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第1章 追放された土の聖女
挿話3 セシリア捜索の依頼を出そうとする第二王子ルーファス
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騎士団や魔法学校を巡り、セシリアの代わりの者を探し出すという当初の考えは諦めた。
どうやらセシリアが担っていた土の聖女は、普通の者では代わりを務める事が出来ない、特別な存在だという事を思い知らされたからだ。
……しかしだ。ならばセシリアも、もっと特別感を出せば良いのだ。
うむ。地味で何をしているかが分からぬセシリアが悪い!
とはいえ、セシリアを連れ戻さなければ、王宮での俺の立場が非常に悪くなると考え……冒険者ギルドへとやってきた。
「いらっしゃいま……ルーファス王子様!? こ、このような所へ、何の御用でしょうか」
「うむ。冒険者に依頼したい事があって来たのだ。報酬は弾む故……」
「お、おまちください。一先ず、奥の個室にてお話をお伺いさせていただきます」
綺麗な受付嬢が俺を奥の部屋へと案内するのだが、ふふ……悪く無いな。
騎士団も魔法学校も、俺が幼い頃から世話になっていた為、色々とやり難いところがあった。
だが、俺様が冒険者ギルドへ来るのは初めての事だからな。
知人などは居ないはずだし、一方的に俺様の指示に従ってもらおうではないか。
「すみません。お仕事をご依頼される際は、個室にてお伺いする決まりとなっておりますので」
「そうか。まぁ良いだろう。早速、仕事の話をしたい」
そう言って、受付嬢に仕事の内容――セシリアの捜索について話す。
よく考えれば、別に俺が自分で探し出す必要はないのだ。
セシリアが戻ってくれば、全てが丸く収まるのだからな。
捜索場所や、報酬などの話をこちらから伝えた所で、受付嬢が口を開く。
「畏まりました。結論から申し上げますと、当ギルドとしては、そのご依頼はお請け致しかねます」
「な、何だと!? 何故だっ!? 何故、俺様の依頼が請けられぬのだっ! ここは冒険者ギルドであろう! 金さえ詰めば、幾らでも依頼を請ける冒険者どもが居るはずだっ!」
「はい、その通りです。ここには、ルーファス王子が提示される報酬に目がくらみ、その依頼を請けようとする者が大勢おります」
「だったら、良いではないか。俺様の依頼を受理するのだ」
受付嬢が俺好みの綺麗な顔で、胸がデカいと気を抜いていたら、突然冷や水を浴びせられたような気分にさせられる。
こいつは一体何を言っているんだ!?
報酬には糸目をつけないし、報酬が支払われるかどうかの心配をしているのであれば、俺が第二王子だという事も分かっているだろう。
王族がこういった何らかの依頼をする場合は、騎士団へ依頼するのが普通なので、冒険者ギルドとしては何としても仕事を請けたいものではないのか!?
「納得されていなさそうなのでご説明致しますが、先ず今回の捜索対象であるセシリア様という女性ですが、ルーファス様の元婚約者様だというお話でしたね?」
「その通りだ。何か問題でも?」
「はい。元恋人や元妻といった方の捜索については、痴情のもつれ、喧嘩別れの可能性がございます。具体的に例を申し上げますと、元夫による家庭内暴力から逃走した場合などで……」
「ふ、ふざけるなっ! この俺様が、そのような事をする訳がないだろうがっ!」
「あくまで、一例です。とにかく、そういった可能性があるので、セシリア様のご両親や姉妹などの血縁者からのご依頼でないと、請け難いというギルド内のルールがあります」
こ、この受付嬢はバカなのか!?
そんな事を言っている間に、セシリアに何かあったらどうするのだ。
セシリアは、あの危険な未開の地、ジャトランにいるのだぞ!?
「次に、捜索先があのジャトランだという事です」
「何か問題があるのか? 船を出せば行けるであろう」
「その船の問題です。この国では、ジャトランへ向かって良いと認められている船は、王宮が所有している船のみです。そのような船に乗れる冒険者など、まず居ませんよ」
「そ……それならば、俺様が船の手配をしようではないか。それならば問題あるまい」
そんなルールがあるとは知らなかったが、何とか冒険者を荷物に紛れ込ませ、ジャトランへ運ばせる事は出来るだろう。
この前のように金さえ握らせれば、何かと融通を利かしてくれる奴はいるからな。
「なるほど。船はルーファス様がご用意してくださると。それならば、確かに冒険者をジャトランへ送る事は出来るでしょう」
「う、うむ。では、この依頼を請けてもらえるのだな?」
「いえ。一番大きな問題ですが、あの凶悪な魔物が居ると言われるジャトランで、女性が一人で一夜を過ごせるとお思いですか? 残念ながら、既にお亡くなりになられているのがオチです。そんな場所へ、見つかりもしない人を探させに、冒険者を派遣なんてさせられませんよ」
「ぐっ……し、しかし、生きている可能性もあるではないか」
「では、ルーファス様が自ら探しに行かれてはどうでしょうか。残念ながら、今回のご依頼は冒険者ギルドとしてはお請け出来ません」
「……わかった。このギルドの責任者、ギルドマスターを呼べ!」
「ギルドマスターは本日出張で不在です。そして、次席の副ギルドマスターである私が請けられないと判断しております。どうぞ、お引き取り願います」
な……この受付嬢が副ギルドマスターだと!?
