35 / 86
第1章 追放された土の聖女
挿話9 ジャトランの情報を得た闇ギルドの短剣使いのコーディ
しおりを挟む
「という訳で、めちゃくちゃデカい儲け話だ。どうだい、乗らないか?」
「白金貨二十枚か……旨過ぎるな。何か裏があるんじゃないのか?」
「いや、本当なんだ。ほら、見てくれよ。前金で白金貨を二枚も貰っているからな」
本当は全部で白金貨百枚という破格過ぎる仕事だが、その二割でも十分過ぎるくらいの話だ。
あのルーファスって奴は、金の価値を知らない大馬鹿野郎の良い金蔓だぜ。
とりあえず、白金貨八十枚は俺が貰って、仮に二十枚全部をこいつにくれてやったとしても、俺は大儲けだからな。
「しかし、行き先がジャトランだろ? そいつが探している女は、とっくに死んでいるだろ」
「だから、とりあえずジャトランに行くだろ? で、女を見つけたって言って帰って来るんだ。後は、適当な女をこっちで見つけて、ジャトラン暮らしで容姿や性格が変わって事にすれば良いんだよ」
「なるほど。つまり、一日か二日か、ジャトランで生き延びるだけを考えれば良いって事か」
「そういう事だ。アンタ、確か元傭兵だろ? 俺は街専門だからな。未開の地で生きる術を持ってないんだ」
「わかった。で、白金貨二十枚の内、俺の取り分はどれくらいなんだ?」
おっと。二十枚がこいつの取り分だというつもりで話をしていたんだが……やはり額がデカすぎるからか、総額で二十枚だと思っているのか。
まぁ無理もないが。
「経費を除いた半分があんたの取り分だ。ジャトランへ渡る船代と代わりに用意する女、食糧などをもろもろ引いて、白金貨九枚があんたの手に入る。どうだ?」
「……十枚だ」
「ちっ……ちゃっかりしてんなぁ。わかった、それで良いぜ」
ふっ……そうは言っても、実際は俺が白金貨九十枚を手に入れるんだがな」
「オーケー、商談成立だ。とりあえず、俺が知っている情報を言っておくと、ブラッディ・アントっていうアリがやばいらしい」
「アリ? それの何がヤバいんだ?」
「ただのアリじゃねえ。大型犬くらいの大きさで、相手の体力を奪うバイタル・ドレインっていう闇魔法を使って来る上に、集団で襲って来るんだ」
「マジかよ。そんなのに遭遇したら、一巻の終わりじゃないか」
何でも、このアリは平地に現れるのだとか。
地面に穴があったら、十中八九こいつの巣らしいので、全力で逃げなければならないそうだ。
「じゃあ、森の中へ入った方が良いのか?」
「いや、森もヤバい。デス・トレントっていう木の魔物が居るんだが、その名の通り、即死魔法を使ってくる」
「絶対、森に近付いたらダメな奴じゃないか!」
「あと、川もヤバいぞ。グレート・トラウトっていう魚が居るんだが、こいつらは人を食う。この魚には、ワニでも近付かないそうだ」
うぇ……じゃあ、食糧は元から持って行くつもりだったが、水も現地調達は無理か。
木を切って火を点ける事も出来なさそうだし、水や薪も持っていかないといけないな。
かなりの大荷物で面倒だが、凶悪な魔物に襲われる事と比べれば全然平気だろう。
二日ほど、未開の地でキャンプをすれば白金貨九十枚だからな。
「それから極めつけが、ライトニング・ベアっていう熊の魔物だ。さっき言った凶悪な魔物たちが、尻尾を撒いて逃げる程こいつはヤバい」
「そ、そんなにヤバいのか?」
「あぁ。何と言っても、神獣と呼ばれている動物だからな。知能があって、雷魔法を使うという噂だ。出会ったら最期だから、とにかくこいつに出会わない事を祈るしかない」
改めて、とんでもない場所へ行くのだと思い知らされたが……し、白金貨の為だ。
これが終わったら、田舎へ帰って静かに暮らそう。
うん。最後の仕事にするんだ。
「白金貨二十枚か……旨過ぎるな。何か裏があるんじゃないのか?」
「いや、本当なんだ。ほら、見てくれよ。前金で白金貨を二枚も貰っているからな」
本当は全部で白金貨百枚という破格過ぎる仕事だが、その二割でも十分過ぎるくらいの話だ。
あのルーファスって奴は、金の価値を知らない大馬鹿野郎の良い金蔓だぜ。
