めでたく婚約破棄で教会を追放されたので、神聖魔法に続いて魔法学校で錬金魔法も極めます。……やっぱりバカ王子は要らない? 返品はお断りします!

向原 行人

文字の大きさ
上 下
15 / 58
第1章 神聖魔法を極めた聖女。魔法学校へ入学する

第11話 Sクラス魔法対決

しおりを挟む
 日が昇る前の、まだ薄暗い朝。
 新しい自室となった、寮のベッドで起床すると、いつもの様に神様へお祈りを捧げ……って、しまった。また、やってしまった。
 バカ王子とシャルロットに教会を追い出され、早数日が過ぎているというのに、数年間続いた習慣だからか、未だに起床と共にお祈りを捧げてしまう。

「……シャルロットは、ちゃんと毎朝お祈りをしているのかしら」

 大昔の聖女が、一日お祈りをしなかった事があったらしく、その時は国に災いが起こった……などという言い伝えがある。
 本来この世界は酷い状態にあるのだけど、聖女が神に祈りを捧げる事によって、神が人々に安らぎを与えてくれているのだ。
 具体的に何が起こるのかは知らないけれど、聖女と呼ばれる者の祈りは特別らしく、絶対に欠いてはいけない……それが教会の教えだった。
 シャルロットは朝が弱かった気がする……と、今更ながらに思い出しながら、準備を済ませて、学校へ。

……

「では、これで朝のホームルームを終わります」

 今日もクラスメイトの一人が欠席だという話以外は、特に何もないホームルームが終わった所で、

「ふははははっ! 皆の者、俺様から一つ提案がある! せっかくSクラスという、魔法学校の成績トップの者たちが集まっているのだ。この中での順位を明確にしたいとは思わぬか!?」

 いきなりバカ……もといマルクが意味不明な事を言い出した。

「マルクく……様。やめておいた方が良いと思いますよ。それに、学校側としては、入学試験でハッキリと分かっていますし」
「ふふ……だが、その学校側が付けた順位は本当に妥当なものなのか? そこれは、純粋な魔法の実力以外の順位付けがなされているのではないのか?」
「……だからこそ、やめておいた方が……」
「そこでだ。俺様が正しい順位を決める為の方法を考えて来た。これを、ここに居る生徒四人で行おうではないか」

 マルクがどこからともなく大きな巻物を取り出し、それを広げると、三つ何かが書かれている。
 一応読んでみると、「攻撃魔法の射程測定」、「攻撃魔法の発動速度測定」、「攻撃魔法の威力測定」……って、全部攻撃魔法なのね。

「俺は面倒臭いからパス」
「……興味ない」
「やりたければ、お一人でどうぞ」

 アルフレッド、リュカ、私……と、全員が拒否すると、

「ふはははは……やはりな。これで明らかになった。剣聖の息子と名高いアルフレッドは、魔法が使えないのであろう。だが、父親の威光だけで入学し、かつSクラスに入ったのだな!」
「お前なぁ。言っておくが、この学校へ入学したのは俺の意志だ。親父は関係無いどころか、入学には反対されたんだが」
「そして、平民の女。お前は魔法を使っておらず、何かイカサマをしているのであろう! だから、このようなシンプルな魔法勝負には参加出来ないのだ!」

 アルフレッドと私に何やら文句をつけて来た。

「あの……昨日一緒に授業を受けたでしょ? あと、私は攻撃魔法っていうのは得意じゃないから。入学試験の実技だって、神……」
「げふんげふんげふん!」
「……えーっと、攻撃魔法は使っていないわ」

 ヴィクトール先生……どうして神聖魔法を使えるって言っちゃダメなのかしら。
 すっかり忘れていたけど、昨日の自主勉強会の時に聞いておけば良かった。

「ふっ……ついに馬脚を露わしたな! 攻撃魔法を使っていないという事は、該当する魔法は錬金魔法か召喚魔法となるが、お前は昨日、どちらも使った事が無いと言っていたではないか!」
「その通りだけど?」
「つまりお前は、普段から虚言癖があるという事だ! ならば、光魔法を使ったというのも嘘で、何かしらの仕掛けがあると考えるのが妥当であろう」

 えぇ……神聖魔法の存在は完全に除外されているのね。
 攻撃魔法ではないけど、悪魔を倒した退魔魔法を昨日目の前で使っているのに。

「という訳で、本日の錬金魔法の授業時間をいただきたい。構わんだろう?」
「……僕は止めましたからね?」
「ふははははっ! 学校側としては真の順位が公になると不味いのかもしれぬが、安心するが良い。あくまで、このSクラスでの順位だ。この結果を使って学校へ何かをしようという訳ではないからな」

