上 下
54 / 58
第1章 神聖魔法を極めた聖女。魔法学校へ入学する

第43話 応用部門準決勝

しおりを挟む
「アルフレッド! おめでとー!」

 ステージに向かって叫んでいると、アルフレッドがこちらを向いて手を振る。
 シェムハザ……アンタの分までしっかり応援してあげたわよ。

「ソフィア。次は君だ。控え室へ行こうか」

 どうやら次は応用部門に変わるらしく、ヴィクトール先生が呼びに来た。
 よく考えたら、準決勝が終わってすぐに決勝だと、休憩も出来ないもんね。
 他の部門を進めて、その間に休憩するのか。

「ソフィアは準決勝の第二試合だ。まぁ普通にやればソフィアなら勝てるだろう」
「いえ、慢心はダメですよ。しっかり頑張ってきます」
「……相手が可哀想だよ」

 控え室に着くと、応用部門の選手……というか、私の対戦相手が居るんだけど、ほとんどが女子生徒だ。
 やっぱり男子生徒は実践部門に出場するのかな。
 そんな事を考えていると、

「んっ!? アンタ……一年生だね? という事は、アンタが特例枠のシード選手なの?」

 上級生が話しかけてきた。

「たぶん、そうですね。なので、次がまだ二回目で、どんな勝負なのか全然分からなくて」
「……言ってくれるね。アンタ……あのロレーヌ家のバカの女なんだろ? それで、無理矢理シード扱いにしてもらったくせに」
「ロレーヌ?」
「まぁだけど、そんな手が使えるのも、ここまでだ。全校生徒の前で恥を晒すといいさ」

 んん? 確かに私は、男か女かと聞かれれば女だけど、バカの女って言われるのは、ちょっと頭にくる。
 要はこの人も、アルフレッドみたいに(仮)って言いたいのよね?
 ロレーヌっていうのも意味不明だし、絶対に勝つんだから!

「応用部門第一試合終了。それでは、第二試合に移ります」
「ふっ……アンタが恥をかく時間が来たよ。まぁせいぜい頑張りな」

 何だかよく分からないけど、凄く嫌な感じだ。
 ムカムカしながら、さっきの上級生の後について行くと、

「それでは、応用部門の第二試合を始めます。ルールは簡単。今から三分後に、ステージ上に魔法の雨を降らせます。ですので、ここにある物を自由に使い、雨に濡れないようにしてください。最も濡れた面積の少ない二人が決勝へ進みます。尚、応用部門全てに言えますが、攻撃魔法などによる、直接の妨害行為は禁止です」

 見ればステージの中央に、布とか棒とか、色んな物が置かれている。
 私を含めた四人の選手は、それを使って雨を防げば良いみたい。
 さて、どうしようかな……と考えていると、先程の上級生が少しずつ中央に寄っていて、

「それでは、第二試合開始っ!」
「はっ……ボーッとしてるんじゃないよっ!」

 猛ダッシュで物色を始めた。
 それに続いて他の二人も走って行く。
 なるほど。早い物勝ちだもんね。
 まぁでも、残り物には福があるって言うし、私は残っているもので……って、あれ? 残っているのは、小さなハンカチ一枚!?

「あはははっ! 一人につき使える物は一つだなんてルールは無かっただろ? ずぶ濡れになりなっ!」

 なるほど。確かにそんな事は言っていなかった。
 私以外の三人は何かしら持っていて、それぞれ何かしらの加工をしている。
 まぁでも、何とかなるけどね。

「時間です。コール・レイン」

 ステージの外にいる先生が何かの魔法を使った所で、

「……カウンター・マジック」

 一定時間魔法を反射する神聖魔法を使用する。
 これで絶対に濡れない……って、ちょっと待って。
 先生は、真ん中にある物を使って雨を防げって言っていた。
 このままだと、物を使って居ないって事でルール違反になっちゃうかも。
 カウンター・マジックの魔法は全身に効果があるから、ただ立っているだけでも良いんだけど、一応アイテムを使ってますアピールで、両手でハンカチを頭上にかざしてみた。

「ぷっ! そんな小さな布で何が……えっ!? どうして濡れないのよっ! くっ……アクア・ランス!」

 ステージ上だけに土砂降りの雨が降っている中で、ずっと煩い上級生が私に向かって何かの魔法を使ってきた。
 反則行為なのに……と思っている内に、その魔法が反射され、

「えっ!? 私の魔法が……やだっ! 跳ね返って……いやぁぁぁっ!」

 見た所あまり濡れていなかったのに、自らの魔法でびしょ濡れになってしまった。
 そして、魔法の雨が止み、

「試合終了です!」

 一切濡れる事なく、決勝戦へ進む事が出来た。
しおりを挟む
感想 166

あなたにおすすめの小説

聖女として豊穣スキルが備わっていたけど、伯爵に婚約破棄をされました~公爵様に救済され農地開拓を致します~

安奈
ファンタジー
「豊穣スキル」で農地を豊かにし、新鮮な農作物の収穫を可能にしていたニーア。 彼女は結婚前に、肉体関係を求められた婚約者である伯爵を拒否したという理由で婚約破棄をされてしまう。 豊穣の聖女と呼ばれていた彼女は、平民の出ではあったが領主である伯爵との婚約を誇りに思っていただけに非常に悲しんだ。 だがニーアは、幼馴染であり現在では公爵にまで上り詰めたラインハルトに求婚され、彼と共に広大な農地開拓に勤しむのだった。 婚約破棄をし、自らの領地から事実上の追放をした伯爵は彼女のスキルの恩恵が、今までどれだけの効力を得ていたのか痛感することになるが、全ては後の祭りで……。

妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~

岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。 本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。 別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい! そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。

神殿から追放された聖女 原因を作った奴には痛い目を見てもらいます!