くそったれぇぇぇっ!
どうやらセシリアが担っていた土の聖女は、普通の者では代わりを務める事が出来ない、特別な存在だという事を思い知らされたからだ。
……しかしだ。ならばセシリアも、もっと特別感を出せば良いのだ。
うむ。地味で何をしているかが分からぬセシリアが悪い!
とはいえ、セシリアを連れ戻さなければ、王宮での俺の立場が非常に悪くなると考え……冒険者ギルドへとやってきた。
「いらっしゃいま……ルーファス王子様!? こ、このような所へ、何の御用でしょうか」
「うむ。冒険者に依頼したい事があって来たのだ。報酬は弾む故……」
「お、おまちください。一先ず、奥の個室にてお話をお伺いさせていただきます」
綺麗な受付嬢が俺を奥の部屋へと案内するのだが、ふふ……悪く無いな。
騎士団も魔法学校も、俺が幼い頃から世話になっていた為、色々とやり難いところがあった。
だが、俺様が冒険者ギルドへ来るのは初めての事だからな。
知人などは居ないはずだし、一方的に俺様の指示に従ってもらおうではないか。
「すみません。お仕事をご依頼される際は、個室にてお伺いする決まりとなっておりますので」
「そうか。まぁ良いだろう。早速、仕事の話をしたい」
そう言って、受付嬢に仕事の内容――セシリアの捜索について話す。
よく考えれば、別に俺が自分で探し出す必要はないのだ。
セシリアが戻ってくれば、全てが丸く収まるのだからな。
捜索場所や、報酬などの話をこちらから伝えた所で、受付嬢が口を開く。
「畏まりました。結論から申し上げますと、当ギルドとしては、そのご依頼はお請け致しかねます」
「な、何だと!? 何故だっ!? 何故、俺様の依頼が請けられぬのだっ! ここは冒険者ギルドであろう! 金さえ詰めば、幾らでも依頼を請ける冒険者どもが居るはずだっ!」
「はい、その通りです。ここには、ルーファス王子が提示される報酬に目がくらみ、その依頼を請けようとする者が大勢おります」
「だったら、良いではないか。俺様の依頼を受理するのだ」
受付嬢が俺好みの綺麗な顔で、胸がデカいと気を抜いていたら、突然冷や水を浴びせられたような気分にさせられる。
こいつは一体何を言っているんだ!?
報酬には糸目をつけないし、報酬が支払われるかどうかの心配をしているのであれば、俺が第二王子だという事も分かっているだろう。
王族がこういった何らかの依頼をする場合は、騎士団へ依頼するのが普通なので、冒険者ギルドとしては何としても仕事を請けたいものではないのか!?
「納得されていなさそうなのでご説明致しますが、先ず今回の捜索対象であるセシリア様という女性ですが、ルーファス様の元婚約者様だというお話でしたね?」
「その通りだ。何か問題でも?」
「はい。元恋人や元妻といった方の捜索については、痴情のもつれ、喧嘩別れの可能性がございます。具体的に例を申し上げますと、元夫による家庭内暴力から逃走した場合などで……」
「ふ、ふざけるなっ! この俺様が、そのような事をする訳がないだろうがっ!」
「あくまで、一例です。とにかく、そういった可能性があるので、セシリア様のご両親や姉妹などの血縁者からのご依頼でないと、請け難いというギルド内のルールがあります」
こ、この受付嬢はバカなのか!?
そんな事を言っている間に、セシリアに何かあったらどうするのだ。
セシリアは、あの危険な未開の地、ジャトランにいるのだぞ!?
「次に、捜索先があのジャトランだという事です」
「何か問題があるのか? 船を出せば行けるであろう」
「その船の問題です。この国では、ジャトランへ向かって良いと認められている船は、王宮が所有している船のみです。そのような船に乗れる冒険者など、まず居ませんよ」
「そ……それならば、俺様が船の手配をしようではないか。それならば問題あるまい」
そんなルールがあるとは知らなかったが、何とか冒険者を荷物に紛れ込ませ、ジャトランへ運ばせる事は出来るだろう。
この前のように金さえ握らせれば、何かと融通を利かしてくれる奴はいるからな。
「なるほど。船はルーファス様がご用意してくださると。それならば、確かに冒険者をジャトランへ送る事は出来るでしょう」
「う、うむ。では、この依頼を請けてもらえるのだな?」
「いえ。一番大きな問題ですが、あの凶悪な魔物が居ると言われるジャトランで、女性が一人で一夜を過ごせるとお思いですか? 残念ながら、既にお亡くなりになられているのがオチです。そんな場所へ、見つかりもしない人を探させに、冒険者を派遣なんてさせられませんよ」
「ぐっ……し、しかし、生きている可能性もあるではないか」
「では、ルーファス様が自ら探しに行かれてはどうでしょうか。残念ながら、今回のご依頼は冒険者ギルドとしてはお請け出来ません」
「……わかった。このギルドの責任者、ギルドマスターを呼べ!」
「ギルドマスターは本日出張で不在です。そして、次席の副ギルドマスターである私が請けられないと判断しております。どうぞ、お引き取り願います」
な……この受付嬢が副ギルドマスターだと!?
くそったれぇぇぇっ!
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