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第1章 神聖魔法を極めた聖女。魔法学校へ入学する

第25話 堕天使シェムハザ

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「ソフィアさん。契約魔法を使ったみたいですけど……魔物は先に弱らせないとダメだと教えましたよね?」

 やれやれ……といった感じで第一層に居た先生が降りて来て、

「やぁ、マダム。俺の可憐なご主人様はソフィアちゃんって言うんだね。どうも、ありがとう」
「ご、ご主人様!? 一年生が無戦闘でこんなに大きな魔物を……というか、喋っている!? いや、そもそも、魔物なの!? どうして、第二層にこんな魔物が!?」

 私の使い魔となったシェムハザに話しかけられ、混乱してしまった。

「あっはっは。マダム、落ち着いて。とりあえず、ソフィアちゃんみたいに可愛い女の子を紹介してくれない?」
「アンタは黙ってて。何よ、愛の使者って」
「その名の通りだよ、ソフィアちゃん。俺は可愛い女の子を探し求めて天界から降りて来た、愛の天使だからね」

 愛の天使……って、確かに翼はあるけど、真っ黒じゃない。
 というか、どこからどう見ても天使には見えないし、そもそも邪悪な気配が漏れてるんだからっ!

「はいはい。で、先ずは先生の質問に答えて。貴方は何者なの? 魔物じゃないの?」
「魔物では無いと思うよ。あ! でも、夜は狼になるから、魔物……かな?」
「なるほど。夜になったら狼に変身するって事だし、言語も理解しているから、魔物というより獣人なのね」
「いや、言葉通りに捉えられても困るんだけど……そんなソフィアちゃんも可愛いから良しっ!」

 そう言いながら、シェムハザが私の肩に触れようとして……何か熱い物に触れたかのように、慌てて手を引っ込めた。

「なっ……この俺を弾く程の魔力を纏っているだと!? これじゃあ……これじゃあ、その綺麗な肌に触れられないじゃないか」
「……あの、ソフィアさん。これ……一体何ですか?」
「えっと、それは私が聞きたいくらいなんですけど」

 何がしたいのかは分からないけど、私に触れようとして、でも触る事が出来ずに、悔しがって……うーん、このシェムハザっていう人? 本当によく分からないんだけど。

「とりあえず、アンタはどうしてこんな所に居るのよ。ここは、学校の中なのよ!? しかも、ダンジョンの第二層は、弱い魔物しか普通は居ないらしいじゃない」
「だから俺は魔物じゃないってば。さっきも言ったけど、天使だってば」
「……じゃあ、百歩譲って天使だとしても、貴方は堕天使よね。邪悪なが溢れ出ているし」
「堕天使っていうのは酷いなぁ。けどまぁ、外れてはいないかな。だって俺は……天界から地上を見ていて、余りにも人間の女の子が可愛いから、奥さんにしようと思って降り立った訳だからね。だけど、天界から地上には普通には降りられない。魔力の高い場所じゃないとダメだったんだけど、物凄く険しい山の頂上だとか、海底洞窟だとか……ってバカなの!? どうして、そんな人が居ない所ばかり、魔力が高いのさっ!」
「いや、そんなの知らないわよ」
「それで、やっとの思いで見つけたのが、この場所だよ。このダンジョンの地下深くは魔力が高くて、しかも地上には若い女の子が沢山居る。変に騒ぎを起こさないように、姿を消して少しずつ上の層へ移動してきて、ようやくあと少しで地上っていう所で……素敵なご主人様を見つけたんだっ!」

 えっと……使い魔だから、言葉の真偽が分かるのかしら?
 シェムハザの話す言葉が、嘘ではないような気がする。……気がするんだけど、物凄く胡散臭い上に、地上へ可愛い女の子を探しに来たって、どうなのよっ!

「……先生。どうしましょう」

 物凄く困ったので、先生に助けを求めると、

「と、とりあえず、使い魔と契約を結ぶ授業としては、終了です。このまま今日は帰っても良いですし、このまま別の使い魔を探してみても……」
「あ! じゃあ、別の使い魔にします」
「おぉぃっ! それは困るよソフィアちゃん! せっかく使い魔となる契約を結んだんだから、このまま学校へ連れて行ってよ! 俺、天使だし、大抵の事は出来るから、便利だぜっ!」

 慌てた様子でシェムハザがアピールしてくる。

「じゃあ、例えば何が出来るの?」
「そうだね。例えば、透視! 何故かソフィアちゃんの服は無理だけど、女の子の裸が覗けるんだ。それから、念視とか。目に映った視界の様子を、鮮明にそっくりそのまま紙に写し描く事が出来るんだ。透視と組み合わせれば、女の子の裸とかを鮮明に……」
「……リターン」
「ちょっ! それ、召喚魔法の一つだよね!? 元の世界へ使い魔を送るっていう……あぁぁぁソフィアちゃーんっ!」
「先生。別の魔物を使い魔にしたいです」

 一先ず、シェムハザを放置すると危険な感じがしたので、リュカのドラゴみたいに、使い魔として契約したまま、別世界へ送っておく事にした。
 ……再び呼び出すかどうかは、分からないけどね。
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