秋鷺 照
ファンタジー
いわれのない罪で神殿を追われた聖女フェノリアが、復讐して返り咲く話。

戦地に舞い降りた真の聖女〜偽物と言われて戦場送りされましたが問題ありません、それが望みでしたから〜

黄舞
ファンタジー
 侯爵令嬢である主人公フローラは、次の聖女として王太子妃となる予定だった。しかし婚約者であるはずの王太子、ルチル王子から、聖女を偽ったとして婚約破棄され、激しい戦闘が繰り広げられている戦場に送られてしまう。ルチル王子はさらに自分の気に入った女性であるマリーゴールドこそが聖女であると言い出した。  一方のフローラは幼少から、王侯貴族のみが回復魔法の益を受けることに疑問を抱き、自ら強い奉仕の心で戦場で傷付いた兵士たちを治療したいと前々から思っていた。強い意志を秘めたまま衛生兵として部隊に所属したフローラは、そこで様々な苦難を乗り越えながら、あまねく人々を癒し、兵士たちに聖女と呼ばれていく。  配属初日に助けた瀕死の青年クロムや、フローラの指導のおかげで後にフローラに次ぐ回復魔法の使い手へと育つデイジー、他にも主人公を慕う衛生兵たちに囲まれ、フローラ個人だけではなく、衛生兵部隊として徐々に成長していく。  一方、フローラを陥れようとした王子たちや、配属先の上官たちは、自らの行いによって、その身を落としていく。

聖女の私を追放?ちょうど私も出て行こうとしていたところです

京月
恋愛
トランプ王国で聖女として働いていたリリスをあまりよく思わない王子ガドラ。リリスに濡れ衣を着せ追放を言い渡す。ガドラ「リリス、お前はこの国から追放だ!!」(ドヤ) リリス「ちょうど私もこの国を出ようとしていたところなんですよ」(ニコ) ガドラ「……え?」

似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります

秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。 そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。 「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」 聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。

婚約破棄と追放をされたので能力使って自立したいと思います

かるぼな
ファンタジー
突然、王太子に婚約破棄と追放を言い渡されたリーネ・アルソフィ。 現代日本人の『神木れいな』の記憶を持つリーネはレイナと名前を変えて生きていく事に。 一人旅に出るが周りの人間に助けられ甘やかされていく。 【拒絶と吸収】の能力で取捨選択して良いとこ取り。 癒し系統の才能が徐々に開花してとんでもない事に。 レイナの目標は自立する事なのだが……。

魔力ゼロと判明した途端、婚約破棄されて両親から勘当を言い渡されました。でも実は世界最高レベルの魔力総量だったみたいです

ひじり
恋愛
生まれつき、ノアは魔力がゼロだった。 侯爵位を授かるアルゴール家の長女として厳しく育てられてきた。 アルゴールの血筋の者は、誰もが高い魔力量を持っていたが、何故かノアだけは歳を重ねても魔力量がゼロから増えることは無く、故にノアの両親はそれをひた隠しにしてきた。 同じく侯爵位のホルストン家の嫡男モルドアとの婚約が決まるが、両親から魔力ゼロのことは絶対に伏せておくように命じられた。 しかし婚約相手に嘘を吐くことが出来なかったノアは、自分の魔力量がゼロであることをモルドアに打ち明け、受け入れてもらおうと考えた。 だが、秘密を打ち明けた途端、モルドアは冷酷に言い捨てる。 「悪いけど、きみとの婚約は破棄させてもらう」 元々、これは政略的な婚約であった。 アルゴール家は、王家との繋がりを持つホルストン家との関係を強固とする為に。 逆にホルストン家は、高い魔力を持つアルゴール家の血を欲し、地位を盤石のものとする為に。 だからこれは当然の結果だ。魔力がゼロのノアには、何の価値もない。 婚約を破棄されたことを両親に伝えると、モルドアの時と同じように冷たい視線をぶつけられ、一言。 「失せろ、この出来損ないが」 両親から勘当を言い渡されたノアだが、己の境遇に悲観はしなかった。 魔力ゼロのノアが両親にも秘密にしていた将来の夢、それは賢者になることだった。 政略結婚の呪縛から解き放たれたことに感謝し、ノアは単身、王都へと乗り込むことに。 だが、冒険者になってからも差別が続く。 魔力ゼロと知れると、誰もパーティーに入れてはくれない。ようやく入れてもらえたパーティーでは、荷物持ちとしてこき使われる始末だ。 そして冒険者になってから僅か半年、ノアはクビを宣告される。 心を折られて涙を流すノアのもとに、冒険者登録を終えたばかりのロイルが手を差し伸べ、仲間になってほしいと告げられる。 ロイルの話によると、ノアは魔力がゼロなのではなく、眠っているだけらしい。 魔力に触れることが出来るロイルの力で、ノアは自分の体の奥底に眠っていた魔力を呼び覚ます。 その日、ノアは初めて魔法を使うことが出来た。しかもその威力は通常の比ではない。 何故ならば、ノアの体に眠っている魔力の総量は、世界最高レベルのものだったから。 これは、魔力ゼロの出来損ないと呼ばれた女賢者ノアと、元王族の魔眼使いロイルが紡ぐ、少し過激な恋物語である。

処理中です...