上 下
12 / 58
第1章 神聖魔法を極めた聖女。魔法学校へ入学する

挿話3 渾身の魔法を打ち砕かれた貴族マルク=ロレーヌ

しおりを挟む
「す、凄い。この学校で長年召喚魔法を教えていますが、子供とはいえ、ドラゴンを召喚した一年生は初めてですね」

 召喚魔法の授業で、女教師がよく分からない事を言い出した。
 ドラゴンを召喚だと?
 ふっ! 何を言い出したかと思えば、よりによってドラゴンを召喚だなんて、そんなの有り得ないだろう。
 大きな鳥の幻獣と見間違え……

「な、何だと!?」

 確かに、アレはドラゴンだ。
 かつて冒険者が王宮に献上したという竜の卵が孵化し、ドラゴンの雛が孵った……と、まだ俺が幼い頃に王族が騒ぎだし、父上にねだって見学させてもらいに行った事がある。
 あの時に見たドラゴンの雛と比べると、二回りほど大きいが、ドラゴンの子供に違いないだろう。
 しかも、召喚後に何も指示をしなくても、そこに居続けるという事は、子供ドラゴンはあの男の使い魔になっているという事だ。
 くっ……羨ましい。
 俺が欲しい物、第一位である格好良い光魔法と、第二位であるドラゴンのペット……その両方が、俺ではなく、今日会ったばかりの者が所有している。
 悔しい。欲しい。奪ってでも手に入れたい。
 そんな想いが俺の頭の中をグルグルと回っていると、

――ならば、奪えばよい――

 ふと、どこかで聞いた事のある声が聞こえてきた。

――欲しい物は、力づくで奪い取る。上に立つ者は、それが許される。そうする権利を持っている――

 これはどこで聞いたのだろうか。
 確か子供の頃……王宮で父上と逸れて道に迷い、書庫へ入った時に、本に呼ばれた気がして……そうだ。闇色に輝く本があって、俺はそれを開き……本に封印されていた、悪魔の召喚方法を見たんだ。
 そう……この魔法陣を描けば、悪魔が召喚出来る!
 あの時は、まだ魔法の事がよく分かって居なかったが、今なら出来るはずだっ!
 かつての記憶が俺を突き動かし、

「ふははははっ! 俺様の召喚魔法はどうだっ! ドラゴンの子供? そんな雑魚とは比べ物にならないだろう! 見よ、バフォメットだ!」

 大悪魔バフォメットが呼び出された。
 バフォメットと言えば、かつて世界を恐怖で包み込んだ伝説の悪魔であり、驚異的な強さと凶悪性を持っている。
 ふははは……やはり、俺様には召喚魔法の才能があるのだ!
 他の誰がこのような悪魔を召喚出来る?
 この場に居る全員が俺とバフォメットに釘付けとなっているのは、非常に気分が良い。
 そう思った直後、教室が一瞬白く光り輝く。
 何事かと思った直後には、

「おぉぉぉ……バカな。我を一撃で倒す程の力だと……」

 白い光と共に、バフォメットが消えてしまった。

「な……一体何が起こった!? どういう事なのだっ!?」
「今の、悪魔でしょ? 制御出来ている感じもしなかったし、消させてもらったわよ」
「はぁっ!? 貴様は、何を言っているのだ!? 大悪魔バフォメットだぞ!? 消させてもらった……とは、どういう意味だっ!」
「そのままの意味だけど。あのままだと、貴方……殺されていたわよ?」

 この平民の女は何を言っているんだ?
 制御出来て居ない?
 召喚魔法で呼び出したのだ。制御出来ているに決まっているだろうが。
 それに、バフォメットを一撃で倒すなど、聖女様ならともかく、こんな女に出来る訳がない!
 だが、バフォメットが消滅した理由も分からずにいると、

「あー、疲れた! やっと着いた! 気付いたら、全然知らない場所に居たんだけど、マジで何だったんだよ!」
「誰だ!? って、アルフレッド……様!?」
「お、一人増えてるんだな。なんか、俺の事を知ってるみたいだけど、よろしく頼む」

 どういう訳か、あの剣聖の息子、アルフレッドが教室に入ってきた。
 超有名人に、ドラゴンを召喚する奴、それから光魔法を使う平民の女。
 このクラスは、一体どうなっているんだ!?
しおりを挟む
感想 166

