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第1章 神聖魔法を極めた聖女。魔法学校へ入学する
第19話 エントリー
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「では、以上でホームルームを終わります」
魔法学校の三日目は、特にこれと言って特筆すべき事なく終了した。
強いて挙げるとすれば、一般教養という、魔法には直接関係の無い授業があって、その先生が理解不能な事を話していた……という事くらいだろうか。
……何よ。人間が猿から進化したって。
神様がこの世界を作られた際に、人間をお作りになられたというのに、神様に失礼よっ!
先生の言葉を思い出し、少しイラっとしていると、
「待つのだ。他の教師から聞いたが、魔法大会とは何なのだ?」
マルクが教室を出ようとしていた先生を呼び戻す。
そう言えば、いずれ案内があるだろうと思っていて……そのまま忘れちゃっていたよ。
心の中でマルクに感謝しつつ、先生の話を待っていると、
「通常、一年生には案内しないのですが……その名の通り、国内の魔法学校で、魔法の腕を競い合う大会です。応用部門、実戦部門、総合部門の三つがあり、部門毎に三名ずつ、合計九名が学校の代表としてエントリー可能で、先ずは学内の代表を決める選抜大会があります」
少し困りながらも、ヴィクトール先生が説明を始める。
「どの部門もその名の通りですが、応用部門は与えられたお題を魔法でクリアする……魔法の応用力を競い合うもので、純粋に魔法の技術のみが求められます。実戦部門は魔法を用いた戦闘を行い、強ければ何でもありです。そして総合部門は、両部門を複合した魔法の実力が求められます」
要は魔法の技術、魔法での戦闘力、総合力を競うのね。
だったら私は応用部門かな。
悪魔や不死系を相手にするならともかく、私は人と争うような魔法は使えないもの。
「なるほどな。しかし……どうして、案内しなかったのだ? 他の教師は一年でも出場可能と言っておったぞ?」
「あー……私の立場からは非常に言い難いのですが、今年の一年生は例年よりも優秀で、エントリーしたら、三年生を差し置いて、ぶっちぎりで優勝してしまいそうで……」
「ふっ……よく分かっているではないか。確かにオールラウンダーな俺様が出場すると、先に入学した者たちの面子を潰してしまうな。だが、そこは弱肉強食。力を持たぬ者が悪いのだ。……うむ。我は総合部門にエントリーしてやろう。エントリーするには、どうすれば良いのだ?」
「あ、マルク様は止めておいた方が……いえ、では後日エントリー用紙を持って来ますので、先ずは学内の選抜大会を勝ち進んで下さい」
そう言って、今度こそヴィクトール先生が教室を出て行った。
けど、出ようと決めたものの、魔法の応用力って、どんな事を求められるんだろう。
過去の大会内容とかを調べられないかな? と考えていると、
「ソフィア……ちょっといいか」
アルフレッドに声を掛けられた。
何やら真剣な表情で、少し緊張しているようにも見えるけど、どうしたんだろう。
「今日も魔法の勉強? 私は構わないけど」
「それもあるが、その前にこれを見てくれ。俺からのプレゼントだ」
そう言って、アルフレッドが鞄の中から、綺麗にラッピングされた箱を取り出す。
「プレゼント? 私に? 何かしら……って、何これ?」
「うちの家のメイド服だ。ソフィアによく似合うと思って、持って来たんだ」
えーっと、これは昨日のメイドになれって言う話の続きなの?
プレゼントと聞いて、少しワクワクしてしまった気持ちを返して欲しい。
というか、もしかして……冗談だと思っていたけど、メイドになれって、アルフレッドは本気で言っていたの!?
「良ければ、着てみないか。きっとソフィアに良く似合うと思うんだ」
「着ないわよっ!」
「何故だっ!? うちのメイド服は細部にまで拘り、上質な生地を使い、可愛らしさと機能性を兼ね備える優れたデザインだと、実際に働くメイドたちからも好評なのにっ!」
「なんの話よっ! メイド服のデザインが気に入らないから、着ないって言っているわけじゃないのよっ!」
「そうなのか!? つまり、デザインはソフィアも認めるという事だな? だとしたら……色か? これは白と黒を基調としているが、ピンクや水色ならどうだ?」
どうしよう。
全く話が通じないので、どうすれば良いだろうかと考えていると、
「ソフィアさん。今日も魔法を教えて貰っても、良いですか?」
テオドールが教室に入って来た。
もちろん構わないと伝えると、
「ソフィアさん。魔法を教えてもらっているお礼……っていう程の物でも無いのでですが、母がクッキーを焼いてくれたので、どうぞ」
可愛いく包まれた、美味しそうなクッキーをくれた。
「ありがとう……美味しいっ!」
「喜んでもらえて良かったです。……ところで、この服は一体何ですか?」
「くっ……そうか。食べ物……食べ物が良いんだな」
テオドールの問いに、アルフレッドが小声で何か呟いていたけど、よく聞き取れなかった。
何となく嫌な予感がしつつ、今日も魔法の自主練習を行う事にした。
魔法学校の三日目は、特にこれと言って特筆すべき事なく終了した。
強いて挙げるとすれば、一般教養という、魔法には直接関係の無い授業があって、その先生が理解不能な事を話していた……という事くらいだろうか。
……何よ。人間が猿から進化したって。
神様がこの世界を作られた際に、人間をお作りになられたというのに、神様に失礼よっ!
