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第1章 神聖魔法を極めた聖女。魔法学校へ入学する

挿話5 どうしても勝ちたいマルク=ロレーヌ

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「くっ……何故だ!? どうして今日は調子が悪いのだ!?」

 攻撃魔法の射程対決は、イカサマ女、無口、パワー馬鹿、そして俺……という順位になった。
 俺が最下位だと!?
 こんな事、有り得ん!
 アルフレッドは再びまぐれを起こしたし、何よりあのイカサマ女の魔法は何なんだ!?
 どうして炎が白いのだ!?
 しかも、あの白い炎はヤバい。
 昨日買ったばかりで、宮廷魔術士の魔法でも壊れなかった魔法装置を破壊する程の威力だ。
 一体どんなイカサマをしているのだ!?

「……じゃあ、これで終わりだよね」
「待てと言っているだろうが。最後の勝負、攻撃魔法の発動速度対決だ。戦闘時において、如何に先手を取るか……これは非常に重要である。そこで、攻撃魔法の発動速度を競おうという話だ」

 一先ず頭を切り替え、最後の対決の説明を始める。
 これは非常にシンプルで、いつ鳴るか分からないアラームをセットし、鳴ってから魔法を発動させた早さを競うという物だ。
 魔法の発動には精神を集中させなければならないが、いつまでも集中し続ける事は不可能。
 アラームが鳴ってから即座に精神集中を行い、魔法を発動させる……という内容なのだが、この勝負は必ず俺が勝つ事になっている。
 というのも、アラームはいつ鳴るか分からないと説明するが、実際は俺のポケットに仕込んだボタンを押してから五秒後に鳴るからな。
 様子を見て、こいつらが気を抜いた所で俺が集中し始め、そしてボタンを押せば……確実に俺が勝つ!

「……という対決方法だが、何か質問はあるか?」
「要は、そのアラームが鳴ってから魔法を放てば良いんだよな? 鳴るまでは何をしていれば良いんだ?」
「好きにすれば良い。特にこれと言って指定はない」
「そうか。分かった」
「他の者も良いな? ……では、アラームをセットするぞ。いつ鳴るかは分からないからな……スタート!」

 ふっふっふ。いつ鳴るか分からないというのに、パワー馬鹿のアルフレッドは、今から集中しているではないか。
 アルフレッドの集中力が切れた所でボタンを押してやろう。
 後の二人は……

「って、おい。お前、やる気はあるのか?」
「……え? 最初から無いよ。けど、アラームが鳴ったら魔法を使えば良いんでしょ?」
「ま、まぁそうだが」

 無口の男が、退屈そうに寝転び始めた。
 そのまま眠りに落ちるまで待ってやろうか。

「で? そっちはそっちで何をしているんだ?」
「私? せっかくヴィクトール先生が居るし、錬金魔法を教わっているんだけど?」
「……言っておくが、勝負の判定は攻撃魔法だからな?」
「えぇ、分かっているわ。……あ、先生。今の物質の抽出って、どうやったんですか?」

 イカサマ女は教師から個人授業を受け……って、別の魔法を使っている時にボタンを押してやろう。
 ……とりあえず、アルフレッドの集中力が切れるまで待つか。後の二人は、あまり気にしなくても良いだろう。
 そう考え、俺はこの対決の為に用意させておいたテーブルセットに腰掛け、紅茶を飲みつつ、さり気なくアルフレッドの様子を伺う。

……

 って、もう十分近く経っているというのに、アイツの集中力はどうなっているんだ!?
 どうして、こんなにも長い時間集中し続けられるのだっ!?
 無口男は完全に寝ている気がするし、イカサマ女は、

「おぉ……流石はソフィア。もう物質から元素の抽出が出来るようになったのですね。……ちょっと怖いくらいに魔法の才能がありますね」

 いつの間にか錬金魔法が上達していた。
 たった十分だぞ!? 十分で錬金魔法の抽出まで出来る様になっただと!?
 俺は錬金魔法を何歳の頃から練習し始めたと思っているんだ!
 抽出が出来るようになるまで、血の滲むような努力をしたというのにっ!
 思わず手に力が入り……あ、ボタンを押してしまった!
 マズい! 五秒後にアラームが鳴る! 急いで集中しなければっ!

――ジリリリリ……

「ディバイン・レイ」
「ファイアーボール」
「フリーズ・ブリッド」
「……ファイアーボール」

 それぞれが魔法を放ち、

「今のは、ソフィア、アルフレッド、リュカ、マルク様……の順ですね」

 教師が順番を告げる。

「ソフィアは凄いな。負けるとは思って無かったぞ」
「あー、今のは良く使っていた魔法だから。いろいろ有って、いつどこから現れるか分からない悪魔を退治……」
「げふんげふんげふんっ! では、これにて終了ですねっ! さぁ教室へ戻りましょう!」

 何故だ……どうしてこうなったぁぁぁっ!
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