あなたにおすすめの小説

聖女として豊穣スキルが備わっていたけど、伯爵に婚約破棄をされました~公爵様に救済され農地開拓を致します~

安奈
ファンタジー
「豊穣スキル」で農地を豊かにし、新鮮な農作物の収穫を可能にしていたニーア。 彼女は結婚前に、肉体関係を求められた婚約者である伯爵を拒否したという理由で婚約破棄をされてしまう。 豊穣の聖女と呼ばれていた彼女は、平民の出ではあったが領主である伯爵との婚約を誇りに思っていただけに非常に悲しんだ。 だがニーアは、幼馴染であり現在では公爵にまで上り詰めたラインハルトに求婚され、彼と共に広大な農地開拓に勤しむのだった。 婚約破棄をし、自らの領地から事実上の追放をした伯爵は彼女のスキルの恩恵が、今までどれだけの効力を得ていたのか痛感することになるが、全ては後の祭りで……。

戦地に舞い降りた真の聖女〜偽物と言われて戦場送りされましたが問題ありません、それが望みでしたから〜

黄舞
ファンタジー
 侯爵令嬢である主人公フローラは、次の聖女として王太子妃となる予定だった。しかし婚約者であるはずの王太子、ルチル王子から、聖女を偽ったとして婚約破棄され、激しい戦闘が繰り広げられている戦場に送られてしまう。ルチル王子はさらに自分の気に入った女性であるマリーゴールドこそが聖女であると言い出した。  一方のフローラは幼少から、王侯貴族のみが回復魔法の益を受けることに疑問を抱き、自ら強い奉仕の心で戦場で傷付いた兵士たちを治療したいと前々から思っていた。強い意志を秘めたまま衛生兵として部隊に所属したフローラは、そこで様々な苦難を乗り越えながら、あまねく人々を癒し、兵士たちに聖女と呼ばれていく。  配属初日に助けた瀕死の青年クロムや、フローラの指導のおかげで後にフローラに次ぐ回復魔法の使い手へと育つデイジー、他にも主人公を慕う衛生兵たちに囲まれ、フローラ個人だけではなく、衛生兵部隊として徐々に成長していく。  一方、フローラを陥れようとした王子たちや、配属先の上官たちは、自らの行いによって、その身を落としていく。

妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~

岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。 本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。 別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい! そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。

聖女の私を追放?ちょうど私も出て行こうとしていたところです

京月
恋愛
トランプ王国で聖女として働いていたリリスをあまりよく思わない王子ガドラ。リリスに濡れ衣を着せ追放を言い渡す。ガドラ「リリス、お前はこの国から追放だ!!」(ドヤ) リリス「ちょうど私もこの国を出ようとしていたところなんですよ」(ニコ) ガドラ「……え?」

婚約破棄と追放をされたので能力使って自立したいと思います

かるぼな
ファンタジー
突然、王太子に婚約破棄と追放を言い渡されたリーネ・アルソフィ。 現代日本人の『神木れいな』の記憶を持つリーネはレイナと名前を変えて生きていく事に。 一人旅に出るが周りの人間に助けられ甘やかされていく。 【拒絶と吸収】の能力で取捨選択して良いとこ取り。 癒し系統の才能が徐々に開花してとんでもない事に。 レイナの目標は自立する事なのだが……。

似非聖女呼ばわりされたのでスローライフ満喫しながら引き篭もります

秋月乃衣
恋愛
侯爵令嬢オリヴィアは聖女として今まで16年間生きてきたのにも関わらず、婚約者である王子から「お前は聖女ではない」と言われた挙句、婚約破棄をされてしまった。 そして、その瞬間オリヴィアの背中には何故か純白の羽が出現し、オリヴィアは泣き叫んだ。 「私、仰向け派なのに!これからどうやって寝たらいいの!?」 聖女じゃないみたいだし、婚約破棄されたし、何より羽が邪魔なので王都の外れでスローライフ始めます。

初めての異世界転生

藤井 サトル
ファンタジー
その日、幸村 大地(ゆきむら だいち)は女神に選ばれた。 女神とのやり取りの末、大地は女神の手によって異世界へと転生する。その身には女神にいくつもの能力を授かって。 まさにファンタジーの世界へ来た大地は聖女を始めにいろんな人に出会い、出会い金を稼いだり、稼いだ金が直ぐに消えたり、路上で寝たり、チート能力を振るったりと、たぶん楽しく世界を謳歌する。 このお話は【転生者】大地と【聖女】リリア。そこに女神成分をひとつまみが合わさった異世界騒動物語である。

嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜

𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。 だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。 「もっと早く癒せよ! このグズが!」 「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」 「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」 また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、 「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」 「チッ。あの能無しのせいで……」 頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。 もう我慢ならない! 聖女さんは、とうとう怒った。

処理中です...