先生の言葉を思い出し、少しイラっとしていると、
「待つのだ。他の教師から聞いたが、魔法大会とは何なのだ?」
マルクが教室を出ようとしていた先生を呼び戻す。
そう言えば、いずれ案内があるだろうと思っていて……そのまま忘れちゃっていたよ。
心の中でマルクに感謝しつつ、先生の話を待っていると、
「通常、一年生には案内しないのですが……その名の通り、国内の魔法学校で、魔法の腕を競い合う大会です。応用部門、実戦部門、総合部門の三つがあり、部門毎に三名ずつ、合計九名が学校の代表としてエントリー可能で、先ずは学内の代表を決める選抜大会があります」
少し困りながらも、ヴィクトール先生が説明を始める。
「どの部門もその名の通りですが、応用部門は与えられたお題を魔法でクリアする……魔法の応用力を競い合うもので、純粋に魔法の技術のみが求められます。実戦部門は魔法を用いた戦闘を行い、強ければ何でもありです。そして総合部門は、両部門を複合した魔法の実力が求められます」
要は魔法の技術、魔法での戦闘力、総合力を競うのね。
だったら私は応用部門かな。
悪魔や不死系を相手にするならともかく、私は人と争うような魔法は使えないもの。
「なるほどな。しかし……どうして、案内しなかったのだ? 他の教師は一年でも出場可能と言っておったぞ?」
「あー……私の立場からは非常に言い難いのですが、今年の一年生は例年よりも優秀で、エントリーしたら、三年生を差し置いて、ぶっちぎりで優勝してしまいそうで……」
「ふっ……よく分かっているではないか。確かにオールラウンダーな俺様が出場すると、先に入学した者たちの面子を潰してしまうな。だが、そこは弱肉強食。力を持たぬ者が悪いのだ。……うむ。我は総合部門にエントリーしてやろう。エントリーするには、どうすれば良いのだ?」
「あ、マルク様は止めておいた方が……いえ、では後日エントリー用紙を持って来ますので、先ずは学内の選抜大会を勝ち進んで下さい」
そう言って、今度こそヴィクトール先生が教室を出て行った。
けど、出ようと決めたものの、魔法の応用力って、どんな事を求められるんだろう。
過去の大会内容とかを調べられないかな? と考えていると、
「ソフィア……ちょっといいか」
アルフレッドに声を掛けられた。
何やら真剣な表情で、少し緊張しているようにも見えるけど、どうしたんだろう。
「今日も魔法の勉強? 私は構わないけど」
「それもあるが、その前にこれを見てくれ。俺からのプレゼントだ」
そう言って、アルフレッドが鞄の中から、綺麗にラッピングされた箱を取り出す。
「プレゼント? 私に? 何かしら……って、何これ?」
「うちの家のメイド服だ。ソフィアによく似合うと思って、持って来たんだ」
えーっと、これは昨日のメイドになれって言う話の続きなの?
プレゼントと聞いて、少しワクワクしてしまった気持ちを返して欲しい。
というか、もしかして……冗談だと思っていたけど、メイドになれって、アルフレッドは本気で言っていたの!?
「良ければ、着てみないか。きっとソフィアに良く似合うと思うんだ」
「着ないわよっ!」
「何故だっ!? うちのメイド服は細部にまで拘り、上質な生地を使い、可愛らしさと機能性を兼ね備える優れたデザインだと、実際に働くメイドたちからも好評なのにっ!」
「なんの話よっ! メイド服のデザインが気に入らないから、着ないって言っているわけじゃないのよっ!」
「そうなのか!? つまり、デザインはソフィアも認めるという事だな? だとしたら……色か? これは白と黒を基調としているが、ピンクや水色ならどうだ?」
どうしよう。
全く話が通じないので、どうすれば良いだろうかと考えていると、
「ソフィアさん。今日も魔法を教えて貰っても、良いですか?」
テオドールが教室に入って来た。
もちろん構わないと伝えると、
「ソフィアさん。魔法を教えてもらっているお礼……っていう程の物でも無いのでですが、母がクッキーを焼いてくれたので、どうぞ」
可愛いく包まれた、美味しそうなクッキーをくれた。
「ありがとう……美味しいっ!」
「喜んでもらえて良かったです。……ところで、この服は一体何ですか?」
「くっ……そうか。食べ物……食べ物が良いんだな」
テオドールの問いに、アルフレッドが小声で何か呟いていたけど、よく聞き取れなかった。
何となく嫌な予感がしつつ、今日も魔法の自主練習を行う事にした。
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