聖女なのに婚約破棄した上に辺境へ追放? ショックで前世を思い出し、魔法で電化製品を再現出来るようになって快適なので、もう戻りません。

向原 行人

文字の大きさ
上 下
82 / 86
第2章 辺境の地で快適に暮らす土の聖女

第61話 何故か怯えるエレンさん

しおりを挟む
「ん……おはよー」
「おはよう、セシリア」
「ヴォーロス、マヘス君は?」
「うん。良く眠っているよ。きっと楽しかったんだろうねー」

 昨日の夜に、突然マヘス君が一人でやって来た。
 こんなに小さな子が、夜に一人というのは危ないから、これからはバステトさんと一緒に来てね……と、注意しておいたんだけど、問題はその後なのよね。
 エレンさんは猫が苦手なのか、マヘス君の事を物凄く怖がって逃げるから、それをマヘス君が遊んでくれていると思って追いかけて……どちらも電池が切れたみたいに、倒れるようにして眠りについた。

「じゃあ、私は今のうちに朝ごはんを作ってくるわね」
「僕も手伝うよー」

 ヴォーロスと一緒に外へ出ると、セマルグルさんに呼ばれる。

「セシリア。結界を解除してやってくれぬだろうか」
「ん? 良いけど、何かあったの?」
「いや、そこに……バステトが中に入れず、泣きそうになっておるからな」

 言われて見てみると、セマルグルさんの視線の先で、バステトさんが結界で爪を研ぐようにガリガリと……あ、マヘス君が心配なのね。
 急いで結界を解くと、バステトさんが一目散に家へ入り、

「マヘスー! ……って、新しい女性が居るのじゃっ! しかも抱き合うようにしてじゃとっ!? くっ……もう、結婚してしまうのか!? は、早いのじゃっ!」

 中から叫び声が聞こえて来た。
 抱き合うように……って、マヘス君は猫の姿のまま眠っていたんだけど。
 まぁそれはそれとして、朝ごはんの準備ね。
 パンをスライスして、マヨネーズでパンの上に枠を作ったら、その中へ卵を落とす。
 あとはオーブンで熱して……簡単エッグトーストの出来上がりっ!

「朝ごはんが出来たけど……聞こえてます?」

 昨日の再現というか、目覚めたエレンさんが逃げて、マヘス君が追いかけ、バステトさんが泣きそうな表情でオロオロしている。
 どうしたものかと思っていたら、

「セシリアが呼んでいるであろうっ! 早く来ぬかっ!」
「ひゃいっ!」
「ごめんなさーい」

 セマルグルさんが一喝して、エレンさんもマヘス君もピタッと止まる。
 うーん。私との違いは、声の大きさ? 言い方? それとも威厳? 難しいなーと思いながら、皆で朝ごはんに。

「おねぇちゃん! おいしーっ!」
「うむ。そうなのじゃ。やはりセシリアのご飯は美味しいのじゃ。我もこの料理をマスターすれば……」
「確かに美味しい……ま、まって! 聖女様っ! これは、まさかマヨネーズ!? ど、どうしてマヨネーズばかり……ミソはダメなのですかっ!?」

 マヘス君とバステトさんと一緒に美味しいと言ってくれていたエレンさんが、突然表情を硬らせる。
 けど、その瞬間にヴォーロスとバステトさんが立ち上がり、

「な、何でもないですー。その、ちょーっと、ミソの事も考えてくれると嬉しいなー、なんて……」

 突然エレンさんが小声になってしまった。
 どうしたんだろ? 突然、二人が立ち上がったから、ビックリしちゃったのかな?
 しかし、お味噌はむしろ私が使いたいくらいなんだよね。
 ご飯と味噌汁と卵焼きにお漬物の朝ごはん……最高じゃない!
 まぁその肝心のお米が無いんだけどさ。

