上 下
61 / 86
第2章 辺境の地で快適に暮らす土の聖女

第46話 小麦を使った朝ごはん

しおりを挟む
 小麦の雪崩に襲われた後、異空間倉庫という所へ大量の小麦が収納されていった。
 一体、どういう仕組みになっているかはわからないけど、物凄く便利そうな気はする。

「あのね。さっきの小麦は、バステトさんとマヘス君をあわせて、十年分以上の食料になるわね」
「なんと! そんな事になるのか! うぅむ……しかし、とはいえ我は、あの種を生地のようには出来んのじゃ」
「とりあえず、明日ウチへ来ます? 教えてあげますよ?」
「よ、良いのか!? ……あ、ありがとう! 助かるのじゃ!」

 とはいえ、もう外が暗いので、今日はそれぞれ就寝して、明日の朝に移動しようという事になったのだけど、

「にゃー!」
「えーっと、マヘス君? お母さんの所へ帰らないの?」
「うにゃー!」

 マヘス君が私から離れてくれない。
 余程クレープが気に入ったのか、物凄く空腹だったから、恩人とでも思われているのだろうか。

「ふむ。マヘスが私以外に懐くなんて……良ければ、そちらの寝床に泊めてもらえぬか? お主をこちらへ招待したいところなのじゃが、あいにくと人間族が入れるような広さではないのじゃ」
「別に構いませんけど……」
「助かるのじゃ。という訳で、宜しく頼むのじゃ」

 バステトさんとマヘス君も一緒に石で作った小屋へ戻り、早速就寝する。
 するんだけど……あー、猫って夜行性だったわね。
 私とヴォーロスが寝ようか……という中で、マヘス君が物凄く元気で走り回る。
 暫くは遊んであげたんだけど、眠さが限界に……いつの間にかヴォーロスの上で寝ていて、その私の上にマヘス君が。マヘス君を見守るようにして、少し離れた所でバステトさんが眠っていた。

「ふふ。マヘスがこんなにも元気に走り回ったのは、いつ以来か。感謝するのじゃ」

 あ、バステトさんはジッとしているだけで起きていたのね。
 だけど、私にそう告げると猫の姿になって、マヘス君に寄り添うように……って私の上で寝るのね。
 ……モフモフなのでオッケー!
 ヴォーロスとマヘス君とバステトさん。モフモフに挟まれながら私も眠り……朝になると、さっそく電車を使って家に帰る。

「な、何と……何なのじゃ!? この動く箱は」
「電車って言って、ヴォーロスの雷魔法で動くのよ」
「電車……か。凄まじいのじゃ……って、なんじゃ!? この場所はっ!? 見た事のない物だらけなのじゃっ!」
「とりあえず、朝ごはんを作るから待っていてね」

 マヘス君も一緒に食べて大丈夫そうなものを……という事で、目玉焼きをトーストの上に乗せ、少し冷ましてから出してあげる。

「にゃー!」
「ん? まだ食べる? ちょっと待ってね」

 同じものを作っても良かったんだけど、せっかくなのでフレンチトーストを砂糖抜きで作り……あ、こっちも気に入ってくれたみたい。

「セシリアー。それは僕も食べたいなー」
「うむ。我も食べたいのだが」
「あ、ヴォーロスに、セマルグルさんまで。待ってね。すぐ作るから」

 いつの間にか来ていたセマルグルさんの分も急いで作り、朝食を終える。
 お腹がいっぱいになったマヘス君は……寝ちゃったー!
 まぁ猫だし、良いのかな?
 一日の大半を寝て過ごすイメージがあるし。

「物凄く美味だったのじゃ。これも、あの小麦から出来ておるのか?」
「他の材料も使っているけど、メインは小麦ね」
「なんと……頼む! 是非、料理というのを教えて欲しいのじゃ」
「うん。構わないわよ。まずは小麦粉作りからね」

 という訳で、バステトさんへのお料理教室が開かれる事になった。
しおりを挟む
感想 217

あなたにおすすめの小説

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?

ラララキヲ
ファンタジー
 わたくしは出来損ない。  誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。  それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。  水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。  そんなわたくしでも期待されている事がある。  それは『子を生むこと』。  血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……  政略結婚で決められた婚約者。  そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。  婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……  しかし……──  そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。  前世の記憶、前世の知識……  わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……  水魔法しか使えない出来損ない……  でも水は使える……  水……水分……液体…………  あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?  そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──   【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】 【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】 【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

追放貴族少年リュウキの成り上がり~魔力を全部奪われたけど、代わりに『闘気』を手に入れました~

さとう
ファンタジー
とある王国貴族に生まれた少年リュウキ。彼は生まれながらにして『大賢者』に匹敵する魔力を持って生まれた……が、義弟を溺愛する継母によって全ての魔力を奪われ、次期当主の座も奪われ追放されてしまう。 全てを失ったリュウキ。家も、婚約者も、母の形見すら奪われ涙する。もう生きる力もなくなり、全てを終わらせようと『龍の森』へ踏み込むと、そこにいたのは死にかけたドラゴンだった。 ドラゴンは、リュウキの境遇を憐れみ、ドラゴンしか使うことのできない『闘気』を命をかけて与えた。 これは、ドラゴンの力を得た少年リュウキが、新しい人生を歩む物語。

精霊の森に捨てられた少女が、精霊さんと一緒に人の街へ帰ってきた

アイイロモンペ
ファンタジー
 2020.9.6.完結いたしました。  2020.9.28. 追補を入れました。  2021.4. 2. 追補を追加しました。  人が精霊と袂を分かった世界。  魔力なしの忌子として瘴気の森に捨てられた幼子は、精霊が好む姿かたちをしていた。  幼子は、ターニャという名を精霊から貰い、精霊の森で精霊に愛されて育った。  ある日、ターニャは人間ある以上は、人間の世界を知るべきだと、育ての親である大精霊に言われる。  人の世の常識を知らないターニャの行動は、周囲の人々を困惑させる。  そして、魔力の強い者が人々を支配すると言う世界で、ターニャは既存の価値観を意識せずにぶち壊していく。  オーソドックスなファンタジーを心がけようと思います。読んでいただけたら嬉しいです。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ

あげは
ファンタジー
「私は、ユミエラとの婚約を破棄する!」 学院卒業記念パーティーで、婚約者である王太子アルフリードに突然婚約破棄された、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢。 家族にも愛されていなかったユミエラは、王太子に婚約破棄されたことで利用価値がなくなったとされ家を勘当されてしまう。 しかし、ユミエラに特に気にした様子はなく、むしろ喜んでいた。 これまでの生活に嫌気が差していたユミエラは、元孤児で転生者の侍女ミシェルだけを連れ、その日のうちに家を出て人のいない森の奥に向かい、森の中でカフェを開くらしい。 「さあ、ミシェル! 念願のスローライフよ! 張り切っていきましょう!」 王都を出るとなぜか国を守護している神獣が待ち構えていた。 どうやら国を捨てユミエラについてくるらしい。 こうしてユミエラは、転生者と神獣という何とも不思議なお供を連れ、優雅なスローライフを楽しむのであった。 一方、ユミエラを追放し、神獣にも見捨てられた王国は、愚かな王太子のせいで混乱に陥るのだった――。 なろう・カクヨムにも投稿

婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る

拓海のり
ファンタジー
 階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。  頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。  破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。  ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。  タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。 完結しました。ありがとうございました。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

処理中です...