上 下
72 / 86
第2章 辺境の地で快適に暮らす土の聖女

第57話 賢者の里のお料理教室

しおりを挟む
「……という訳で、作り方はこんな感じです」
「凄い……よく、こんな料理をご存知なのですね」
「わ、私の故郷の料理ですので」

 ケンタウロスさんたちを集めてお料理教室を開き、無事好評を得る事が出来た。

「やっぱりソースが美味しいですね」
「タルタルソースって言うんですけど、美味しいですよねー! 揚げ物とかにも合いますよ。あと、このタルタルソースを作る前に、マヨネーズっていうソースを作っているんですけど、こちらも何にでも合うのでオススメです」
「マヨネーズ? あ、さっき頑張って混ぜたアレですか」
「はい。混ざれば何でも良いので、ビンに入れて振る方が楽かもですね」
「なるほど。あの、余った卵白はどうすれば良いですか?」

 私が日本で手作りマヨネーズを作っていた時は、卵黄しか使わない派だったので、余った卵白でお菓子を作っていたんだけど……って、待って! お酢と醤油で夢中になっていたけど、そういえば砂糖もあるって言っていたわよね?
 凄い! 獣人族の村、鬼人族の村に、この賢者の里の特産品を合わせたら、お菓子まで作れちゃう!

「じゃあ余った卵白を使って、お菓子を作るので、手伝ってください」

 まずは卵白をひたすら混ぜて、メレンゲ作り。
 ぶっちゃけ、これが一番大変なんだけど、ケンタウロスの皆さんに協力してもらって……凄っ!
 みんな腕力が凄いのかな?
 思っていたよりも遥かに早く泡立って行くので、途中で止めてもらい、砂糖を入れたらまた混ぜてもらう。
 そんな事を数かい繰り返し……電気の力を使わず、手で泡立て器を使って早くも角が立つ程のメレンゲが出来た。

「物凄く早いですね」
「セシリア様が作ってくださった料理が、本当に美味しかったので、皆で頑張りました。次も期待しておりますね」
「任せてっ! と言いながら、今作っているのは凄くシンプルなの。だから、今かき混ぜてもらったので殆ど完成なのよね」

 しっかり混ざったメレンゲを、具現化魔法で搾り口を作った搾り袋に入れ、同じく具現化魔法で作り出した鉄板へ絞り出していく。

「わぁ……可愛いですね」
「そうなのよー。この一口大の大きさが良いわよねー」

 そう言いながら、サササッとメレンゲを絞っていると、鉄板ではなく私の顔に視線が集まっている。
 あー、これはもしかして……と、キョロキョロと周囲を見渡し、予想が確信に変わる。

「えーっと、やってみる?」
「はいっ! やりたいっ! やりたーいっ!」
「ずるーい! ボクもっ! ボクもーっ!」

 いつの間に来て居たのか、ケンタウロス族の子供が数人熱い視線を送っていたので、順番交代で搾りだしてもらう事にした。

「あれー? お姉ちゃんみたいに上手くいかないよー?」
「ちょっとしたコツがあるんだけど……とりあえず、失敗なんて気にしなくて良いから、どんどんやってみよー! 何度もやっているうちに、出来るようになるからねー!」

 幸い、ケンタウロスの皆さんが気に入ったらしく、沢山マヨネーズを作ったので、メレンゲはいっぱいある。
 なので、子供たち皆で……うん。搾り口とか鉄板とかを、もっと作ろう。
 具現化魔法ですぐに生み出せる事に気付いたので、大人も含めて皆で鉄板にメレンゲを絞り……うん、上出来っ!

「あとは、これをオーブンで焼くんだけど……あ、大きな窯があるんだ。じゃあ、そっちで焼いちゃいましょう!」

 これはあまり高温でなくて良いので、程々の温度でやや長めに焼いて……あ、子供たちとお喋りしている内に焼けたみたい。

「出来たーっ! メレンゲクッキーっていうんだけど、熱いから少し待って……早い早い早い! 火傷するから、もう少し待ってー!」

 暫くして無事に冷めたので、皆で食べるんだけど……サクサクした食感のメレンゲクッキーが、口の中でフワっと解けて美味しい。

「お姉ちゃん、美味しいっ!」
「セシリア様っ! これも凄く美味しいですっ!」

 マヨネーズ作りで余った卵白と砂糖で、美味しいクッキーが出来た。
しおりを挟む
感想 217

あなたにおすすめの小説

称号は神を土下座させた男。

春志乃
ファンタジー
「真尋くん! その人、そんなんだけど一応神様だよ! 偉い人なんだよ!」 「知るか。俺は常識を持ち合わせないクズにかける慈悲を持ち合わせてない。それにどうやら俺は死んだらしいのだから、刑務所も警察も法も無い。今ここでこいつを殺そうが生かそうが俺の自由だ。あいつが居ないなら地獄に落ちても同じだ。なあ、そうだろう? ティーンクトゥス」 「す、す、す、す、す、すみませんでしたあぁあああああああ!」 これは、馬鹿だけど憎み切れない神様ティーンクトゥスの為に剣と魔法、そして魔獣たちの息づくアーテル王国でチートが過ぎる男子高校生・水無月真尋が無自覚チートの親友・鈴木一路と共に神様の為と言いながら好き勝手に生きていく物語。 主人公は一途に幼馴染(女性)を想い続けます。話はゆっくり進んでいきます。 ※教会、神父、などが出てきますが実在するものとは一切関係ありません。 ※対応できない可能性がありますので、誤字脱字報告は不要です。 ※無断転載は厳に禁じます

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

カフェ・ユグドラシル

白雪の雫
ファンタジー
辺境のキルシュブリューテ王国に店長が作る料理に舌鼓を打つ、様々な種族が集う店があった。 店の名前はカフェ・ユグドラシル。 そのカフェ・ユグドラシルを経営しているのは、とある準男爵夫妻である。 準男爵はレイモンドといい、侯爵家の三男であるが故に家を継ぐ事が出来ず高ランクの冒険者になった、自分の人生に悩んでいた青年だ。 準男爵の妻である女性は紗雪といい、数年前に九尾狐を倒した直後にウィスティリア王国による聖女召喚に巻き込まれた挙句、邪心討伐に同行させられたのだ。 しかも邪心討伐に同行していた二人の男によって、聖女を虐げたという濡れ衣を着せられた紗雪は追放されてしまう。 己の生きる道に迷っている青年と、濡れ衣を着せられて国を追われた女が出会った時、停滞していた食文化が、国が、他種族が交流の道を歩み始める───。 紗雪は天女の血を引くとも言われている(これは事実)千年以上続く官人陰陽師の家系に生まれた巫女にして最強の退魔師です。 篁家や羽衣の力を借りて九尾を倒した辺りは、後に語って行こうかと思っています。 紗雪が陰陽師でないのは、陰陽師というのが明治時代に公的に廃されたので名乗れないからです。

精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた

アイイロモンペ
ファンタジー
 2020.9.6.完結いたしました。  2020.9.28. 追補を入れました。  2021.4. 2. 追補を追加しました。  人が精霊と袂を分かった世界。  魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。  幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。  ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。  人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。  そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。  オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?

ラララキヲ
ファンタジー
 わたくしは出来損ない。  誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。  それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。  水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。  そんなわたくしでも期待されている事がある。  それは『子を生むこと』。  血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……  政略結婚で決められた婚約者。  そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。  婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……  しかし……──  そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。  前世の記憶、前世の知識……  わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……  水魔法しか使えない出来損ない……  でも水は使える……  水……水分……液体…………  あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?  そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──   【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】 【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】 【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

処理中です...