とりあえず、白金貨八十枚は俺が貰って、仮に二十枚全部をこいつにくれてやったとしても、俺は大儲けだからな。
「しかし、行き先がジャトランだろ? そいつが探している女は、とっくに死んでいるだろ」
「だから、とりあえずジャトランに行くだろ? で、女を見つけたって言って帰って来るんだ。後は、適当な女をこっちで見つけて、ジャトラン暮らしで容姿や性格が変わって事にすれば良いんだよ」
「なるほど。つまり、一日か二日か、ジャトランで生き延びるだけを考えれば良いって事か」
「そういう事だ。アンタ、確か元傭兵だろ? 俺は街専門だからな。未開の地で生きる術を持ってないんだ」
「わかった。で、白金貨二十枚の内、俺の取り分はどれくらいなんだ?」
おっと。二十枚がこいつの取り分だというつもりで話をしていたんだが……やはり額がデカすぎるからか、総額で二十枚だと思っているのか。
まぁ無理もないが。
「経費を除いた半分があんたの取り分だ。ジャトランへ渡る船代と代わりに用意する女、食糧などをもろもろ引いて、白金貨九枚があんたの手に入る。どうだ?」
「……十枚だ」
「ちっ……ちゃっかりしてんなぁ。わかった、それで良いぜ」
ふっ……そうは言っても、実際は俺が白金貨九十枚を手に入れるんだがな」
「オーケー、商談成立だ。とりあえず、俺が知っている情報を言っておくと、ブラッディ・アントっていうアリがやばいらしい」
「アリ? それの何がヤバいんだ?」
「ただのアリじゃねえ。大型犬くらいの大きさで、相手の体力を奪うバイタル・ドレインっていう闇魔法を使って来る上に、集団で襲って来るんだ」
「マジかよ。そんなのに遭遇したら、一巻の終わりじゃないか」
何でも、このアリは平地に現れるのだとか。
地面に穴があったら、十中八九こいつの巣らしいので、全力で逃げなければならないそうだ。
「じゃあ、森の中へ入った方が良いのか?」
「いや、森もヤバい。デス・トレントっていう木の魔物が居るんだが、その名の通り、即死魔法を使ってくる」
「絶対、森に近付いたらダメな奴じゃないか!」
「あと、川もヤバいぞ。グレート・トラウトっていう魚が居るんだが、こいつらは人を食う。この魚には、ワニでも近付かないそうだ」
うぇ……じゃあ、食糧は元から持って行くつもりだったが、水も現地調達は無理か。
木を切って火を点ける事も出来なさそうだし、水や薪も持っていかないといけないな。
かなりの大荷物で面倒だが、凶悪な魔物に襲われる事と比べれば全然平気だろう。
二日ほど、未開の地でキャンプをすれば白金貨九十枚だからな。
「それから極めつけが、ライトニング・ベアっていう熊の魔物だ。さっき言った凶悪な魔物たちが、尻尾を撒いて逃げる程こいつはヤバい」
「そ、そんなにヤバいのか?」
「あぁ。何と言っても、神獣と呼ばれている動物だからな。知能があって、雷魔法を使うという噂だ。出会ったら最期だから、とにかくこいつに出会わない事を祈るしかない」
改めて、とんでもない場所へ行くのだと思い知らされたが……し、白金貨の為だ。
これが終わったら、田舎へ帰って静かに暮らそう。
うん。最後の仕事にするんだ。
69
お気に入りに追加
4,158
あなたにおすすめの小説
婚約破棄され逃げ出した転生令嬢は、最強の安住の地を夢見る
拓海のり
ファンタジー
階段から落ちて死んだ私は、神様に【救急箱】を貰って異世界に転生したけれど、前世の記憶を思い出したのが婚約破棄の現場で、私が断罪される方だった。
頼みのギフト【救急箱】から出て来るのは、使うのを躊躇うような怖い物が沢山。出会う人々はみんな訳ありで兵士に追われているし、こんな世界で私は生きて行けるのだろうか。
破滅型の転生令嬢、腹黒陰謀型の年下少年、腕の立つ元冒険者の護衛騎士、ほんわり癒し系聖女、魔獣使いの半魔、暗部一族の騎士。転生令嬢と訳ありな皆さん。
ゆるゆる異世界ファンタジー、ご都合主義満載です。
タイトル色々いじっています。他サイトにも投稿しています。
完結しました。ありがとうございました。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
