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第1章 神聖魔法を極めた聖女。魔法学校へ入学する
第9話 悪魔召喚
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「では、先ほど説明した理論を皆さん理解しているようなので、先ずは簡単な召喚魔法を使ってみましょう」
三限目の授業では、一言で召喚魔法と言っても、二通りの種類がある事を教えてもらった。
一つは、自身と契約を結んでいる使い魔的な物を呼び出す魔法。
もう一つは、幻獣や妖精といった、異世界の住人を呼び出す魔法。
前者は、術者の魔力が続く限り、呼び出した相手をずっと使役出来る。
一方で、後者は呼び出した相手に一度限りの指示を出し、それを行った所で還ってしまう。
前者の方が、いろいろと便利そうだけど、契約の結び方は後日……という事で、一先ず教科書に書かれている幻獣を呼び出す事になった。
呼び出す対象は、ピクシーという小さな妖精の種族らしい。
「おいで……ドラゴ」
先生の説明を頭の中で思い返していると、リュカが早くも召喚魔法で何かを呼び出した。
幼児くらいの体長で、緑色の翼をパタパタと羽ばたかせてリュカの周りを飛んでいる。
「な、なんですって!? まさか、ドラゴンの子供ですか!?」
「……そう。幼い頃に出会って、それ以来ずっと一緒」
「す、凄い。この学校で長年召喚魔法を教えていますが、子供とはいえ、ドラゴンを召喚した一年生は初めてですね」
うわ……凄い。ドラゴンなんて初めて見た。
身体の割には翼は小さいし、瞳はクリクリとして意外に可愛らしい。
どうしよう。ちょっと触ってみたいんだけど、良いかな?
「ねぇ、触ってみても良い?」
「……構わない。けど、ドラゴが君に触られる事を許すかどうかは、分からない」
リュカに聞いてみると、何かを指示したのか、子供ドラゴンのドラゴちゃん? が、リュカの机の上に降り、私を品定めするかのようにジッと見つめてくる。
恐る恐る手を伸ばしてみると、
「キュィー♪」
ドラゴちゃんが自ら私の手に頭を擦り付けて来た。
か、可愛い。
流石に成竜だったら恐怖が勝ってしまうかもしれないけれど、これくらいのサイズなら、可愛さが勝つみたいね。
「……凄い。ドラゴが僕以外に頭を触らせるなんて、初めて見た。君は一体……?」
「私? 私は普通の女の子だけど?」
自身の使い魔? に触る事が出来たのが余程不思議なのか、初めてリュカと目が合った。
瞳が青く澄んでいて、凄く綺麗。
あれ? 正面からまともに顔を見たのは初めてだけど、実はリュカって……物凄く美形?
そんな事を考えながらリュカの顔を見ていると、突然背後から嫌な感じがする。
上手く言葉に出来ないけれど、何て言うか、聖女だった頃に悪魔退治を依頼された時のような、悪意の塊をぶつけられているような感覚がして、慌てて振り返ると、
「ふははははっ! 俺様の召喚魔法はどうだっ! ドラゴンの子供? そんな雑魚とは比べ物にならないだろう! 見よ、バフォメットだ!」
マルクが山羊の頭と大きな黒い翼を生やした人の姿をした者を呼び出していた。
その者は、大きな鎌を持ち、邪悪な気配を周囲に撒き散らしている。
ハッキリ言わせてもらうが、この感じは……間違いなく悪魔だ。
「キュイッ! キュイッ!」
私の背後で、ドラゴちゃんが警戒するかのように鳴き声をあげ、
「これは……マルク君っ! 早く、その召喚魔法を中断しなさいっ!」
「マルク……君だと!? 貴様、誰に口を聞いているのか分かって……」
「どうでも良いから早くっ! 死にますよっ!」
先生が悲鳴に近い声で叫びだす。
その直後、先生の叫び声を肯定するかのように、バフォメットと呼ばれた悪魔が大きな鎌を振り上げる。
マルクはこっちに目を向けていて気付いていないが、このままだと確実にマルクが……というか、この教室が破壊されるだろう。
せっかく魔法学校へ入学したというのに、初日で教室を壊されては困るので、
「ディバイン・レイ」
神聖魔法の一つであり、悪魔や不死といった相手だけを滅ぼし、建物などには一切影響を与えない魔法で、バフォメットを消滅させた。
まったく、このバカ貴族は……本当に迷惑なんだからっ!