「エレンさん、心配しないで。ちゃーんとお味噌を使った料理を考えてあるから」
「そ、そうなのですかっ!?」
「えぇ、もちろん。という訳で、今日のお昼ご飯はおミソづくしでーす!」
「あ、ありがとうございますっ! あ、あと、出来ればお二方は、警戒を解いていただけると……本当に、もう熱くなりませんから」

 エレンさんが目に涙を浮かべる程、嬉しそうに……けど、怯えても居る?
 よく分からないけど、とりあえず味噌料理を沢山作ろーっと!
しおりを挟む
感想 217

あなたにおすすめの小説

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます

竹桜
ファンタジー
 ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。  そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。  そして、ヒロインは4人いる。  ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。  エンドのルートしては六種類ある。  バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。  残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。  大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。  そして、主人公は不幸にも死んでしまった。    次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。  だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。  主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。  そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。  

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

召喚学園で始める最強英雄譚~仲間と共に少年は最強へ至る~

さとう
ファンタジー
生まれながらにして身に宿る『召喚獣』を使役する『召喚師』 誰もが持つ召喚獣は、様々な能力を持ったよきパートナーであり、位の高い召喚獣ほど持つ者は強く、憧れの存在である。 辺境貴族リグヴェータ家の末っ子アルフェンの召喚獣は最低も最低、手のひらに乗る小さな『モグラ』だった。アルフェンは、兄や姉からは蔑まれ、両親からは冷遇される生活を送っていた。 だが十五歳になり、高位な召喚獣を宿す幼馴染のフェニアと共に召喚学園の『アースガルズ召喚学園』に通うことになる。 学園でも蔑まれるアルフェン。秀な兄や姉、強くなっていく幼馴染、そしてアルフェンと同じ最底辺の仲間たち。同じレベルの仲間と共に絆を深め、一時の平穏を手に入れる これは、全てを失う少年が最強の力を手に入れ、学園生活を送る物語。

目覚めれば異世界!ところ変われば!

秋吉美寿
ファンタジー
体育会系、武闘派女子高生の美羽は空手、柔道、弓道の有段者!女子からは頼られ男子たちからは男扱い!そんなたくましくもちょっぴり残念な彼女もじつはキラキラふわふわなお姫様に憧れる隠れ乙女だった。 ある日体調不良から歩道橋の階段を上から下までまっさかさま! 目覚めると自分はふわふわキラキラな憧れのお姫様…なにこれ!なんて素敵な夢かしら!と思っていたが何やらどうも夢ではないようで…。 公爵家の一人娘ルミアーナそれが目覚めた異なる世界でのもう一人の自分。 命を狙われてたり鬼将軍に恋をしたり、王太子に襲われそうになったり、この世界でもやっぱり大人しくなんてしてられそうにありません。 身体を鍛えて自分の身は自分で守ります!

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

「宮廷魔術師の娘の癖に無能すぎる」と婚約破棄され親には出来損ないと言われたが、厄介払いと嫁に出された家はいいところだった

今川幸乃
ファンタジー
魔術の名門オールストン公爵家に生まれたレイラは、武門の名門と呼ばれたオーガスト公爵家の跡取りブランドと婚約させられた。 しかしレイラは魔法をうまく使うことも出来ず、ブランドに一方的に婚約破棄されてしまう。 それを聞いた宮廷魔術師の父はブランドではなくレイラに「出来損ないめ」と激怒し、まるで厄介払いのようにレイノルズ侯爵家という微妙な家に嫁に出されてしまう。夫のロルスは魔術には何の興味もなく、最初は仲も微妙だった。 一方ブランドはベラという魔法がうまい令嬢と婚約し、やはり婚約破棄して良かったと思うのだった。 しかしレイラが魔法を全然使えないのはオールストン家で毎日飲まされていた魔力増加薬が体質に合わず、魔力が暴走してしまうせいだった。 加えて毎日毎晩ずっと勉強や訓練をさせられて常に体調が悪かったことも原因だった。 レイノルズ家でのんびり過ごしていたレイラはやがて自分の真の力に気づいていく。

処理中です...