 ヴィクトール先生がマルクの権力? の前に折れてしまい、よく分からない順位付けをする事になってしまった。
しおりを挟む
感想 166

あなたにおすすめの小説

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません

との
恋愛
第17回恋愛大賞、12位ありがとうございました。そして、奨励賞まで⋯⋯応援してくださった方々皆様に心からの感謝を🤗 「貴様とは婚約破棄だ!」⋯⋯な〜んて、聞き飽きたぁぁ! あちこちでよく見かける『使い古された感のある婚約破棄』騒動が、目の前ではじまったけど、勘違いも甚だしい王子に笑いが止まらない。 断罪劇? いや、珍喜劇だね。 魔力持ちが産まれなくて危機感を募らせた王国から、多くの魔法士が産まれ続ける聖王国にお願いレターが届いて⋯⋯。 留学生として王国にやって来た『婚約者候補』チームのリーダーをしているのは、私ロクサーナ・バーラム。 私はただの引率者で、本当の任務は別だからね。婚約者でも候補でもないのに、珍喜劇の中心人物になってるのは何で? 治癒魔法の使える女性を婚約者にしたい? 隣にいるレベッカはささくれを治せればラッキーな治癒魔法しか使えないけど良いのかな? 聖女に聖女見習い、魔法士に魔法士見習い。私達は国内だけでなく、魔法で外貨も稼いでいる⋯⋯国でも稼ぎ頭の集団です。 我が国で言う聖女って職種だからね、清廉潔白、献身⋯⋯いやいや、ないわ〜。だって魔物の討伐とか行くし? 殺るし? 面倒事はお断りして、さっさと帰るぞぉぉ。 訳あって、『期間限定銭ゲバ聖女⋯⋯ちょくちょく戦闘狂』やってます。いつもそばにいる子達をモフモフ出来るまで頑張りま〜す。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結まで予約投稿済み R15は念の為・・

わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの。

朝霧心惺
恋愛
「リリーシア・ソフィア・リーラー。冷酷卑劣な守銭奴女め、今この瞬間を持って俺は、貴様との婚約を破棄する!!」  テオドール・ライリッヒ・クロイツ侯爵令息に高らかと告げられた言葉に、リリーシアは純白の髪を靡かせ高圧的に微笑みながら首を傾げる。 「誰と誰の婚約ですって?」 「俺と!お前のだよ!!」  怒り心頭のテオドールに向け、リリーシアは真実を告げる。 「わたくし、残念ながらその書類にはサインしておりませんの」

神のいとし子は追放された私でした〜異母妹を選んだ王太子様、今のお気持ちは如何ですか?〜

星里有乃
恋愛
「アメリアお姉様は、私達の幸せを考えて、自ら身を引いてくださいました」 「オレは……王太子としてではなく、一人の男としてアメリアの妹、聖女レティアへの真実の愛に目覚めたのだ!」 (レティアったら、何を血迷っているの……だって貴女本当は、霊感なんてこれっぽっちも無いじゃない!)  美貌の聖女レティアとは対照的に、とにかく目立たない姉のアメリア。しかし、地味に装っているアメリアこそが、この国の神のいとし子なのだが、悪魔と契約した妹レティアはついに姉を追放してしまう。  やがて、神のいとし子の祈りが届かなくなった国は災いが増え、聖女の力を隠さなくなったアメリアに救いの手を求めるが……。 * 2023年01月15日、連載完結しました。 * ヒロインアメリアの相手役が第1章は精霊ラルド、第2章からは隣国の王子アッシュに切り替わります。最終章に該当する黄昏の章で、それぞれの関係性を決着させています。お読みくださった読者様、ありがとうございました! * 初期投稿ではショートショート作品の予定で始まった本作ですが、途中から長編版に路線を変更して完結させました。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。 * ブクマ、感想、ありがとうございます。

婚約破棄され森に捨てられました。探さないで下さい。

拓海のり
ファンタジー
属性魔法が使えず、役に立たない『自然魔法』だとバカにされていたステラは、婚約者の王太子から婚約破棄された。そして身に覚えのない罪で断罪され、修道院に行く途中で襲われる。他サイトにも投稿しています。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」 婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。 もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。 ……え? いまさら何ですか? 殿下。 そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね? もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。 だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。 これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。 ※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。    他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。

修道女エンドの悪役令嬢が実は聖女だったわけですが今更助けてなんて言わないですよね

星里有乃
恋愛
『お久しぶりですわ、バッカス王太子。ルイーゼの名は捨てて今は洗礼名のセシリアで暮らしております。そちらには聖女ミカエラさんがいるのだから、私がいなくても安心ね。ご機嫌よう……』 悪役令嬢ルイーゼは聖女ミカエラへの嫌がらせという濡れ衣を着せられて、辺境の修道院へ追放されてしまう。2年後、魔族の襲撃により王都はピンチに陥り、真の聖女はミカエラではなくルイーゼだったことが判明する。 地母神との誓いにより祖国の土地だけは踏めないルイーゼに、今更助けを求めることは不可能。さらに、ルイーゼには別の国の王子から求婚話が来ていて……? * この作品は、アルファポリスさんと小説家になろうさんに投稿しています。 * 2025年2月1日、本編完結しました。予定より少し文字数多めです。番外編や後日談など、また改めて投稿出来たらと思います。ご覧いただきありがとうございました!

処理中です...