! だいじょーぶ!?」
「えぇ、ごめんね。ちょっとビックリしちゃって」
「ふにゃーっ!」

 マヘス君が猫の姿になると、血塗れの人たちに向かって威嚇するけど……ごめん。ただただ可愛いんだけど。

「セシリア、どうしたのっ!?」
「どうしたのだ!?」

 少し遅れて、ヴォーロスとセマルグルさんがやって来た。
 ヴォーロスが私を庇うように前に出ると、血塗れの人たちが真っ青になって、後ずさる。
 更にセマルグルさんがやって来ると、周りの人たちがそのまま後ろに倒れ、ぶるぶると身体を震わせ……って、怖くないからね?

「セマルグルさん。この人たちを治してあげて」
「む? まぁセシリアがそう言うのなら……ただ、お主ら! 少しでも変な動きを見せてみろ。その場で……こほん。まぁまずは治してやろう。セシリアよ。結界を解いてくれるか」

 私が結界を解くと、一歩前に出たセマルグルさんが治癒魔法を使ってくれて、周りの人たちの怪我が治っていく。

「おぉぉ、凄い! 流石はグリフォン様だ!」
「やはりグリフォン様に敵対するなんて、間違っていたんた!」
「グリフォン様、ありがとうございますっ!」

 元気になった人たちが、セマルグルさんに感謝の意を伝えていると、

「ふははははっ! 甘いっ! 甘いぞっ! その甘さが命取りだっ! くらえっ! ブラックスフィア!」

 奥に居た一人が、セマルグルさんに向かって、黒い球体のような何かを飛ばして来た!

「治癒魔法を使うという事は、光魔法を得意としているのだろう? 我が最強の闇魔法で、消し去ってくれるわっ!」

 黒い球がセマルグルさん目掛けて飛んで行き、

――ぺちっ

 セマルグルさんの翼の一撃で、地面に叩き落された。

「え……?」
「お主。怪我を治してやったというのに……どうやら死にたいらしいな」
「えっ!? 光の眷族は闇属性に弱いはず……待ってくれ! うひぃぃぃっ!」

 えーっと、魔法を使った人を、セマルグルさんが翼で叩きまくっているけど、助けた方が良い……わよね?
しおりを挟む
感想 217

あなたにおすすめの小説

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

【完結】聖獣もふもふ建国記 ~国外追放されましたが、我が領地は国を興して繁栄しておりますので御礼申し上げますね~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
 婚約破棄、爵位剥奪、国外追放? 最高の褒美ですね。幸せになります!  ――いま、何ておっしゃったの? よく聞こえませんでしたわ。 「ずいぶんと巫山戯たお言葉ですこと! ご自分の立場を弁えて発言なさった方がよろしくてよ」  すみません、本音と建て前を間違えましたわ。国王夫妻と我が家族が不在の夜会で、婚約者の第一王子は高らかに私を糾弾しました。両手に花ならぬ虫を這わせてご機嫌のようですが、下の緩い殿方は嫌われますわよ。  婚約破棄、爵位剥奪、国外追放。すべて揃いました。実家の公爵家の領地に戻った私を出迎えたのは、溺愛する家族が興す新しい国でした。領地改め国土を繁栄させながら、スローライフを楽しみますね。  最高のご褒美でしたわ、ありがとうございます。私、もふもふした聖獣達と幸せになります! ……余計な心配ですけれど、そちらの国は傾いていますね。しっかりなさいませ。 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ ※2022/05/10  「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過 ※2022/02/14  エブリスタ、ファンタジー 1位 ※2022/02/13  小説家になろう ハイファンタジー日間59位 ※2022/02/12  完結 ※2021/10/18  エブリスタ、ファンタジー 1位 ※2021/10/19  アルファポリス、HOT 4位 ※2021/10/21  小説家になろう ハイファンタジー日間 17位

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます

今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。 しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。 王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。 そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。 一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。 ※「小説家になろう」「カクヨム」から転載 ※3/8~ 改稿中

【完結】婚約破棄された令嬢が冒険者になったら超レア職業:聖女でした!勧誘されまくって困っています

如月ぐるぐる
ファンタジー
公爵令嬢フランチェスカは、誕生日に婚約破棄された。 「王太子様、理由をお聞かせくださいませ」 理由はフランチェスカの先見(さきみ)の力だった。 どうやら王太子は先見の力を『魔の物』と契約したからだと思っている。 何とか信用を取り戻そうとするも、なんと王太子はフランチェスカの処刑を決定する。 両親にその報を受け、その日のうちに国を脱出する事になってしまった。 しかし当てもなく国を出たため、何をするかも決まっていない。 「丁度いいですわね、冒険者になる事としましょう」

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

処理中です...