三限目の授業では、一言で召喚魔法と言っても、二通りの種類がある事を教えてもらった。
一つは、自身と契約を結んでいる使い魔的な物を呼び出す魔法。
もう一つは、幻獣や妖精といった、異世界の住人を呼び出す魔法。
前者は、術者の魔力が続く限り、呼び出した相手をずっと使役出来る。
一方で、後者は呼び出した相手に一度限りの指示を出し、それを行った所で還ってしまう。
前者の方が、いろいろと便利そうだけど、契約の結び方は後日……という事で、一先ず教科書に書かれている幻獣を呼び出す事になった。
呼び出す対象は、ピクシーという小さな妖精の種族らしい。
「おいで……ドラゴ」
先生の説明を頭の中で思い返していると、リュカが早くも召喚魔法で何かを呼び出した。
幼児くらいの体長で、緑色の翼をパタパタと羽ばたかせてリュカの周りを飛んでいる。
「な、なんですって!? まさか、ドラゴンの子供ですか!?」
「……そう。幼い頃に出会って、それ以来ずっと一緒」
「す、凄い。この学校で長年召喚魔法を教えていますが、子供とはいえ、ドラゴンを召喚した一年生は初めてですね」
うわ……凄い。ドラゴンなんて初めて見た。
身体の割には翼は小さいし、瞳はクリクリとして意外に可愛らしい。
どうしよう。ちょっと触ってみたいんだけど、良いかな?
「ねぇ、触ってみても良い?」
「……構わない。けど、ドラゴが君に触られる事を許すかどうかは、分からない」
リュカに聞いてみると、何かを指示したのか、子供ドラゴンのドラゴちゃん? が、リュカの机の上に降り、私を品定めするかのようにジッと見つめてくる。
恐る恐る手を伸ばしてみると、
「キュィー♪」
ドラゴちゃんが自ら私の手に頭を擦り付けて来た。
か、可愛い。
流石に成竜だったら恐怖が勝ってしまうかもしれないけれど、これくらいのサイズなら、可愛さが勝つみたいね。
「……凄い。ドラゴが僕以外に頭を触らせるなんて、初めて見た。君は一体……?」
「私? 私は普通の女の子だけど?」
自身の使い魔? に触る事が出来たのが余程不思議なのか、初めてリュカと目が合った。
瞳が青く澄んでいて、凄く綺麗。
あれ? 正面からまともに顔を見たのは初めてだけど、実はリュカって……物凄く美形?
そんな事を考えながらリュカの顔を見ていると、突然背後から嫌な感じがする。
上手く言葉に出来ないけれど、何て言うか、聖女だった頃に悪魔退治を依頼された時のような、悪意の塊をぶつけられているような感覚がして、慌てて振り返ると、
「ふははははっ! 俺様の召喚魔法はどうだっ! ドラゴンの子供? そんな雑魚とは比べ物にならないだろう! 見よ、バフォメットだ!」
マルクが山羊の頭と大きな黒い翼を生やした人の姿をした者を呼び出していた。
その者は、大きな鎌を持ち、邪悪な気配を周囲に撒き散らしている。
ハッキリ言わせてもらうが、この感じは……間違いなく悪魔だ。
「キュイッ! キュイッ!」
私の背後で、ドラゴちゃんが警戒するかのように鳴き声をあげ、
「これは……マルク君っ! 早く、その召喚魔法を中断しなさいっ!」
「マルク……君だと!? 貴様、誰に口を聞いているのか分かって……」
「どうでも良いから早くっ! 死にますよっ!」
先生が悲鳴に近い声で叫びだす。
その直後、先生の叫び声を肯定するかのように、バフォメットと呼ばれた悪魔が大きな鎌を振り上げる。
マルクはこっちに目を向けていて気付いていないが、このままだと確実にマルクが……というか、この教室が破壊されるだろう。
せっかく魔法学校へ入学したというのに、初日で教室を壊されては困るので、
「ディバイン・レイ」
神聖魔法の一つであり、悪魔や不死といった相手だけを滅ぼし、建物などには一切影響を与えない魔法で、バフォメットを消滅させた。
まったく、このバカ貴族は……本当に迷惑なんだからっ!
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