聖女なのに婚約破棄した上に辺境へ追放? ショックで前世を思い出し、魔法で電化製品を再現出来るようになって快適なので、もう戻りません。

向原 行人

文字の大きさ
上 下
63 / 86
第2章 辺境の地で快適に暮らす土の聖女

第48話 一件落着……?

しおりを挟む
 バステトさんに小麦粉を使った簡単な調理を教え、調理器具をプレゼントしたあと、鬼人族の村に居るデュークさんの所へ。

「……という訳で、守り神様が欲していたのは量ではなくて、種類だったのよ」
「なるほど。では、量はもっと少なくて良いと?」
「えぇ。実際、小麦もコーンも倉庫で保管されていたしね」

 バステトさんたちの姿は見ていないが、会話出来たという事にして、毎日のお供えの品を変えてもらう事に。
 バステトさんの異空間倉庫魔法に入れると、時間が進まないから生ものでも良いと思う。
 特にお魚なんて喜ばれるんじゃないかな?

「ほ、本当これだけで良いのでしょうか?」
「大丈夫よ。むしろ、これでも多いくらいだし」
「そ、そうなのでしょうか……い、いえ、セシリア様がそう仰るのなら、間違いないですよね」

 小麦とコーンに代わって野菜やお魚に玉子など、種類は増えたものの、これまでに比べて遥かに量が少ないからか、デュークさんがちょっと心配そうにしている。
 けど、バステトさんとマヘス君はモフモフ猫ちゃんだからね。
 これでも多いくらいだからね?
 デュークさんと同じように、村長さんたちも不安そうにしているけど、気にせずバステトさんの祠へ。

「あ! セシリア様っ! 石が左側に!」
「えぇ、大丈夫よ。ちゃんとお話ししたから」
「ありがとうございますっ!」

 奥の祠へ進むと、大量の小麦が置かれていた。

「あの、セシリア様。これは一体……」
「たぶんだけど、多過ぎるから返すって事じゃないかな? 今回運んで来た分量でも多いくらいだし」
「そうなのですね。では、量が多過ぎて全ては運べませんので、運べる分だけ持ち帰るようにいたします」

 それから、昨日と同じように持ってきた魚などを奉納して……無事に終わった。
 魚はきっとマヘス君も喜んでくれるだろう。
 喜び、じゃれてくれるマヘス君の事を思い出しつつ、私も家に帰る事にした。
 それから、またお礼として食材を貰ってしまったので、今日はデザートを……惣菜ではなく、フルーツたっぷりのクレープを作り、ヴォーロスやセマルグルさんと一緒に食べる。

「んー、晩ご飯は何にしようかなー」

 夕方になって、夕食を何にしようかと考えていると、何かが私の腕の中に飛び込んできた。

「えっ!? な、何!? ……この毛艶とモフモフ具合は、マヘス君!?」
「にゃー」

 一体何があったのか、お魚を咥えた黒猫のマヘス君が私の腕の中で返事をして……慌てて魚を咥えなおす。
 この魚は、デュークさんが納めたものだよね? ……と、そんな事を考えていると、二匹目の黒猫、バステトさんが現れる。
 バステトさんがすぐに女性の姿になり、

「セシリアよ。マヘスが迷惑を掛けてすまないのじゃ」

 頭を下げられてしまった。

「あの、突然どうされたんですか? 今朝、朝食の後に祠へ帰られましたよね?」
「いや、そうなのじゃが……その、同じ材料を使っても、私が作った料理より、セシリアが作った方が美味しいと言われてしまったのじゃ」
「……あの、このお魚は?」
「おそらく、マヘスなりの報酬というか、セシリアへの気持ちの現れだと思うのじゃ」

 えーっと、それはつまり、マヘス君の大好物である魚を、報酬として私にあげるから、代わりにご飯を作って欲しいという事だろうか。

「あのね、マヘス君。バステトさんが……お母さんが作ったご飯の方が、愛情たっぷりで美味しいはずだよ?」

 子供を諭すように、優しくゆっくり話し掛けると、何回かマヘス君がニャーと鳴いて、

「ちがうの! おかあさん、りょーりがヘタなんだもん! くろこげのスミなんてたべられないよー!」
「えっ!? えぇっ!? ま、マヘス君!?」

 私の腕の中に居た黒猫マヘス君が、黒髪の幼稚園児くらいの男の子に変身した。
しおりを挟む
感想 217

あなたにおすすめの小説

【本編完結】ただの平凡令嬢なので、姉に婚約者を取られました。

138ネコ@書籍化&コミカライズしました
ファンタジー
「誰にも出来ないような事は求めないから、せめて人並みになってくれ」  お父様にそう言われ、平凡になるためにたゆまぬ努力をしたつもりです。  賢者様が使ったとされる神級魔法を会得し、復活した魔王をかつての勇者様のように倒し、領民に慕われた名領主のように領地を治めました。  誰にも出来ないような事は、私には出来ません。私に出来るのは、誰かがやれる事を平凡に努めてきただけ。  そんな平凡な私だから、非凡な姉に婚約者を奪われてしまうのは、仕方がない事なのです。  諦めきれない私は、せめて平凡なりに仕返しをしてみようと思います。

【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」  何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?  後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!  負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。  やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*) 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/06/22……完結 2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位 2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位 2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~

白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」 マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。 そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。 だが、この世には例外というものがある。 ストロング家の次女であるアールマティだ。 実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。 そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】 戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。 「仰せのままに」 父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。 「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」 脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。 アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃 ストロング領は大飢饉となっていた。 農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。 主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。 短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。

婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。

拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。

精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた

アイイロモンペ
ファンタジー
 2020.9.6.完結いたしました。  2020.9.28. 追補を入れました。  2021.4. 2. 追補を追加しました。  人が精霊と袂を分かった世界。  魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。  幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。  ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。  人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。  そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。  オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。

「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。 「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」 精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。 それでも生きるしかないリリアは決心する。 誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう! それなのに―…… 「麗しき私の乙女よ」 すっごい美形…。えっ精霊王!? どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!? 森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます

今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。 しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。 王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。 そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。 一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。 ※「小説家になろう」「カクヨム」から転載 ※3/8~ 改稿中

追放したんでしょ?楽しく暮らしてるのでほっといて

だましだまし
ファンタジー
私たちの未来の王子妃を影なり日向なりと支える為に存在している。 敬愛する侯爵令嬢ディボラ様の為に切磋琢磨し、鼓舞し合い、己を磨いてきた。 決して追放に備えていた訳では無いのよ?

処理中です...