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第1章 神聖魔法を極めた聖女。魔法学校へ入学する

第13話 遠距離魔法?

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「ソフィア、凄いな。まさか、測定不能を通り越して、装置自体を壊してしまう程とはな」

 アルフレッドが、やるじゃないかと、褒めてくれるんだけど、私としてはそれどころではない。
 マルクが用意したという、大きな水晶を使った魔法装置を壊してしまったのだ。
 いくらマルクから持ち掛けられた話だとはいえ、何だか凄く高価な物らしいし、弁償しろと言われたら……どうしよう。
 内心ビクビクしながら様子を伺っていると、

「こ、これは……装置が元から壊れていたのだ! そうだ、そうに違いない! よくよく考えてみれば、アルフレッドの数値からおかしかったしな。俺の数値を越えられる訳がないのだ!」

 マルクが自ら、元から装置が壊れていたと説明してくれた。
 良かった。元から壊れていたのなら、私が弁償する必要なんてないものね。
 一人でホッと胸を撫で下ろしていると、

「なんだ。その装置は壊れていたのか。もしも、ソフィアが装置を弁償しなければならないのなら、立て替えてやる代わりに、俺のメイドになってもらおうと思ったのに」

 アルフレッドが恐ろしい事を言い出す。
 やめてっ! マルクの頬が引きつっているから!
 きっとあれは最初から壊れてなんていなくて……いや、藪蛇だから触れないでおこう。

「アンタ……どれだけメイドが好きなのよ」
「え? メイドというか……いやまぁ、そう……だな。まぁ何にせよ、最初から壊れていたのだから、今となっては関係の無い話だがな。なぁ、マルク?」
「そ、そう……だ。さ、最初から壊れていたのだからな。は、はははは……」

 とりあえず話題を変えようとしたものの、結局元の話に。
 装置が壊れていて、魔法対決が出来ないからか、マルクががっくりと肩を落としている。
 そんなに落ち込む程、魔法の対決がしたかったのよね。
 決して、高価な装置が壊れたから気を落としている訳ではないわよね?
 え、えーっと、目的はよく分からないけど、凄くやる気があるのは、よ……良い事ね。

「……ねぇ。じゃあ、もう終わりって事で良いかな? 僕は普通の授業が受けたいんだけど」
「ま、待て! まだだ。攻撃魔法の威力対決は、全員ドローとなってしまったから、次は攻撃魔法の射程対決だ! これなら装置の故障などは有り得ないし、結果も一目瞭然だからな」

 面倒臭そうしているリュカに、マルクが必死で説明し、今度は全員でグラウンドへ移動する。

「ふ、ふははははっ! この広いグラウンドに、真っ直ぐ等間隔となるように丸太を立てさせた。その丸太を、この位置から攻撃魔法を放ち、何本目まで倒せるかで勝負するという訳だ」
「倒す……って事は、今回は風魔法限定って事?」
「いや、攻撃魔法であれば、何でも良い。ただし、最低丸太を倒すなり壊すなり出来るほどの、威力を持っている事が条件だ」

 なるほどねー。
 まぁせっかく何本も丸太を並べてくれた訳だし、付き合ってあげますか。
 ……とはいえ、並べたのはマルクじゃなくて、その家で働く人たちだろうけど。

「おい。さっきは、オレが最初だったから、今度はお前からやれ」
「……私? まぁ構わないけど」

 とはいえ、広いグラウンドの端まで丸太が置いてあるものの、直線系の魔法だと、グラウンドを越えて、無関係の建物に攻撃魔法を当ててしまいかねない。
 聖女の頃に広範囲を浄化する時は、悪魔や不死だけ滅ぼす魔法を多用していたから気にしていなかったけど、なるほど……単純に射程を競わせると見せかけて、実は高度な魔法のコントロールと精度が求められているのね。
 中々考えられているじゃない。
 暫し考え、先程使った白い炎を出す魔法をコントロールして、一番奥の丸太だけ燃やした。

「ふぅ。この魔法は近距離でしか使った事がなかったから心配だったけど、中距離でも上手く出来たわね」
「え、ソフィア。あれを中距離っていうの? 僕は錬金魔法が専門だから、手元でしか魔法を発動させないけど、あれは魔法的には遠距離だと思うんだけど」
「そうなんですか? でも、攻撃魔法に限らなければ、殆ど距離なんて関係ないですよ? 例えばテレポー……」
「げふんげふんげふんげふん! はい、次ぃぃぃっ!」

 何故か、ヴィクトール先生が慌てて他の人を促した。
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