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第1章 神聖魔法を極めた聖女。魔法学校へ入学する

第36話 錬金魔法を使った使い魔のご飯

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 ヴィクトール先生に錬金魔法で使い魔のご飯を作っても大丈夫だと教えてもらったので、寮へ戻って早速実践する事にした。
 材料は、前に貰った野菜の切れ端などの残りと、さっきヴィクトール先生が貰ってきてくれた物。
 合わせればそれなりの量になるので、先ずは傷んだ場所などの食べない方が良い場所を取り除く。

「……錬金魔法の練習を兼ねてやってみたけど、これって手で取っても良い気がしてきた。……でも、魔法を使うメリットを考えると、こういう事かな?」

 目で傷んだ箇所を確認しながら、いくつかの野菜から食べられなさそうな所を取り除いた所で、食べられるか食べられないかのギリギリを攻められないかと考える。
 ポテトの芽みたいに分かり易い物は良いとして、例えばこのブロッコリーの一番小さな粒々……ツボミ? の単位で痛んでいる箇所を除去出来ないだろうかと。

「……目で確認していたら、見落としとかもあるだろうし、そもそも沢山の野菜をチェックするのは大変だもんね」

 でも、痛んでいるとか、食べられない……って、目視による経験や知識での除去以外にどうすれば良いんだろ?
 例えばバナナなんて、少しくらい色が変色していても食べられたりするし、でも一方で見た目はあまり変化がなくても、臭い的に食べ無い方が良さそうだっていう事もある。
 錬金魔法でそれらを何とかしようとすると、野菜から要素を抽出する際に、どういう条件で除去するかが、野菜やその状態毎に違うから凄く難しい。
 暫くどうするか悩み、

「……そうだ! そもそもポテトの芽とか、腐ったり痛んだりした食べ物って、要は食べた人のお腹を痛くしたり、体調を悪くしたりと、程度は違うけど毒状態にするわよね? という事は……キュア・ポイズン!」

 毒を治療する神聖魔法を野菜に使ってみた。

「やったぁ! 思った通りね。解毒魔法を使えば、食べられない箇所だけが一気に除去されたから、あとは錬金魔法で野菜を栄養素に変えて、シロが食べ易い形に再構築……出来たっ!」

 箱に入った野菜の切れ端を、小指の先くらいのサイズにした大量のペレットに錬金魔法で変える事に成功した。
 これでシロのご飯問題は解決ね。

「シロー! お待たせ。ご飯だよー」

 出来立てのペレットを美味しそうに食べるシロを眺めつつ、時々背中を撫でてモフモフ感を楽しんでいると、ふと思う。
 ……そういえば、もう一人? 使い魔が居た気がするんだけど、食事とかってどうしているんだろう。
 一応、自称天使だし、勝手にダンジョンから学校へ侵入してくるくらいだから、食事くらい自分で何とかしているよね?
 というか、本当に天使なんだったら、そもそも食事を必要としないのかもしれないし。……流石に天使の生態なんて知らないけどさ。

「シロ、ちょーっと出掛けてくるけど、すぐに帰って来るから待っていてね」
「はーい!」

 ……今、シロが返事をした!?
 いやいや、そんな訳は無い。
 使い慣れない錬金魔法に集中し過ぎて、幻聴を聞いてしまったのだろう。
 沢山作ったペレットを幾つか手にすると、四角い形から、薄い円……クッキーみたいな形にして、包んであげる。
 あの変態を部屋に呼ぶのは凄く嫌なので、一旦学校へ戻ると、夕暮れで人気のないグラウンドの端へ行き、

「サモン! シェムハザ」

 召喚魔法を使用した。

「ソフィアちゃーんっ! 俺に会いたくなって呼んでくれたのかな? でも、安心して。実はあと少しでダンジョンから地上へ出る所だったんだよ! だけど、こうしてソフィアちゃんから呼び出してくれるなんて……感激さっ!」

 ……若干、こんな奴の心配をしてしまった事を後悔しつつ、折角なので、作った野菜クッキー風ペレットをシェムハザに渡す。

「ソフィアちゃん。これは?」
「貴方がお腹を空かせていないかと思って、一応クッキーみたいなのを作ったんだけど……要らなかった?」
「ううん、要る要るっ! いやー、こんな俺の事を気遣ってくれるなんて、流石ソフィアちゃん! マジ天使! だから俺と結婚……」
「リターン!」
「ソフィアちゃぁぁぁんっ!」

 クッキーもどき数枚分しかなかったけど、血色も良かったし、やっぱり自分で食事は何とかしているみたいね。
 とりあえず、学校で不審者扱いされる前に天界へ戻せた事に満足し、再びシロをモフモフする事にした。
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