スキルが農業と豊穣だったので追放されました~辺境伯令嬢はおひとり様を満喫しています~
白雪の雫
ファンタジー
「アールマティ、当主の名において穀潰しのお前を追放する!」
マッスル王国のストロング辺境伯家は【軍神】【武神】【戦神】【剣聖】【剣豪】といった戦闘に関するスキルを神より授かるからなのか、代々優れた軍人・武人を輩出してきた家柄だ。
そんな家に産まれたからなのか、ストロング家の者は【力こそ正義】と言わんばかりに見事なまでに脳筋思考の持ち主だった。
だが、この世には例外というものがある。
ストロング家の次女であるアールマティだ。
実はアールマティ、日本人として生きていた前世の記憶を持っているのだが、その事を話せば病院に送られてしまうという恐怖があるからなのか誰にも打ち明けていない。
そんなアールマティが授かったスキルは【農業】と【豊穣】
戦いに役に立たないスキルという事で、アールマティは父からストロング家追放を宣告されたのだ。
「仰せのままに」
父の言葉に頭を下げた後、屋敷を出て行こうとしているアールマティを母と兄弟姉妹、そして家令と使用人達までもが嘲笑いながら罵っている。
「食糧と食料って人間の生命活動に置いて一番大事なことなのに・・・」
脳筋に何を言っても無駄だと子供の頃から悟っていたアールマティは他国へと亡命する。
アールマティが森の奥でおひとり様を満喫している頃
ストロング領は大飢饉となっていた。
農業系のゲームをやっていた時に思い付いた話です。
主人公のスキルはゲームがベースになっているので、作物が実るのに時間を要しないし、追放された後は現代的な暮らしをしているという実にご都合主義です。
短い話という理由で色々深く考えた話ではないからツッコミどころ満載です。
婚約破棄されたので四大精霊と国を出ます
今川幸乃
ファンタジー
公爵令嬢である私シルア・アリュシオンはアドラント王国第一王子クリストフと政略婚約していたが、私だけが精霊と会話をすることが出来るのを、あろうことか悪魔と話しているという言いがかりをつけられて婚約破棄される。
しかもクリストフはアイリスという女にデレデレしている。
王宮を追い出された私だったが、地水火風を司る四大精霊も私についてきてくれたので、精霊の力を借りた私は強力な魔法を使えるようになった。
そして隣国マナライト王国の王子アルツリヒトの招待を受けた。
一方、精霊の加護を失った王国には次々と災厄が訪れるのだった。
※「小説家になろう」「カクヨム」から転載
※3/8~ 改稿中
婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。
拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。
勝手に召喚され捨てられた聖女さま。~よっしゃここから本当のセカンドライフの始まりだ!~
楠ノ木雫
ファンタジー
IT企業に勤めていた25歳独身彼氏無しの立花菫は、勝手に異世界に召喚され勝手に聖女として称えられた。確かにステータスには一応〈聖女〉と記されているのだが、しばらくして偽物扱いされ国を追放される。まぁ仕方ない、と森に移り住み神様の助けの元セカンドライフを満喫するのだった。だが、彼女を追いだした国はその日を境に天気が大荒れになり始めていき……
※他の投稿サイトにも掲載しています。
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
王女殿下は家出を計画中
ゆうゆう
ファンタジー
出来損ないと言われる第3王女様は家出して、自由を謳歌するために奮闘する
家出の計画を進めようとするうちに、過去に起きた様々な事の真実があきらかになったり、距離を置いていた家族との繋がりを再確認したりするうちに、自分の気持ちの変化にも気付いていく…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる